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台所もプールも自由に行き来 人と暮らすフラミンゴ「ボブ」は自然保護の先生

世界報道写真展から――その瞬間、私は
世界報道写真展の受賞作品(Jasper Doest 撮影)

「目が覚めたら、ピンク色の鳥が部屋にいたんだ」。オランダ人の写真家ヤスパー・ドゥースト(40)は、ベニイロフラミンゴの「ボブ」との出会いを振り返る。

ドゥーストは2016年末、野生動物を保護する財団「FDOC(カリブ動物と教育財団)」の運営者で獣医師のいとこに会うため、カリブ海のキュラソー島を訪れていた。ホテルのプール付近の窓ガラスにぶつかってけがをしたボブを、いとこが手当てした後、自宅に連れて帰ってきた。けがをする前もおそらく人間に飼われていたボブを「野生に戻したら生きていけない」と考えたからだ。

フラミンゴは本来、警戒心が強くて神経質といわれる。それなのにボブは、キッチンや部屋を行き来したり、自宅のプールで過ごしたり。ドゥーストは、すっかり人間の生活に溶け込んだボブの姿に魅せられ、観察を始める。

写真は、地元小学校の授業風景だ。いとこがフラミンゴとその生息環境について教えているかたわらで、ボブは教室内を自由に動き回っている。ドゥーストは「ユーモアで人々をひきつけるのではなく、ボブの日常を通して野生動物の保護について考えてほしかった」と話す。

「世界報道写真コンテスト」のコンテスト・マネジャー、アナ・レイナ・ミール(38)は「人々が環境や野生動物保護の問題に対してどういった解決策を導き出しているのかを写真で訴えている。ソリューションジャーナリズムの好例だ」と評価する。

ドゥーストは語る。「人間と自然との交差点に焦点をあて、自然界と私たちとのギャップを埋める力になりたい」。ボブは今日も、キュラソー島で「大使」として活動している。 (本間沙織)

■ベニイロフラミンゴの国

ベネズエラ沖のカリブ海に浮かぶ三つの島、アルバ、ボネール、キュラソーには、ベニイロフラミンゴが多数生息する。三つの島は総称して「ABC諸島」と呼ばれ、アルバ、キュラソーはオランダの構成国、ボネールは特別自治体だ。

「人よりフラミンゴのほうが多い」と言われるほどのボネール島は、空港名も「フラミンゴ国際空港」、入国スタンプや車のナンバープレートにもフラミンゴがあしらわれていた。アルバ島のフラミンゴと泳げるプライベートビーチは、インスタグラムでも話題になった。一方、リゾート開発によってえさやり場や巣が侵害されたり、観光客が石を投げたりするケースも増え、フラミンゴの生存を脅かしている。