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地球環境保全に宇宙技術が役立つ時代が到来

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7月23日、公益財団法人イオン環境財団(以下、イオン環境財団)は記者会見を開催。一般財団法人リモート・センシング技術センター(以下、リモート・センシング技術センター)との連携協定締結を発表した。

1990年の設立以来、地球環境の保全に取り組み、時代とともに変化する環境課題に応じた事業を継続、実施し続けているイオン環境財団。代表的な活動は、世界各地のボランティアと一緒に実施している植樹活動で、来年で30周年になる。累計植樹本数は2019年時点で1,193万本を超えた。現在では植樹に留まらず、持続可能な森をつくることを目的とした「イオンの森づくり」にも力を入れている。

宇宙から地球を見れば、森の状態や植樹による変化が一目瞭然

そうした活動に取り組むイオン環境財団が、今回の連携協定締結に至った理由は、リモート・センシング技術を活用することで、より効率的に環境保全活動を進め、「イオンの森づくり」をさらに進化させた「持続可能な地域づくり」を目指すためだ。「リモート・センシング技術」とは、人工衛星などに搭載した観測機器を使って、離れた位置から地球表面などを観測する技術のこと。この技術を活用すれば、地球規模で森や地域の状態を調べて、植樹候補地の選定に必要な情報を得ることができるだけでなく、植樹後の森林の状態も客観的に把握することができるのだ。

植樹前の衛星観測画像=2004年2月、クアラルンプール郊外の「イオンの森」、リモート・センシング技術センター提供
植樹後の衛星観測画像=2019年3月、クアラルンプール郊外の「イオンの森」、リモート・センシング技術センター提供

また、同財団は、リモート・センシング技術が環境保全にどう生かせるのかを、地球の未来を担う子どもたちに伝える環境教育にも尽力していきたいという。

会見冒頭、イオン環境財団専務理事の林直樹氏は、「リモート・センシング技術を活用すれば何ができるのかを学生たちに知ってもらえば、環境との関わり方に対する意識の変化も生まれると思う」と期待を寄せた。

リモート・センシング技術を活かせば効率よく森づくりを進められる

一方、リモート・センシング技術センター理事長の池田要氏は、「イオン環境財団が長年にわたって植樹を中心に地球環境保全に取り組んでいることを知って、その活動に我々の技術を役立てたいと考えた」と協定締結に至った理由を説明。池田氏によると、同財団法人はこれまで、主に国内外の技術者や研究者へのリモート・センシング技術の技術転移に取り組んできた。そのため、技術の転移に終始するのではなく、実際に植樹活動などに取り組んでいるイオン環境財団とタッグを組むことには大きな意義を感じていると明かした。

イオン環境財団は、2019年から「植樹候補地の選定」「森の健康診断」の2つに取り組むことにしている。

まず、植樹候補地の選定に関しては、調査地域を「自然災害が多く発生している地域」「森林の機能が低下している地域」「地盤が経年変化している地域」の3つと定めていると報告。森の健康診断に関しては、同財団が以前に植樹をおこなった地域を中心に実施するとし、その中でも「面積が広く、調査が難しい地域」「人が入ることが困難な地域」「社会的意義が大きいと思われる地域」の診断に力を入れるという。

「宇宙から観測したデータ」「ドローンデータ」「地上計測データ」を組み合わせて最適な植樹候補地を選定

これらの調査や診断をおこなうにあたっては、「宇宙から観測したデータ」、「ドローンデータ」および「地上計測データ」などが活用される。「宇宙か観測したデータ」とは、地形情報、地盤変異情報、地図情報および気象情報などを指し、こうしたデータは、最適な植樹候補地選定のための科学的情報として役立つ。

また、「宇宙から観測したデータ」および「ドローンデータ」によってわかることとして、「植樹2、3年後からの枯死木、生育状態、樹高」なども挙げられる。これによって植樹後の森の状態を把握できるだけでなく、「地上計測」によって判明する「樹木の胸高直径」などと合わせて森林資源量を推定すれば、植樹地での炭素吸収量も算定可能。加えて、気候変動緩和策への貢献度合いまで定量評価することもできるのだ。

こうしたデータやリモート・センシング技術を活用すれば、森林減少、地球温暖化、大気汚染などのさまざまな環境問題を把握・理解することが可能となる。こうしたことを子どもたちに伝える環境教育は、各地域のイオン店舗や学校で実施する予定だ。

来る8月22日には、イオンモール幕張新都心ホビーコートにて小学5~6年生を対象に授業をおこなう。併せて、地球温暖化や熱帯雨林の減少、オゾン層の破壊、水資源の枯渇といった地球規模の環境問題への理解を深めてもらうための教材も用意するという。

地球の未来を守るためにも、わたしたち一人ひとりが地球の「今」や抱えている問題をよく理解して、環境保全のために何ができるかを考えることはとても大切なことだ。

イオン環境財団理事で元JAXA副理事長の樋口清司氏(写真下)は、「環境問題に対して宇宙技術ができることを求められている時代。技術を駆使することでどんな可能性がひらけてくるのかを多くの場で発表することで、地球環境保全に貢献していきたい」と締めくくった。

(取材・執筆:松本玲子)