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コロナ禍の中でも大にぎわい 名だたる企業も注目、そこは「バーチャルマーケット」

World Now
バーチャルリアリティーの世界に入り、アバターを操作する

開催されたのは「バーチャルマーケット」(VM)。参加者はアバター(分身)となって、バーチャルリアリティー(VR)で作られた仮想空間の街に降り立つ。中では、アバター自体やアバターが身につける服などの買い物ができるほか、車の試乗体験をしたり映画館に入ったり、あたかも休日の街並みを散策するような体験ができる。道行くアバターに声をかけおしゃべりをするといった楽しみ方もあるという。

東京都の小池百合子知事が「STAY HOME週間」と宣言した大型連休まっただ中の4月29日、イベントは12日間の日程で始まった。

参加者がアバターとなって集まるバーチャルイベントの会場。羽田空港をモチーフにしている

初日。ネット上の開会式は異様な盛り上がりを見せていた。「もう楽しみすぎて倒れそう」。視聴者は瞬く間に1千人を超え、チャット欄には開幕を待ちわびた人のコメントとともに、こんな声が続いた。「いま現実で1000人以上が集まっている場所ってどれだけあるんだろう……」。

4回目となるVMが始まったのは2年前。初回は延べ数千人だったという参加者は、2回目に約12万5千人、3回目は約71万人と一気に増加。その急成長ぶりに、主催会社「HIKKY」の舟越靖代表取締役CEO(42)も、「正直全然イメージしていなかった。予想をはるかに超えていた」と驚きを隠さない。海外の関心が高いのも特徴で、参加者の過半数は米国や韓国など国外からだという。出展企業も増え続け、今回はソフトバンクやセブン&アイ・ホールディングス、アウディジャパンなど、様々な業種の43企業が名を連ねた。

東京をモデルにして作られたバーチャルマーケットの街並み。渋谷のハチ公像や東京タワーもある

バーチャルイベントとはどんなものか。実際に体験してみた。

3D(立体)の映像を直接味わうには頭に装着するヘッドマウントディスプレー(HMD)が必要。だが、パソコン画面でアバターを操作するだけなら一般のパソコンでも参加できる。

HMDを頭に着け、VRの世界に入った途端、360度見渡す限り、別世界が広がった。スキューバダイビングで海に飛び込んだような感覚だ。

会場は、実際の東京をモデルにして、東京スカイツリーや渋谷の交差点、歌舞伎座などが各名所が再現された「パラリアルトーキョー」のほか、おとぎの国や未来都市など6種類の世界があり、全体で36会場にも上る。同社ディレクターの新津佑介さん(39)は「(会場の)広さは無制限。どれだけ広く作ろうが、狭く作ろうが自由です」と話す。

バーチャルマーケットの会場に入り、記者が体験したアバターの姿

左右の手で持つコントローラーを使いながら街を歩くと、数人のアバターに出くわした。30代前半だという男性は、昨夏からVRにはまったという。「このご時世、実際には会えなくても、アバターなら家から徒歩ゼロ秒でいろんな人と会える。表情も変えられて、目の前にいるかのようにしゃべれるのがいいですね」。日頃はVR内でクラブのイベントに通い、音楽をかけながらアバター同士で踊っているという。

大手百貨店・三越伊勢丹の店舗に入ると、男性のアバター店員が接客していた。同ホールディングスチーフオフィサー室の仲田朝彦さん(36)が自宅から操作していたアバターは、自身の姿をスキャンして作ったという。

店内ではリアルとバーチャル両方の服や靴などが売られ、その場でアバターが服を手に取り、鏡にあわせて見ることもできる。気に入れば、通販サイトに飛んで購入もできる。

今回の出展は、仲田さんが社内起業制度に応募して実現した。「間違いなく世界一アバターが集まる市場。規模の大きさや、10代、20代の若者が集まる業界にすごく魅力を感じた」。海外からも24時間いつでも出入り可能。VRでは在庫リスクもなく、すぐに自分のアイデアを具現化できる。「仮想の中で新しいファッションにチャレンジして、そこで人気になった商品がリアルでも生産される、という流れも作りたい」。将来的には、「現実と仮想を連携させて、現実と仮想の二つの自分でハイブリッド型の自己実現をしていく。そんな価値を提供したい」と力を込める。

なぜアバターなのか。イベントが生まれたいきさつから、意外な答えが返ってきた。

HIKKY取締役の男性は「動く城のフィオ」と名乗り、普段から少女のアバターの姿で働いている。VMを立ち上げた張本人だ。

普段からアバターの姿で働くHIKKY取締役の「動く城のフィオ」さん

妻と2人の息子がいるが、会社勤めをしていた働き盛りのとき、うつ病を発症し、完全なひきこもり状態になったという。人と会うのが怖くなり、電車にも乗れない。数千人の友だちがいたフェイスブックのアカウントを消し、電話番号も変え、社会との関わりを全て断った。

だが、幼い子どもを抱えてどう生きていくか。そのとき出会ったのがVRだった。VR空間内では見た目もキャラクターも変え、なりたい姿になれる。対人恐怖もなく、自由に人と話せた。「家の外にも出られず、ベッドの中で『死にたい』としか言っていなかった自分が、アバターで過ごすことで、ものすごく救われた」。

そんなアバター文化を育み、VRの中でも普通に暮らしていけるようにするために始めたのがVMだった。

フィオさんは言う。「将来、一人1アバター以上を必ず持つようになる」。現実の世界だけでなく、並行するたくさんの世界の中に生活空間ができれば、いろんな働き方や生き方ができるようになる。「たとえ現実世界では活躍するのが難しかったとしても、アバターを持つことで活躍できる可能性が出る。今よりもっと豊かな社会になると思います」

■主催会社HIKKYの代表取締役CEOを務める舟越靖さんは、「リアルとバーチャルを分けるのはもったいない」と話します。その心は。続きは以下インタビューでどうぞ。

世界から「100万人」集めるバーチャルマーケット リアルと仮想を重ねる挑戦だ