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どうする進学 コロナ禍で試行錯誤の帰国子女たち

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シンガライフが6月に開いたオンライン説明会の様子。実際に帰国生に登場してもらった学校もあった(写真は宝仙学園中・高)=シンガライフ提供

世界中から1500人 情報求めオンライン説明会に

「子どもの日本語に不安があります。日本語のサポートはありますか」「オンラインで入試は考えていますか」

6月に開かれたオンラインでの合同学校説明会での一幕だ。関西地方のある私立中高一貫校の回では、保護者からのそんな質問が途切れることなく続いていた。

主催したのはシンガポールのフリーペーパー「シンガライフ」など。9日間をかけ、1校1時間の枠で63の私立学校が順次説明した。シンガポールにとどまらず、東南アジア各国、米国、ロシアなど世界中から1500人以上が参加した。

「参加者の多さに驚きました」。シンガライフ代表の飯田広助さん(35)はそう振り返る。これまでは、学校関係者をシンガポールに招き、説明会を開いてきた。だが今年は新型コロナの流行を受け、3月ごろにオンライン化を企画。参加校は20校、保護者は300人ほどを想定していたが、実際に集まったのはその5倍。「それだけ切実な問題だったということ。少しでも機会を増やしたい」。8月以降も随時オンライン説明会の機会を設けている。

6月の説明会にメキシコ市から参加した高谷直子さん(47)は「こちらには日本語の塾もなく、なかなか情報が手に入らなかった」と話す。子どもは中学2年。メキシコでは2年に1回ほどの頻度で学校説明会が開かれているが、参加校も限定的。「特に東京近郊以外の情報を集めようと思うと、なかなか難しい。その意味でもオンラインはありがたかったですね」と話す。

シンガポールに住む主婦(45)の子どもは小学3年。中学受験を考えると日本に帰国して塾に通わせた方がいいのか、悩みどころだという。「ネットには体験談もあるが、どれを信じていいのか分からない。ママ友からも話は聞くが、彼女たちも受験ではある種のライバル。やはり学校関係者の話を直接聞ける機会は貴重なんです」

休みで帰国、そのまま転編入も

文部科学省の統計によると、海外での長期滞在から帰国する児童生徒は年間約1万2000人ほど。まったく違う環境で学んできた子どもたちが、日本の学校生活になじめるかどうかを心配する親は多い。外国語で教育を受けてきた生徒の中には、日本語が苦手なので、日本での授業についていけるのかという心配もある。

特に多くの家族が悩むのは高校受験だ。文科省の統計を見ると、高校1年での帰国が突出して多い。海外では日本語の小中学校はあっても高校まではない都市がほとんどだからだ。

そこに今年はコロナの悩みが加わった。中にはコロナのために予定していなかった帰国を迫られたケースもある。

「例年に比べれば海外からの帰国をめぐる相談は突出して多い。すごく困っておられるのを実感している」。そう話すのは、神奈川県教育委員会の担当者だ。

中には家族と共に中国に駐在していて、旧正月(春節)の休暇で帰国。その間に中国との行き来が止まってしまったというケースもあった。結局、中国に戻れる見通しが立たなくなったために、子どもはそのまま神奈川県の県立高校に通えるように手配したという。

同県も含め、海外からの公立高校への転入や編入は、原則として家族の転居といった事情で認められている。だが、たとえば現地で高校に進学したがなじめなかったなどの理由で子どもだけ帰国した場合は「自己都合」とされ、転入や編入に対応しないことが多かった。神奈川県でも自分の意思で高校から留学する「単身留学」などの場合、途中で履修をやめて帰国して県立高校に移ることは原則として認めていなかったという。

だが、いまはコロナの影響のため「個別のケースごとに、柔軟に対応している」という。来年の受験に向け、帰国子女向けの特別受験枠がある学校の紹介なども、オンラインでの実施を検討している。

学年別の帰国児童・生徒数(文部科学省「学校基本調査」より作成)。高校1年での帰国が目立って多いのが分かる

海外と日本の「二重学籍」

帰国子女をめぐる相談業務などを手がける海外子女教育振興財団によると、海外からの帰国をめぐってこれまでよくあった悩みは、どうやって学校を選ぶべきかや、受験にどう対応するか。また、帰国子女が多い学校を知りたいという親や、子どもが学校になじめるかどうかを心配する親も多い。さらに、海外で培った語学力をどうやって保てばいいかといった相談も寄せられるという。

今年はそこに、コロナの心配が加わっている。コロナ流行を受けて、文部科学省と財団は特別な問い合わせ窓口を設けた。ここにはたとえばコロナの流行が広がった国から帰国するケースで、「差別的に扱われるのではないか」と心配する声もあったという。

帰国枠での受験についても、コロナによる休校などで現地での授業日数が少なくなり、「受験に影響が出るのか」と心配する声や、オンライン授業に切り替わっていて「推薦受験に必要な通知表が作成されていない」といった相談も出ているという。

さらに悩ましいのは、日本に一時帰国したものの、再び海外に戻れるのかどうか見通しが立たないケースだ。

海外で在籍していた学校がオンライン授業に対応している場合は、日本からも参加できる。だが、参加が難しい場合もあるほか、オンラインには対応していない学校や科目もある。

文科省は、学習が続けられるように、海外の学校に在籍したまま国内の学校にも在籍できるような柔軟な対応を全国の自治体に求めている。実際に、海外の学校に籍を置いたまま日本の学校にも通うケースも出ているが、この場合は両方の学習を進めるのが大変なうえに、学費の負担も重い。

海外と日本との往来は少しずつ再開しているが、全面再開のめどは立っていない。日本には帰国できても、もともと住んでいた国に戻れるかどうかは国によって状況が違う。労働ビザを持つ親は入国できても、その家族の入国は認めていないケースもある。さらに今後の流行次第では、こうした扱いもどうなるのかが分からないのが実情だ。

文科省と財団の相談員は「新型コロナウイルスの収束状況によって入国制限が変わるので、赴任国の領事館などでしっかり調べておくことが重要」だと説明する。一時帰国を考えている場合は、「家族が日本から出られない可能性もあると考えて、本帰国を想定して就学などを検討してみることも選択肢の一つです」とアドバイスしている。