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「仕事と家庭の両立」、それが女性を追い詰める 「スリール」堀江敦子の解決策

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「スリール」社長の堀江敦子さん

日本の職場では露骨な性差別はだいぶ減った印象ですが、「子育ては母親の仕事」といった性別による役割分担の固定観念が依然、根強くあります。仕事と子育てを両立する女性が、実の母親から「なぜ子供を預けてまで働くの?」「私は専業主婦だったからあなたも」と迫られる話をよく聞きます。夫の収入が高い首都近郊などで、M字形カーブ(女性の労働力参加率が子育て世代で低くなる傾向)が顕著な背景にも、この固定観念があるのです。

この状況を変えるため、2010年に企業向けの研修などを行う会社「スリール」を発足、学生に共働き家庭での子育てを体験してもらう「ワーク&ライフ・インターン」を実施しています。学生は子育てを通じて、自分の近い将来を考えると同時に、自分がどう育てられたかを振り返り、親も悩んでいたと気づく。自分の育てられ方がすべてではなく、自分の選択をしていいと分かります。さまざまな両立の具体例を知って、子育てへの不安や固定観念も払拭(ふっしょく)される。男子学生も含め1000人以上が経験し、授業に取り入れた大学もあります。

私自身、大学時代に200人のお子さんのベビーシッターをしました。女性起業家のお子さんのベビーシッターを生後1カ月半からして、「子育てと仕事ってこんなふうにやればできるんだ」と学んだ。両立への不安が消え課題や解決策が見えてきたんです。

管理職に仕事と子育ての両立を体験してもらう「イクボスブートキャンプ」もやっています。午後4時に仕事を切り上げ、保育園にお迎えにいき、ご飯をつくる。管理職は、時間通りに仕事を切り上げる大変さや焦り、子どもがまったく言うことをきかない大変さを経験し、「部下が毎朝来ていること自体がすごいかも」と尊敬の念を抱くようになります。

言うことをきかない子に「ごはんを食べろ」と言っても食べてくれない。それを身をもって知った管理職は、部下に「仕事しろ、仕事しろ」と言ってもうまくいかないのと同じだと気づくのです。いかに他者を理解しインクルード(包含)していくかを学んでいただくのです。

企業名のスリールはフランス語で「笑顔」。通勤電車に揺られるおじさんも夫婦も子どもも笑顔でいてほしい。自己肯定感と他者理解がキーワードです。

現状を変えるには、①固定観念の払拭(ふっしょく)、②みんなが自己肯定感を抱く、③社会問題に当事者意識をもつ、という3本の軸が大事だと考えています。

男性ばかりの職場にいる女性の気持ちを理解してもらうために、インド人ばかりの会社に日本人が1人で管理職として配属されたら、という話もします。社内の公用語は英語ですが、インド人たちは大事なことをヒンディー語で相談して決めてしまうので、日本人管理職は孤立してマネジメントができません。男性が多い日本の会社で、夜の飲み会やゴルフなど「オールドボーイズコミュニケーション」と言われる場で大事なことが決まっていくのと似ていませんか。女性が排除されている環境に気づき、女性のための環境を整えていくことが必要です。


ほりえ・あつこ スリール社長。女性活躍推進のコンサルティングやキャリア教育に取り組む。内閣府男女共同参画会議専門委員。