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発電する道路 中国の挑戦

ニューヨークタイムズ 世界の話題
太陽光パネルを敷き詰めた中国・済南市の「ソーラー道路」を走るトラック=2018年1月13日、Giulia Marchi/©2018 The New York Times。高速道路の下り坂に2017年12月、試験運用区間ができた

高速道路の坂を下り切ったカーブを、大型の木材運搬車やタンクローリーが轟音(ごうおん)とともに走り抜けていた。ガードレールの外側は深い谷だ。
タフな運転が求められるこの難所に、研究陣の熱い視線が集まる。道路には、太陽光パネルが敷き詰められている。

現場は、中国山東省の省都・済南市の郊外。プラスチックのような物質に覆われた特殊なパネルが使われている。「ここでの実験がうまくいけば、どんなところでも大丈夫」。製造元の「山東光実能源社(英名・Shandong Pavenergy)」の会長、李武は期待を込める(訳注=「能源」は「エネルギー」の意味)。

その通りになれば、再生可能エネルギーの世界に大きな影響を与えるに違いない。さらに、運転の負荷を大幅に減らす転換点にもなるだろう。
この実験は、戦略分野の強化に力を入れる中国の最新の試みでもある。すでに世界の太陽光パネルの4分の3を製造しており、風力発電でも最大級の生産力を持つようになった。新たな技術開発に成功すれば、ますます多くの利益をもたらし、再生可能エネルギー市場での優位を固めることができるという構図がある。
アスファルトの代わりに、改良型の太陽光パネルを使う「ソーラー道路」。実用化されれば、さまざまな利点が生じる。
田畑などをつぶして太陽光発電をする必要がなくなれば、土地利用を大幅に効率化できる。中国のように巨大な人口を抱え、電力需要が急増している国ではとくに効果が大きい。

中国・済南市の高速道路沿いに設置されている通常の太陽光パネルと走行中のタンクローリー=2018年1月13日、Giulia Marchi/©2018 The New York Times

送電ロスは、ほとんどない。道路網は都市とその周辺で発達しており、消費地の足元で電力が生産されるからだ。土地代も、生じないに等しい。道路はもともと必要性があってつくるので、それを活用すれば、わざわざ発電所の敷地を確保する費用はかからないということになる。道路の維持費も、割安になるだろう。耐久性のあるパネルを敷くので、数年ごとに舗装の補修を繰り返す必要がなくなる。
運転の負荷も、軽減される。電熱効果で雪をとかす。発光ダイオードを使って、高速道路の出口を示したり、事故現場などの危険箇所を避けるように誘導したりすることもできる。
そんな「未来の道路」に、ようやく手が届こうとしている。太陽光パネルは普及が進み、中国で大量に生産されるようになったこともあり、価格はこの10年で10分の1になった。中国では、米国での実験結果をまねて、走行する電気自動車のワイヤレス充電も可能なソーラー道路にまで構想が広がっている。
その牽引(けんいん)役が、山東光実能源と、高速道路の建設・運営大手「斉魯交通発展集団(英名・Qilu Transportation)」だ。両社は済南市を拠点とする地場企業として提携しており、前者が太陽光パネルを製造し、後者に納めている。

タイヤを使ってソーラー道路に敷き詰める太陽光パネルの部品の耐久性をテストする機械=2018年1月12日、上海、Giulia Marchi/©2018 The New York Times

この太陽光パネルの表面は、プラスチックに似た複雑なポリマーで覆われている。その開発を技術的に指導してきた上海・同済大学教授の張宏超は「通常の道路の表面より少しだけ摩擦が大きい」と説明する。摩擦は、路面にタイヤがうまく接するかどうかを示すものだ。どんな敷設現場でも、アスファルトの道路と同様に走れるよう、パネルの製造過程で摩擦の大きさを調整することができると言う。
現在の試験運用区間は、もともとは山東光実能源の第1候補ではなかった。にもかかわらず、ここにしたのは、送電網への組み込みを優先したからだ。中国は、全土で太陽光と風力による発電を急速に増やしている。そこで生産された電力を送るには変電所を経由せねばならないが、これが難しくなっているという事情がある。

ソーラー道路は、西側諸国が先行していた。主要な競争相手は、フランスのコラス社だろう。駐車場も含めて、すでに25カ所でソーラー道路をテストしている。フランスが中心だが、カナダや日本、米国にも進出している。最大の現場は仏ノルマンディーの地方道にあり、1年半前にできた。ただし、路面の広さは済南市の半分しかない。それに、高速道路での運用となると、安全上の理由からまだかなり慎重だ。

これに対して同済大学の張は、パネル路面の安全性にはまったく問題はないと胸を張る。それでも、実用化には、まだ乗り越えねばならない課題がいくつもある。

上海・同済大学教授の張宏超=2018年1月12日、Giulia Marchi/©2018 The New York Times。ソーラー道路建設の技術指導にあたってきた

その一つは、太陽光発電の効率性だ。平らに敷設するので、パネルに角度を持たすことができない。しかも、走行車両が太陽光線を断続的に遮る。だから、発電能力は、屋根に取り付けた場合の半分しかない。
さらに、コストもかかる。アスファルトなら、再舗装や補修の経費は、10年ごとに1平方メートルあたり120ドルほどだ。一方、ソーラー道路は、大量生産でパネルの単価が下がったとしても、同310~460ドルになると見られている。
ただ、パネルは耐久性があるので、アスファルトよりも修復の回数は少なくてすむ。加えて1平方メートルあたり年間で15ドル相当の電力を生産するので、15年単位で考えれば、アスファルトと比べても採算は見合うようになると張ははじく。

中国・済南市のソーラー道路に敷設された太陽光発電のための単結晶シリコン・セル=2018年1月7日、Giulia Marchi/©2018 The New York Times

不確定要素は、走行によるパネルの損傷や盗難による被害だ。
2017年12月にパネルが敷設されて1週間もたたずして、一部がはぎとられたようになくなっているのが見つかった。単純な盗難事件ではなく、産業スパイの仕業と見る向きもあった。地元の警察は、十分な対策をとっていなかったとの批判を恐れてか、トラックの重みに耐えかねた一部のパネルがはがれたに違いないと主張する。これについて山東光実能源に尋ねると、コメントを拒まれた。
米国でソーラー道路を建設しようとすると、別の問題が生じる。道路の構造が違うからだ。
米国の州間高速道路の場合、橋など一部の例外を除けば、多量のアスファルトが使われる。半面、底部のコンクリート層はさほど厚くはない――テキサス大学教授のカーラ・M・コッケルマンはその構造をこう説明する。

ソーラー道路の建設に使われる特殊な車両=2018年1月12日、上海の同済大学、Giulia Marchi/©2018 The New York Times

問題は、アスファルトだ。トラックなど大型車の重みで、わずかに収縮する。すると、太陽光パネルを形成する極薄のセルが曲がって折れてしまう(中国の高速道路では、底部のコンクリート層が厚く、その上のアスファルト層が薄い構造なので、こうした問題が起きることはさほどない)。
それでも、ソーラー道路の将来について、中国関係者の期待は膨らむ。技術的にはすでに完成の域にあるとの思いがあり、米高速道路の構造問題もそれほど懸念する様子はない。
「条件さえそろえば、ぜひ米国でもソーラー道路をつくりたい」と斉魯交通発展集団会長の徐春福は、あくまで楽観的だった。(抄訳)

(Keith Bradsher) ©2018 The New York Times

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