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ニューヨークで働き30年 サーロー節子さんと出会い目覚めた被爆2世の思い

私の海外サバイバル
記録映画を作ったサーロー節子さんと

■私のON

日本とは違い、米国は人種や文化、ライフスタイルなどが多様です。消費者に商品を分かりやすくアピールできる映像などのコンテンツ制作に力を入れています。これまでに家電やIT系の企業の支援をしてきました。

広島の高校を卒業した後、心理学を学ぶため、ニューヨークの大学に留学。卒業後は帰国する予定でしたが、こちらの人のエネルギーや真面目な姿勢にひかれ、電通の現地法人である広告会社に就職しました。1980年代のことです。当時のニューヨークは、不景気で犯罪率も高く、とても物騒な都会でしたが、その中でも自分のやりたいことを追求して生き生きと暮らす人がたくさんいました。

ニューヨークは新しいメディアとしてケーブルテレビや衛星放送が台頭し始めたころで、視聴者が自分で見たいものを選べる多チャンネル放送に、私自身も大きな可能性を感じていました。たまたま入社6年目に、設立されたばかりの日本衛星放送(現WOWOW)の依頼で、日本で放送する米国の番組を発掘する仕事をすることになり、これが独立のきっかけになりました。

ニューヨークのオフィスで

30年以上会社を続けていますが、時代や市場の変化に伴って、顧客である日系企業が求めるサービスの内容は変わります。私たちは小さな会社なので、マーケティングや経営戦略などさまざまな専門性を持つMBA(経営学修士)取得者の友人らとネットワークを作り、臨機応変に対応できるようにしています。顧客企業との窓口になり、チームのマネジメントをするのが私の役割です。現地の専門家を入れることで、日本人だけだとなかなか出てこない発想が生まれることもあり、とてもやりがいを感じます。

ビジネスコンサルタントとしての仕事のかたわら、核兵器廃絶に向けた活動にも取り組んでいます。その一つが、カナダ在住の被爆者で、広島での被爆体験の証言を米国などで続けてきた、サーロー節子さんのドキュメンタリー映画の制作・配給です。

サーローさんは2017年のノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)とともに活動を続け、授賞式では団体を代表してスピーチをしました。映画は15年に撮影を始め、授賞式のあったノルウェー・オスロでの様子までを収めました。

自主制作した記録映画の音声収録

私は被爆2世ですが、日本でも米国でも長らく、そう意識することもない生活を送ってきました。転機になったのは10年、米国の高校などで被爆体験の証言会を続ける団体から通訳を頼まれ、サーローさんらの活動を知ったことです。

サーローさんは出身高校の先輩という縁もあります。寝食を共にしながら活動のお手伝いをするうちに、原爆投下時に広島赤十字病院の院長だった、私の祖父の被爆体験に向き合うことにもなりました。そうした生活の中で、被爆者の家族に生まれた者として、何かしないといけないという、責任のようなものを感じるようになったのです。

映画はサーローさんへのインタビューも交え、半生を追った80分。19年に完成し、各地の映画祭で上映してもらえるよう働きかけをしています。日本でも公開できるよう準備を進めています。

ニューヨークの国連本部で演説し、核兵器禁止条約への支持を訴えた=2019年9月

核兵器大国の米国では、核に肯定的な印象が強く、日本ほどその脅威は知られていません。17年に国連で採択された核兵器禁止条約への関心も低いままです。その米国に住む広島出身者として、サーローさんの体験やメッセージを伝え、核兵器の問題が抽象的なことでも他人事でもないことを知ってほしいと考えています。映像が、その手段としても力を発揮してくれると期待しています。

■私のOFF

パブリックスピーチとリーダーシップを学ぶ「トーストマスターズ」というクラブに入っています。活動は週1回、木曜日の夜の1時間半程度。毎回違うテーマについてメンバーがスピーチをし、ほかのメンバーが講評します。スケジュールが可能な限り、参加するようにしています。

竹内道さん(中央)が代表を務める「トーストマスターズ」。40人ほどのメンバーがパブリックスピーチなどを学んでいる

映画制作を始め、被爆2世として証言をする機会が増えるだろうと考えたのが入会のきっかけです。私はシャイで、「パブリックスピーチなんて、とてもじゃないけど苦手だなあ」と思っていたのですが、多くの方が核兵器をなくそうと一生懸命取り組んでいるのに、被爆体験者の家族である私がのほほんとしているのはおかしい、と思うようになりました。みんなの前で話すことに随分慣れ、時間内にスピーチを終えられるようになりました。

ニューヨーク市には約250の「トーストマスターズ」があり、私は自宅から歩いて10分のところにあるクラブに通っています。メンバーは約40人。LGBTの人たちも多い、多様性のある会です。

クラブはボランティアの役員会が運営しているのですが、わずか6人ほどで切り盛りしているため、「目が回る忙しさ」の時もあります。2020年は、持ち回りで私がプレジデント(代表)を務めることになりました。不安もありましたが、とても団結力のあるクラブです。ほかのメンバーのサポートも得ながら、頑張りたいと思います。

「トーストマスターズ」は日本にもたくさんあります。日本人が苦手な英語でのスピーチを練習する良い機会になると思いますので、おすすめです。