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原子力は、次へのつなぎのエネルギーだ

World Now
ジョージ・ワシントン大学特任教授シャロン・スクアッソーニ=小川裕介撮影

――トランプ政権は、余剰プルトニウムからMOX燃料を作る計画を中止し、核戦略見直し(NPR)に基づいて、同じ施設で核兵器の心臓部分である「プルトニウムピット」を作る計画に転換しました。どうみていますか。

この転換を理解するには、地方政治から考える必要がある。これはすべて雇用の問題だ。米ロの合意によって、余剰プルトニウムを捨てる代わりにMOX燃料を製造し、商業用の原発で燃やすことを決めた。だが、電力会社はMOX燃料を望んでいなかった。MOXは、原発でふだん使っているウラン燃料よりも厳しいセキュリティーが必要で、割高になる。燃料を製造する工場を建設する必要もあった。計画は、とても高くつくことが明らかになり、コストは経済性がなくなるところまで膨らんだ。オバマ政権はコストが高すぎると判断し、トランプ政権も同様の判断をした。問題は、建設中の施設が残されたことだった。そこで浮上したのが、核兵器のプルトニウムピット製造に切り替えるというアイデアだった。
トランプ政権のアプローチは「再び米国を偉大に」ということ。いったん工場を建てれば雇用が生まれ、投票につながる。彼らは工場が閉鎖されることを望まないだろう。しかしいったん工場が動けば、(核物質による)汚染も始まる。長年にわたって管理し続けなければならない。

――米政府は余剰プルトニウムの廃棄も進めています。

今後、大量の核兵器の解体を進める必要があり、廃棄の政策は正しいと考える。問題は、どの程度まで透明性を確保できるかだ。すべてをブラックボックスにして、ただ「私たちがやっていることは見えないけど、信頼してください」というのは良くない。

――近年の原発輸出における中国やロシアの台頭はどう見ていますか。

この10~15年の間で原発の市場は大きく変わった。旧来の供給国である西側諸国は、政府が財政的に支援する中国やロシア、韓国よりも市場で弱くなった。中国はパキスタンにも原子炉を輸出しており、ロシアも戦略を打ち出している。こうした原発の輸出は政治的な影響力を狙っている。
心配しているのは、核セキュリティーよりは安全面だ。原子力はコストが高いので、買い手は資金援助を求める。米国や日本は援助できないが、ロシアと中国はできる。そのため、あまりインフラが整っておらず、原発を安全に運転する能力に欠ける国に原子力が広がっている。

――核エネルギーはアフリカや南米にも広がっています。

10年前に原子力ルネサンスが叫ばれた頃は、80カ国が関心を持っていると言われたが、現実は違った。南米にはアルゼンチンやブラジルなど原子炉を少し持っている国もあるが、科学者や技術者はわずかで、コストがかかりすぎることも理解している。今後も新たに原発を持つ国は出るだろうが、言われていたほどには拡大しないのではないか。

――核エネルギーは今後も使われていくでしょうか。それとも次の新たなエネルギーへの「つなぎ」でしょうか。

核エネルギーは、恐らく次へのつなぎだろう。私たちは原子力を安く、安全にする方法をまだ見つけていない。核エネルギーには、コスト、安全性、運転方法、核拡散の四つの大きな問題があるが、(利用を始めてから)70年経っても完全には解決されていない。

例えば、中国にとって低炭素で発電できる核エネルギーは、石炭を燃やすよりスマートだが、すべての低炭素のエネルギーを見ればナンバー1ではなく、唯一のベースロード電源でもない。原発に投資してきた資金を、再生可能エネルギーに回す動きも出てきており、それが未来のエネルギーになるのではないか。

核融合も進歩を遂げている。核拡散のリスクが完全にないわけではないが、(原発の)核分裂よりも良い。私は反原発ではないが、70年経っても安全でもなく安くもできていないのなら、代わりの低炭素電源を考えるべきだろう。
私たちが話したがらない放射性廃棄物の問題もある。まだ(フィンランドとスウェーデンの)2カ国しかこの問題の解決策を導き出せていない。いくつかの国は地震などの危険性があり、すべての国が適切な処分場所を探し出せるわけではない。多国間の枠組みで解決策を探る時期に来ていると思う。