1. HOME
  2. World Now
  3. 41年ぶり日本人が大賞 世界報道写真コンテストで千葉康由さん

41年ぶり日本人が大賞 世界報道写真コンテストで千葉康由さん

世界報道写真展から――その瞬間、私は
People chant slogans as a young man recites a poem, illuminated by mobile phones, before the opposition's direct dialog with people in Khartoum on June 19, 2019. - People chanted slogans including
今年の世界報道写真コンテストで大賞を受賞した千葉康由さんの「Straight Voice(まっすぐな声)」©Yasuyoshi Chiba/AFP

毎年開催されている同コンテストは、主に前年1年間を通じ世界各地で撮影された報道写真の応募を受け付け、審査員による議論を経て、4月に結果を発表している世界的に権威あるフォトコンテスト。今回は125カ国・地域、4282人から「一般ニュース」や「スポットニュース」などの8部門に応募があり、24カ国44人の作品が受賞した。応募があったすべての中で最も優秀な写真を撮影したカメラマンに贈られるのが大賞だ。千葉さんは「一般ニュース」部門でも同じ写真で1位となった。

大賞を受賞した千葉さんは取材に対し、「歴史的な報道写真のアーカイブの一枚に選ばれたことを光栄に思います。その場に居合わせなければ知ることができないことが世界や日本でたくさん起こっています。自分たちが歴史の中に生きていることを自覚しながら、これからも撮影していこうと思います」と話した。

41年ぶりに大賞を受賞した千葉康由さん(シギー吉田さん撮影)

大賞写真「まっすぐな声」は、昨年63日にスーダンで起きた治安部隊による反政府デモへの弾圧で100人以上が死亡したとされる事態を受け、現地入りした千葉さんが、停電による闇の中、政府への抗議を込めた詩を歌う少年たちを写した1枚だ。

「この詩は反政府的なもので、このプロテストが起きている中、みながいつも歌っていたものだと聞きました。スーダンの人々が思いを唄に託すという行為に初めて出あい、驚きました」と千葉さん。武装した治安部隊が巡回する緊張状態にあって、暴力ではなく唄に思いを託すスーダンの人たちの姿に心を強く動かされた。周囲の人たちの携帯電話の光の中で少年が放つオーラに圧倒され、シャッターを切ったという。

千葉さんの写真について、審査員の一人は、YouTubeに公開された動画で、「若者たちの力、芸術の持つ力、そして希望を力強く示した一枚」。別の審査員は「とても静かで美しい写真だが、変化を望む世界中の人々の不安を代弁している」などと説明した。

日本人として41年ぶり4人目の大賞受賞となったことについて千葉さんは、「過去の受賞作を見ると、誰もが見たことがあり、記憶にとどまっている写真が多い。この歴史あるコンテストで選ばれたことは、幸運だと思っています。スーダンの写真が選ばれたことは、彼らや世界の同じような境遇の人たちへの、WPP審査員からの応援メッセージでもあると勝手に思っています」と述べた。

過去に大賞を受賞した日本人は次の通り。1961年、長尾靖さん(毎日新聞)の日本社会党浅沼稲次郎委員長刺殺の瞬間を捉えた写真▽1965年と66年の2年連続、沢田教一さん(UPI通信)のベトナム戦争の写真▽1979年、三上貞幸さん(AP通信)の成田闘争の写真。

■「スポットニュース部門」で2位、黒川大助さん

今回のコンテストでは、黒川さんの「Nairobi DusitD2 Hotel Attack(ナイロビのデュシットD2ホテル襲撃)」が、「スポットニュース部門」で2位となった。

今年の世界報道写真コンテストの「スポットニュース部門」で入賞した黒川大助さんの「ナイロビのデュシットD2ホテル襲撃」©Dai Kurokawa/EPA

黒川さんは取材に対し「世の中にまかり通っている不条理を伝えたい、写真一枚で社会を動かすことができるかもしれない、という気概をもって取り組んできた。人々の良心を呼び覚ますような写真を撮り続けたい」と話した。

受賞写真「ナイロビのデュシットD2ホテル襲撃」は昨年115日、ソマリアを拠点とするイスラム系武装勢力アル・シャバブが起こしたテロ事件。トランプ米大統領が、エルサレムをイスラエルの「首都」と承認すると宣言したことへの報復として、アル・シャバブは多くの外国人が出入りするナイロビ市内の高級ホテルと、オフィスなどが入った複合施設を襲撃、700人以上が避難し、約50人の死傷者が出た。

いち早く現場入りした黒川さんは、爆弾によって炎上する車両や、避難者の様子などを写真におさめた。受賞作は、警察官に現場からの退出を命じられる直前にシャッターを押した最後の一枚だという。「そのときは必死だったが、列をなして逃げる女性たちのおびえている様子と、銃を構える警察特殊部隊の勇敢さのコントラストを描けていた」と話す。

黒川大助さん(Daniel Irungu撮影)

千葉さんと黒川さんは、ともにナイロビ在住のため親交がある。両者によると、今回の受賞を受け、SNSを通じて連絡をとり、お互いの受賞を喜び合ったという。

日本人2人の功績が評価された今回のコンテストだが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、通常はアムステルダムで開かれている大賞授賞式と関連イベントはすべて中止となった。日本では毎年、入賞作品を紹介する「世界報道写真展」(朝日新聞社など主催)が、東京、大阪、滋賀、京都、大分の5会場で開かれているが、今年の開催は現時点では未定となっている。

■千葉康由(ちば・やすよし)

1971年生まれ。大分県佐伯市出身。武蔵野美術大学映像学科卒業後、95年に朝日新聞社に入社。写真記者として多くの連載や記事に携わる。2007年に退職し、フリーフォトグラファーとしてケニアに移る。11年にAFP通信のスタッフフォトグラファーとなりブラジル・サンパウロ支局勤務。13年にリオデジャネイロ支局に異動し、サッカーのワールドカップ、リオ五輪を取材した。17年に再びケニアに戻り、現在は同通信社ナイロビ支局チーフフォトグラファー(東アフリカ・インド洋担当)。

 ■黒川大助(くろかわ・だいすけ)

1975年生まれ。神戸市出身。高校からカナダで過ごし、カルガリー大学(アルバータ州)で英文学を学ぶ。99年から東京都内の通信会社で勤務したのち、2005年にフリーランスのカメラマンに。タイ・バンコクを拠点にミャンマー(ビルマ)の内戦の様子をおさめるなど、東南アジア各地を回る。06年、EPA通信のバンコク支局に勤務。07年から同東京支局。10年から同東アフリカ支局に勤務し、ソマリアやコンゴ、ケニアの紛争地などを回る。現在は同支局チーフフォトグラファー(東アフリカ・インド洋担当)。

※千葉さんや黒川さんの受賞写真の撮影背景などについては、朝日新聞GLOBE5月号とGLOBE+で詳報します。