■Q1 プルトニウムや濃縮ウランって何?
ウランやプルトニウムは核物質と呼ばれ、原子核が分かれる核分裂が連続すると莫大な熱エネルギーが生まれる。これを応用したのが原発や核兵器。放射性物質は、天然のカリウムや人工のセシウムなど放射線を出す物質の総称となる。
実は天然ウランの成分は、核分裂しにくいウランが大半。0.7%程度の核分裂しやすいウランを原発で燃やせるように濃度を3~5%に高めたのが低濃縮ウラン。濃度20%以上の高濃縮ウランは核兵器に使われ、広島型原爆「リトルボーイ」にも使用された。
核分裂しにくいウランも原子炉内で燃やせば、自然界には微量しか存在しないプルトニウムができる。核兵器に使われる可能性があるので、テロリストの手に渡ると非常に危険だ。長崎型原爆「ファットマン」に使用された。
原発では、濃縮ウランを焼き固めた小さな燃料ペレットが使われる。石油や石炭と比べて格段にエネルギー量が大きく、電気事業連合会によると、一般家庭が1年間に使う電力量(1カ月300キロワット時で算出)を発電するのに必要なウラン燃料は0.011キロ。燃料ペレットにしておよそ2個分となる計算だ。石油なら800キロ、石炭なら1210キロに相当する。
1957年に発足した国際原子力機関(IAEA)は、新たな核武装を許さない核不拡散が使命。今年2月現在、171カ国が加盟し、核不拡散条約(NPT)の締約国のうち米ロなど核保有の5カ国以外は、IAEAの査察受け入れなどが義務づけられる。核兵器の盗難や盗まれた核物質の悪用を防ぐ核セキュリティー強化のためのガイドライン作りも行っている。
■Q2 原発の発電量は減る?増える?
核エネルギーは将来の発電量の中で、どれほどの比率を占めるのだろうか。国際原子力機関(IAEA)によると、2017年の世界の原発の発電量は2兆5030億キロワット時で、総発電量に占める比率は10.3%だった。
先進国で原発の建設が減り、廃炉も増えるのに、IAEAの予測では、50年の原発の発電量は低成長モデルでも2兆8690億キロワット時とやや増え、東アジアなどで電力需要が伸びると想定する高成長モデルなら6兆280億キロワット時と2倍以上になる。ただ、天然ガスや再生可能エネルギーなどの伸びが上回るので、比率はそれぞれ5.6%と11.7%。全体の中での重要性は下がるか、わずかな伸びだ。
今後は地球温暖化対策の進み具合がカギとなる可能性もある。発電時に二酸化炭素(CO₂)を出さない原発が温暖化を抑制すると考える国は多いからだ。
■Q3 原発から核爆弾の材料はできるの?
日本は原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、現在、約46トンを保有する。これを理由に「日本は核武装を考えているのでは」と疑いの目を向ける人もいるという。本当に核兵器を作れるのだろうか。
日本の電力業界などは、日本が保有するプルトニウムは「原子炉級」であり、「兵器用に適さない」と主張してきた。プルトニウムの同位体(同じ元素で中性子の数が異なる)の中で、核分裂の連鎖反応を起こしやすいのがプルトニウム239。米政府などは、これが93%以上のものを「兵器級」、それほど高くないものを「原子炉級」などと分類している。
これに対し、「間違いなく作ることができる」と断言するのが、米国のNGO「憂慮する科学者同盟」上級研究員のエドウィン・ライマン。「原子炉級で核兵器を作れないと主張することは、核物質を厳重に守る理由を失いかねず、危険なウソだ」と指摘する。1997年に米エネルギー省が発表した報告書も、「原子炉級プルトニウムでも、より高度の設計技術を用いればより大きな破壊力を持つ核兵器が生産可能」と結論づけた。
IAEAもプルトニウムが原子炉級か兵器級かにかかわらず、1発の核爆弾が作れる可能性がある量を8キロとする。過去には、インドが民生用の原発技術で核兵器を開発。衝撃を受けた米政権は「核拡散につながる」として、使用済み核燃料の再処理と高速増殖炉の開発にストップをかけることになった。
米国の呼びかけで4度開かれた核セキュリティーサミットでも、各国は保有量を減らすよう求められた。米NGO「核脅威削減イニシアチブ」(NTI)は「兵器に転用できるプルトニウムや濃縮ウランを1キロ以上保有する国が、2018年には22カ国と90年代から半減した」としている。
日本にも、プルトニウムや再処理技術の保有が潜在的な核抑止力になり得るとの主張は自民党内などに根強くあり、中国や韓国はたびたび懸念を示している。元原子力委員長代理の鈴木達治郎・長崎大教授は「核兵器を作らないのは意図の問題であって、技術の問題ではない。原子炉級プルトニウムだから約46トン持っていても問題ないというのは、説得力に欠ける」と話す。