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アメリカの抗議デモ、アロハと銃武装の男たちが危うい要素を加える

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米ミシガン州で5月30日、黒人男性が警察に拘束されて死亡した事件をめぐる抗議デモに武装して参加した2人の男性(右)=ロイター

"Men wearing Hawaiian shirts and carrying guns add a volatile new element to protests"

6月5日付 ワシントン・ポスト紙

6月上旬、非武装の黒人男性ジョージ・フロイド氏が警察によって殺された事件をきっかけに、アメリカ全土にわたって人種差別と警察の蛮行に抗議するデモが行われた。このデモは落ち着いた状態で始まったが、暴徒化してしまったところもあった。州や地方自治体によると、nefarious(非道な)動機によるoutsiders(外部の者たち) がデモにinfiltrate(潜入し)、暴徒化の一つの原因になっているそうだ。

トランプ米大統領とバー司法長官は、暴徒化は極左のextremists(過激派)が原因だとしているが、専門家は極右の人々もインターネット上でデマを流したり、フォロワーに対して警察やデモ隊に暴力をふるうことを扇動したりしているという。極右団体を追跡している組織によると、極右団体のメンバーは40もの抗議デモに現れたそうだ。インターネット上では、極右が極左グループ「Antifa(アンティファ)」にimpersonate(なりすまして)いた事例もあったという。

今回のデモでは、極右団体の一つが特に目立っている。「Boogaloo Bois」やそれに似た団体名を使って、内戦の勃発を期待しているようだ。Boogalooという名前は1984年のブレークダンス映画「Breakin' 2: Electric Boogaloo」に由来している。その映画の内容が前編とほとんど同じだったように、次に起こりうる内戦が1860年代の南北戦争と似たようなものになる、という確信に基づいている。

SNSの運営側はBoogalooの投稿を規約違反として取り締まったので、支持者らは見つからないように、Big Igloo(大きなイグルー)や Boojahadeen(ムジャヒディンをもじった造語)、Big Luau(大きなハワイ式宴会)といった似た名前を使うようになった。三つ目のBig Luauの名前から、アロハシャツを着るようになった。そのような格好で行動し、滑稽な名前を使っているので、この組織が脅威ではないと思うかも知れない。しかし、銃を持ってデモに現れ、差別的な発言や暴力をglorify(賛美する)ので、実はかなりの脅威である。

Boogalooが特に巧妙なのは、他の団体のイベントに加わりincendiary(扇情的な)考えを広めることだ。オンラインゲームの言葉から、これを「stream sniping」と呼んでいる。

極右団体の人の中には、自らを「accelerationists(加速主義者)」と呼ぶ人がいる。その促進する対象とは、人種間の対立による暴力闘争と、その先にある政府の解体である。これは極めて恐ろしい考えで、今回のデモにvolatile(危うい)要素を加えている。