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マンハッタンの屋上、広がる太陽光パネル

ニューヨークタイムズ 世界の話題
Solar Panels on a roof in New York, June 11, 2019. Manhattan now has the country's biggest array of solar panels on an apartment complex and the Bronx could soon have a bigger one. (Gabriella Angotti-Jones/The New York Times)
ニューヨーク・マンハッタンの屋上に敷設された太陽光パネル=2019年6月11日、Gabriella Angotti-Jones/©2019 The New York Times

空高く、何千エーカーという屋上が広がるニューヨーク。この大都会は米国で最も電気代が高い地域の一つであり、気候変動への取り組みでは先進的な役割を果たしてきた。

しかし太陽という持続的なクリーンエネルギーを利用することでは、他の大都市に後れを取ってきた。

それが今日、ニューヨークの州知事や市長が化石燃料の利用をやめるという大胆な方針を打ち出し、同市内の幾多の建物の平らで広大な屋上の一部を安価で環境にやさしい電源に変えようとしている。

2019年、マンハッタンにある住宅街スタイブサントタウン・ピータークーパービレッジ(Stuyvesant Town-Peter Cooper Village)の所有会社は、アパートの屋上に米国最多の太陽光パネルを敷設した。近々、ブロンクス区ではそれより多い太陽光パネルを共同住宅街コープシティー(Co―Op City)に設置するプロジェクトが動き始める。

この種の大規模民間プロジェクトは、ニューヨークがロサンゼルスやサンディエゴといった太陽光発電では先進的な大都市に追いつくうえで、大いに役立つだろう。

建物の所有者たちは、ニューヨーク州知事アンドリュー・M・クオモが打ち出した電力の化石燃料からの転換方針に基づいて奨励金が受けられる。クオモとニューヨーク市長ビル・デブラシオは、向こう数十年間に太陽光や風力といった自然の再生可能エネルギーに大胆に転換しようとする「グリーン・ニューディール」政策を互いに進めている。

同年6月、州政府は2030年までに再生可能エネルギーによる発電を州内の発電能力の70%まで引き上げるとの目標を発表した。その2カ月前、ニューヨーク市議会は、ほとんどの新築の建物の屋上に太陽光パネルを設置するか、草や他の植物で覆うよう求める条例を承認した。

「ニューヨークでは、いくつか本当に力強い太陽光利用の動きが出てきている」。太陽エネルギーを推進する非営利組織ソーラー・ワンの「Here Comes Solar(ソーラープロジェクトがやって来た)」プロジェクト部長ノア・ギンズバーグは言った。

スタイブサントタウン・ピータークーパービレッジは、略して「スタイタウン(StuyTown)」として知られる。このスタイタウンに立つ56棟のアパートの屋上に9千枚以上の太陽光パネルが敷設された。今のところマンハッタンでは断然トップの規模で、ギンズバーグによると、マンハッタン区の太陽光発電能力は3・9メガワット増え、実質的に2倍になった。これは1100戸以上の電力を十分まかなえる量だ。

スタイタウンの所有会社であるブラックストーン・グループによると、プロジェクトにかかった費用は1千万ドル近かったという。ニューヨーク州エネルギー研究開発局の「NY―Sun」プログラム部長デビッド・サンドバンクの話では、そのほぼ4分の1にあたる230万ドルが同プログラムの奨励金でまかなわれた。NY―Sunプログラムは10億ドルをかけて太陽エネルギーの利用を促進しているという。

スタイタウンは、ローアーマンハッタン(訳注=マンハッタンの南部地区)の80エーカー(約32ヘクタール)に戦後に建てられたスタイブサントタウンとピータークーパービレッジで構成され、1万1200戸が入っている。新たに稼働した太陽光発電はアパートのほんの一部をまかなう程度だろうが、パネルの敷設でどのくらい電力料金が節約できるのか、ブラックストーン・グループは明かそうとしない。

ニューヨーク市とニューヨーク州は、家主や土地所有者への税控除、その他の奨励金を通じて太陽光発電に多額の投資をしている。奨励金制度は、23年までに州全体で3千メガワットの太陽光発電をめざして14年に始まった。19年に入って、クオモは目標を2倍の6千メガワットに引き上げた。ただ、達成への具体策は明らかにしなかった。

一方、ソーラー・ワンのギンズバーグは、ブロンクス区のコープシティーの管理者たちと立体駐車場の屋根に太陽光パネルを敷設するプロジェクトを進めている、と明かした。コープシティーは米国では最大規模の民間共同住宅街。このプロジェクトは同年8月に入札を見込んでいて、ギンズバーグによると、5メガワット以上の発電量で1500戸分の電気を十分まかなえるという。コープシティーは35棟のアパートに1万5千戸以上が入っている。

だが、こうしたプロジェクトも、現地の人々が消費する電力のほんの一部しかまかなえない以上、現段階での太陽光発電の限界を明示している。

スタイタウンに暮らす2万7千人の住民は、太陽光パネルが敷設されても直接の恩恵は受けていない。なぜなら、毎月の家賃が電気、水道代込みで、住民は個別の電力使用料を払っていないからだ。借家人協会代表のスーザン・スタインバーグはそう説明した。

スタインバーグの話だと、1年間も続いた工事でクレーンや労働者たちが動き回っていたため、ほとんどの住民はプロジェクトに気づいていたと言った。19年になって、スタイタウンの管理会社スタイタウン・プロパティー・サービスは、スタイタウンがNPO米グリーンビルディング評議会からLEED(訳注=省エネや環境に配慮したデザインなどに関する環境性能評価)の「プラチナ認証」を取得した、と発表した。

スタイタウンの管理運営について、スタインバーグは「彼らは誇りに思っているし、誇りに思って当然と私も思う」と話した。

ブラックストーン・グループのスタイタウン総支配人のリック・ヘイダックは、太陽光発電で得る金は管理会社に入ることになるだろうが、住民にも目に見えない恩恵が出てくるだろう、と言った。彼は、住民たちから「家主は良いことを重点的にしている。そうしたコミュニティーに住んでいる」のはいい気分だと話しかけられた、と言った。

ヘイダックによると、スタイタウンの太陽光パネルで発電した電力を送電網で地元の電気会社コンソリデーテッド・エジソン(通称コン・エジソン)に供給し、その分の電力料金を受け取っているという。

スタイタウンのすべての電力需要をまかなえなくても、ここで得られた太陽エネルギーは、コン・エジソンの供給電力がピークを迎える真夏の猛暑時の負荷を軽減する、とコン・エジソン配電計画部長のダミアン・シアーノは話した。

「コン・エジソンが電気を供給している全地区の中で、マンハッタンは太陽光を十分取り込むのが最も難しかった」とシアーノ。

コン・エジソンが電気を供給しているニューヨーク市と郊外のウェストチェスター郡の一部における太陽光発電量は、シアーノによると250メガワット。コン・エジソンが予測するピーク時の電力需要量約1万3400メガワットのほんのわずかでしかない。

業界団体の太陽エネルギー産業協会(SEIA)のアビゲイル・ロス・ホッパーCEOの話では、米国内の太陽光電力は、電力全体のわずか約2%に過ぎない。業界としては30年までにこの比率を20%まで高めたいと期待している、とホッパーは語った。(抄訳)

(Patrick McGeehan)©2019 The New York Times

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