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「高くて遅い」国際送金はブロックチェーンで変わる

Global Outlook 世界を読む
写真はイメージ

――国際送金は手数料が高く、面倒なイメージがあります。リップルが提供するリップルネットを金融機関が採用すれば、どれぐらい便利になるのですか。

一般的な銀行からの国際送金では、お金を送るのに数日かかり、手数料も数千円。これに対し、リップルネットを使う金融機関の多くは、3,4秒で外国の銀行口座にお金を届け、送金金額が5万円程度なら手数料も数百円にできます。

――なぜ、そんなに違うのでしょうか。

現在、世界の銀行が主に国際送金で利用しているSWIFT(スイフト、国際銀行間通信協会)のインフラは、巨大なデータベースに送金データを記録する中央集権的なシステムです。日本の地銀から米国の地銀に送金する場合、複数の銀行を中継し、送金データはバケツリレー方式で順番に送られます。費用も時間もかかり、送金完了もすぐには分かりません。

SWIFTができたのは40年以上前。国際送金と言えば、大企業が大きい金額を時々送るような時代でした。いまは先進国の中小企業の34%が外国企業と取引し、個人による世界の国際送金の額も年6000億ドル規模に増えました。時代の変化に対応できていないのです。

リップル国際事業部門シニアディレクターの吉川絵美さん=リップル提供

――リップルネットの仕組みはまったく違うのですか。

複数のコンピューターに情報を分散して記録するブロックチェーン技術により、中央集権でない網の目のようなネットワークをつくりました。SWIFTが「郵便で手紙を送る」とすれば、銀行がLINEのように、互いに双方向で情報をやりとりします。米国からメキシコへの送金なら、ドルからXRPという暗号資産に両替してネットワークを使って送金。ブロックチェーン上で取引が正しいと認められれば、メキシコペソに両替されて口座に入ります。

――なぜ暗号資産で最も使われているビットコインを使わないのですか。

世界には約2000種類の暗号資産があり、それぞれ特徴があります。ビットコインはXRPに比べ送金コストが高く、取引完了に1時間以上かかることもあります。

自動車業界の歴史を見ると、米フォードが世界初の量産自動車「T型フォード」を発売し、移動手段が馬から車に代わりました。最初はT型がすべての目的に使われていましたが、業界が成熟すると、使い道に応じてセダンやスポーツカー、トラックなどが開発されました。暗号資産でも同じように、国際送金や貿易決済など目的に応じて様々な種類が開発されています。世界では、まだ20億人が銀行口座を持たないと言われており、より手軽な金融システムが求められています。

――暗号資産は、価値の変動が激しくて、リスクが高いイメージがあります。

XRPの時価総額は一時、ビットコインに次いで暗号資産で2番目になりました。それでも円などの通貨に比べれば、まだ価値の変動幅が大きい面はあります。ただ、送金は数秒で完了するのでリスクは非常に小さく、今後取引量が増えれば、より安定すると考えています。

――ビットコインやフェイスブック主導のデジタル通貨「リブラ」に対しては、各国の金融当局から警戒の声が出ました。安全性はどう確保していますか。

ブロックチェーン業界誕生は2008年のリーマン・ショック後。政府や既得権益を持つ銀行による金融システムの問題が明らかになり、多くのベンチャーが銀行抜きのシステムを目指しました。だから既存の金融体制からの警戒感が強いのです。

一方、リップルは効率的な送金システムを銀行に使ってもらい、社会へのインパクトを最大にしようと考えています。世界でリップルネットを利用する金融機関は300以上。英スタンダードチャータードやスペインのサンタンデールなどの大手行、国際送金のマネーグラムや日本のSBIレミットも含まれ、金融機関を通して規制当局とやりとりしていることになります。

――手数料が下がりますが、金融機関にとってメリットはあるのですか。

従来のシステムでは、国際送金を手がける銀行は米国など外国の銀行に口座を開き、ある程度のお金を置いておく必要があります。その負担が高い送金手数料に反映されています。これを削減できれば、資本効率が大きく改善します。また、サンタンデールは新興の国際送金業者にシェアを奪われているとの危機感から、新システム導入の必要性を感じていました。SBI系のマネータップは、日本の国内送金での普及も目指しています。

――最近は中国のアリペイなどペイアプリを使った国際送金も増えています。銀行の国際送金は時代遅れでは。

ペイアプリは便利ですが、別のペイアプリや、銀行やブロックチェーンなど他の送金ネットワークには一部を除けば送れません。リップルは独立したネットワークを結ぶ決済の標準規格「インターレジャー」も提唱していて、あらゆる価値の取引をインターネットで可能にします。
ロボットや自動運転車が普及すれば、こうしたデバイスが自ら判断し、支払いをする時代になるでしょう。自動運転車が互いに交渉し、駐車スペースを譲ってもらったら「チャリン」と支払う。そんな取引に今の金融機関では対応できません。

――コロナ後の世界では、国際的な取引は増えていくのでしょうか。

リモートワークが増え、国際的なアウトソーシングが広がっていくでしょう。今は一時的に止まりましたが、移民人口は年9%程度の成長を続けていました。コロナ後は再び成長するでしょう。少額で頻度の高い国際送金が増えると思います。


よしかわ・えみ

リップル国際事業部門シニアディレクター。米系金融サービス企業やシリコンバレーのテックベンチャーなどを経て、2016年より現職。米ハーバード・ビジネススクール修了。17年に米メディアによるフィンテック・インフルエンサーの女性トップ50に選出。