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国際協力の現地プロ、という生き方 長年の念願、アフリカでかなえた

私の海外サバイバル 更新日: 公開日:
ザンビア大学のメンバーと、到着した機材の確認作業

■私のON

ニャンガ美知子さんが活動の拠点にしているザンビア大学獣医学部

車で約2時間の中央州の州都カブウェでは長く銅や鉛などが採掘され、閉山後も子どもたちの血中鉛濃度が非常に高いことなど、ひどい環境汚染が指摘されています。

立ち入り禁止の看板があるだけの鉱山跡

プロジェクトはこの地域での住民の健康被害を低減し、環境汚染の修復をめざすことが目標です。人が鉛を取り込む経路の解明や、健康被害の調査、安くて現実的な対策の開発などを同時に進めています。ザンビア人の専門家を育て、プロジェクト終了後も汚染の監視や環境修復への取り組みが継続できるようにすることもめざしています。

世界銀行出資の環境修復プロジェクトとも連携していて、全体では約200人がかかわっています。さまざまな分野の研究者や関係機関が加わっているため、プロジェクトがスムーズに進むように日常的に意思疎通を図ります。現地での研究や試料・資機材の輸出入などでさまざまな許可を取ったり、現地では魔術的な印象がある採血に理解を深めてもらおうと地元ラジオでプロジェクトの活動や成果を紹介したりもしています。

日本から限られた日程で訪れる出張者の要望を事前に聴いて、現地でのスケジュールを組み立てるのも大事な仕事です。ザンビアの人たちは「週末は家族サービスと教会」と割り切っているので、要人との面会は平日に集中させ、週末は日本人だけの打ち合わせにするなど工夫しています。

「自分だからできる」気配りを日常の業務に加えることで、両国の研究者が気持ちよく積極的にプロジェクトに携わってくれているのを見ると、とてもやりがいを感じます。

日本とザンビアをつないだテレビ会議

大学で青年海外協力隊の説明会にふらっと出たのが縁で、卒業後、ケニアに理数科教師として2年間派遣されました。新卒で健康だけがとりえと思われたようで、電気も通わず、40分かけて川に水くみに通わなければならない田舎でした。でも、そのおかげでザンビアで断水や停電があっても「過ごしやすい」と思えています。

国際協力で生きていこうと決め、国際協力機構(JICA)ザンビア事務所の現地職員などを経験してきました。プロジェクトを現地で支える業務調整員になることは長年の念願でした。新型コロナで3月から一時帰国を余儀なくされていますが、解除され次第戻って仕切り直します。

■私のOFF

トウモロコシの粉をお湯で練った主食シマ(左)とオクラ、魚、サツマイモの葉っぱなどの野菜

2008年にザンビア人の教師と結婚しましたが、夫は12年に当時3歳の娘ジョイを残して急死しました。ザンビアの家族や多くの友人に励まされ、その恩返しをしたい思いが強くなりました。

つい先日までザンビア大学大学院のMBAコース(プロジェクトマネジメント)をオンラインで学んでいて、業務調整員、シングルマザーと合わせて「三足のわらじ」でした。試験中に回線が切れたりもしましたが、7月に正式に修了できました。このコースを勧めてくれたのはザンビア側のグループリーダーの一人で、北海道大学で博士号を取得した研究者。膨大な英文テキストにくじけそうな私を「日本人はあきらめない」と励まし続け、ときには論文の英語の添削までしてくれました。

同僚家族とのバーベキューや釣り、国立公園での動物探しなど、娘がいることでザンビアにどっぷりつかり、生活が豊かになりました。

同僚家族とザンベジ川で初めての釣り。親子とも釣れて大喜び

ただ、豊かな自然や素晴らしい取り組みがたくさんあるのに、あまり知られていないことにも気づきました。

例えば、密猟で親を失った子象を保護し、野生に戻す「象の孤児院」の取り組み。調べてきた娘と訪ね、娘は1頭の里親になり、1年分のミルク代の一部を自分のお小遣いから払うようになりました。

象の孤児院

日帰りで楽しめるルサカ国立公園では自分で車を運転しながら動物を探します。レンジャーによると24種類の動物がいるそうです。その魅力を伝える助けになればと、公園スタッフとも相談して動物チェックリストを娘とつくりました。早く届けに行きたいと思っています。

娘ジョイさんと一緒につくった国立公園の「動物チェックリスト」

(構成・大牟田透)