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【ウクライナの女たち④】セクシズムと家父長制の国で、ジェンダーギャップを埋める

Re:search 歩く・考える
オルガ・ルドネヴァさん=2020年3月、キエフ、渡辺志帆撮影

――ウクライナの女性が置かれた状況を教えてください。

私たちがキャンペーンを始めた3年前、ウクライナには女性が就くことを禁じられた職業が500もありました。女性は路面電車の運転手にはなれるけれど地下鉄はダメだとか、白身魚は加工してもいいけれど赤身はダメだとか。おかしなものばかりでしょう? 企業や行政機関でトップの座に就く女性も、MBAなどお金のかかる教育を受けられる女性も、男性より少ないのが現状です。

ウクライナ東部ドネツク州アレクサンドロフカのルドミラ・ボリセビッチ町長。町は親ロシア派武装勢力が占拠する地域にほど近く、紛争が始まった6年前から国内避難民の受け入れに奔走してきた=渡辺志帆撮影

ウクライナでは、女性の幸せは夫に尽くすこと、子供を産んで家庭を守ることだと根強く考えられてきました。女性が子供を産んで仕事に復帰しようとすると、ブランクがある上に子供が病気になったら仕事を休まなくてはいけない。労働者として自分は「傷もの」だという後ろめたさを感じてしまう。賃金の男女格差に対して「男性と同等の賃金なんで望むべくもない」と。こうしたことは、他の国々にも当てはまる話でしょう。

――6年前の政変をもたらした「マイダン(広場)革命」による影響は何かありましたか。

人々の意識が変わったと思います。あれが、男性だけの革命ではなかったからです。「夫の活躍を自宅にいる妻がテレビ中継で見守る」なんてことはなかった。男性も女性も、性別に関係なく立ち上がって、広場に繰り出して助け合い、社会に変化を生み出したからです。その後に起きた東部紛争でも女性の前線での奮闘が注目されました。女性は何でもできるんだ、と人々の見方を変えたと思います。

ウクライナ東部ドネツクで行われたウクライナの平和と統合を訴える平和的デモに参加した女性たち=2014年4月、渡辺志帆撮影

――「アイ・キャン」ではどんな活動をしているのですか。

ウクライナには、男性によるセクシズム(女性蔑視)が確かに存在します。でも女性の進出を阻むのは、女性自身の思考だという調査研究もあります。「アイ・キャン」では、ビジネスや芸術など各界で成功を収めた女性たちにメンター(助言役)となってもらい、ワークショップや講話を通じて女性の社会進出を後押ししています。

――課題はありますか。

人々の意識は一朝一夕には変わりません。ウクライナの女性は、男性をたてて、自分の能力を隠します。たとえば夫にしたアドバイスがうまくいって感謝されても「あなたの心を読んだだけよ」と一歩下がる。教会の影響力が強い西部地域などでは特に、女性は男性に従属すべきだと考える傾向があります。

活動していて、男女平等の知識を正しく持つ10代の少女に出会うことがあります。でも、彼女たちが家に帰れば「いい夫を見つけて養ってもらえ」と言う両親がいる。学校には「女子は走り回るな」「男子は涙を見せるな」と説く教師がいる。正しい情報に触れても、一方でそれに反する現実を目の当たりにしてしまうのは問題です。

首都キエフにある、家庭内暴力(DV)被害者支援団体「ラ・ストラーダ」では、被害者からの電話相談や情報提供を行っている=渡辺志帆撮影

――今後の目標は。

女性閣僚を増やすことも現状打開には必要です。国会議員になる女性は増えてきましたが、まだまだ足りません。

私たちが育てたいのは、経済的に自立した女性です。中間管理職ではなく、トップの地位に就き、ビジネスでも、結婚するしない、子供を持つ持たないなど自分の生き方においても決定権を持つ女性です。女性がより決定権と経済力を手にすれば、家庭内暴力(DV)が減るという研究があります。女性たちの決定権が強まれば、彼女たちは自信を深め、さらに多くの女性が後に続くと思います。