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【アグネス・チャン】初めて子どもが噓をついた日 8時間かけて向き合った

アグネスの子育てレシピ
息子たち3人と、息子たちが通った米国の高校で(アグネスさん提供)

■暴力はエスカレートする

子供を虐待してしまった母親の話を聞いた事があります。

「自分はあんなことをする人間ではないのです。なぜやってしまったのかわかりません」と自分の行動が理解できないのです。

お母さんが我を失ったのには理由があります。

暴力という行動はエスカレートするものなんです。

最初に軽い気持ちで手を出してしまうのが危ないのです。

いつの間にか、エスカレートしてしまい、セルフコントロールを失ってしまうのです。

ですから、育児の中で、絶対に暴力を使ってはいけないのです。

体に対する暴力だけでなく、言葉の暴力、ネグレクト(育児放棄)、精神的な暴力もいけません。

取り消しのつかない悪い結果につながります。

「うちの子は言葉で言ってもわからない」

「叩かないとわからないのが子供」

「うちのしつけのやり方なんです」

「私も親に叩かれたけど、別に害はなかった」と、様々な言い訳を聞きます。

でも、教育学の観点から見れば、「言うことを聞いてほしい」ならば、暴力は決して有効ではない、むしろ最低レベルの方法です。

「言うことを聞かないと罰を与える」

この教育方法は効き目が長続きしないのです。

すぐ手を出す親の前で、子供はすぐ謝ります。

叩かれるのを逃れるためです。

でも、その子は本当に何がいけなかったのかわかったのでしょうか。

わかったとしても、後悔しているのでしょうか。

親が子供の言い分、考え方を聞かずに、体罰を与えると、子供を教育するチャンスを逃してしまいます。

痛いのが怖いから、子供はすぐ「ごめんなさい」「もうやらない」を言います。

親はそれを聞いて、子供が何がいけないのかを理解していると勘違いして、

怒りが収まり、教育したと思ってしまいます。

でも、実際に理解していない子は同じ過ちを繰り返してしまいます。

親に見つかってしまうと、またすぐに謝ります。

「何回言ったらわかるのか?」と親の怒りはエスカレート、さらに強い体罰を与えるのです。

子供はさらに逃げる、嘘をつく、とにかく知恵を使って、その場をしのごうとします。

このような事を繰り返しているうちに、親子の信頼関係が崩れ、愛情も薄れ、子供は善悪が分からなくなってしまいます。

叩かれたくないために、嘘をつく、人のせいにする。歪んだ理屈を覚え、心理的に大きいなダメージを受けます。

親は子供が自分になつかないと感じ、親としての権威が侵され、悔しさから、子供の事を嫌いになってしまうこともあります。

子供は敏感に親の気持ちを察する事ができるので、愛情に飢え、自己肯定感をなくし、正常な精神的な成長ができなくなります。

しかも体罰は相手が痛く感じる時だけに効き目があるのです。

一回平手打ちで謝ってくれた子供は、それに慣れて、一回打たれても謝らなくなる。

2回、3回と回数が増えていきます。

子供の成長に連れて、体罰をさらに強くしないいけない。

これが親が「我を失う」ことになる、暴力のエスカレートの構造です。

そのうちに子供が親よりも大きくなって、逆に親に暴力を振るうようになります。

暴力を受けた子供は暴力を使って物事を解決する習性を身につけてしまいます。

これが「暴力は暴力を生む」という構造です。

自分を守るために、優越感を感じるために、暴力を使います。

体が大きい子は周りの小さな子供たちに手を出す。

体が大きくない子は言葉のいじめや悪口をぶつけたり、インターネットで人の中傷をしたりします。

さらにそれらの事をしたくない子供は自傷行動をとったりします。

何もできない子は鬱になり、気力をなくなって、生きる意欲をなくしたりします。

たまった傷と怒りの表し方は違いますが、必ず前向きな結果にはならないのです。

■思わず出てしまう言葉を、励ましの言葉にかえる

言葉の暴力も同じく子供を傷つけてしまいます。

「バカ!」「なんでできないの」「誰のお陰で食べられると思うの」など、

親がつい言ってしまう言葉です。

でも、実際に言う前に、考えてほしいです。

本当に我が子がバカと思っているのか?

そうでないなら、「お前が今やっていることはバカバカしいよ。でも、君は本当は賢くていい子なんだから、そんなバカバカしいことをやる必要ないよ」とそこまで本音を言わないと、子供は自分の存在が否定されてしまうと思ってしまいます。

子供が間違ったことをやった時は、その行動を否定してはいいが、子供の存在そのものを否定していけません。

「なんでできないの」も同じです。

その時は「さー考えてみよう、どうるればできるのかな?」と励ます言葉に変えるのが大事です。

「誰のお陰で食べられると思うの」と言う言葉は自立が出来ない子供に「君は私を逆らう権利も力もない」という強圧的な言葉です。

これらの言葉を言ってしまった時は、改めて、子供に愛情を表現してください。子供の小さな心をなおしてあげてください。

「きもい」「うざい」「死ね」と最近若者がよく使う言葉は人を傷つけて、優越感を得たい言動です。

家庭内で自己肯定感を育てられなかった証拠です。

知らないうちに、親は言葉で子供を否定していませんか。

そのほかのネグレクト、精神的な暴力も頻繁に起きています。

姉の子供の友達は中学生の頃、毎週親から5000円をもらって、自分一人で家にすみ、ご飯を買って食べる、学校へ通うということを強いられていました。ご飯を与えないケースとは違いますが、これもネグレクトです。

別の友達のお母さんは暴力を振るう父から逃げて、残された子供達は途方にくれ、行き場を失いました。これもネグレクトです。

世の中にはいろんな悲劇が起きています。

「お前は太ってる」と子供に言ったり、「なんでお姉ちゃんができるのに、お前は出来ないの」と人と過剰に比べたり、「お前はいいよ、留守番頼むね」とひとりだけ違う扱いされたり。これらも精神的な暴力と言えます。

■子どもが初めて噓をついたとき

三男とスタンフォード大学で(アグネスさん提供)

私は子供たちが間違ったことをした時には、とことん説明します。

そして、彼らの言い分も聞きます。

わかってもらうまで、説明を続くのです。

長男が初めて嘘をついたのは小学2年生のときでした。そのときは、8時間かけて話し合いをしました。

「漢字テスト戻ってきたの?」と何回を聞いても、「まだ」と言った長男のバッグパックの中に漢字テストがあるのを見つけたのです。

「なんで嘘言ったの?」と聞いたら。「70点なので、ママが悲しむと思って」と言いました。

それを聞いて、私はドキッとしたのです。

長男は彼の点数によって、私が喜んだり、悲しんだり、彼に対する愛情が変わると思っていたのでしょうか。

それなら大変です。

彼の成績がどんなであろうと、私の彼に対する愛情は変わりません。

その事を伝えないといけないと思いました。

「ママの愛が分からない?」と長男に聞きました。

彼は「何?」と言う顔をして、何が何だか分からなかったです。

彼に対するママの無条件の愛情を分からせるために、8時間をかけて、お話をしたのでした。

「ママに嘘つく必要は全くない。このままの君が好き」と彼が本当に理解するまで、泣いたり、笑ったり、親子でゆっくり話しました。

あれから、本音で親子の会話が出来るようになり、今でも続いています。

その後、次男の時は6時間、三男の時は4時間と私の説明力が上がりました。

親が丸ごと子供を愛し、受け入れる気持ちを子供が理解すれば、言うことは聞いてくれます。

聞いてくれない時は理由が必ずあるのです。その時は言い分を聞いてあげて、親子で答えを探せばいいのです。

体罰も、暴力も使う必要がなくなります。

「ママの話は長かったね」と兄弟の間では伝説的になっています。「でも話ができてよかったね」とも言ってくれます。

子供たちが「何がいけないのか」をわかってくれれば、親がそばにいなくっても、必ず善悪を見分けることができます。

「罰が怖いからやらない」ではなく、「正しくないからやらない」と子供が心から思えば、親の教育は大成功です。

賞罰ではなく、子育ては説得です。コミュニケーションです。

一方的な押し付けは本当の教育ではないのです。