村山記者が手がけたのはGLOBE5月号の特集『Re:search「エクソダス」(壁を越える移民集団)』。米国をめざす移民たちが命がけで通るパナマのジャングル地帯「ダリエン・ギャップ」、中米ホンジュラス、そしてメキシコと、移民キャラバンがたどる道程を取材した。村山記者が撮りためた映像は、テレビ朝日系「報道ステーション」で5月、2夜連続の特集として放映された。
■4年で100倍、アメリカを目指す移民はなぜパナマのジャングルを目指すのか
(リンク先記事内で、報道ステーションの特集もご覧いただけます)
イベントには、インターネットTV「AbemaTV」でAbemaNewsとGLOBEのコラボ企画に長年携わってきたテレビ朝日の矢島悠子アナウンサーも登壇。訪れた約120人を前に村山記者は、報道ステーションで使われた映像などを使いながら取材の裏側を明かした。
■「Abema×GLOBE」(AbemaTVサイト)
村山記者は、米国でトランプ大統領の政策に熱狂している人たちがいるのを見て、「なぜ今、壁なのか」と移民問題について関心を持ったきっかけを話した。移民を生む貧困や治安などの背景や、道中で遭う犯罪被害、そして中南米から米国へと続く過酷な旅路などについて取材を重ねていったという。
移民はかつては人目を忍んで移動していたが、昨年10月以降、数百~1万人規模で集まって移動する「移民キャラバン」が出てきたという。村山記者は「ここまで大きくなれば身を守れる。地元の自治体もむげにできず、食事や寝る場所も用意したところもあった。小さな魚が集まって大きな魚のふりをする、絵本の『スイミー』と同じことが移民キャラバンで起きていた」と話した。
取材の途中では、危険な地域を通り抜けることも少なくなかったという。コロンビアとパナマ国境地帯のジャングルが広がる「ダリエンギャップ」では、陸路がないため、移民と共にボートにのってダリエン湾を渡り、その後は馬に乗ってジャングルを抜けたことも紹介。取材を終えて米国のロサンゼルス行きの飛行機に乗った時には「これで脱出できた」とほっとしたという。その一方で、「キャラバンはこの後も何千キロも進み、米国をめざし砂漠や川を越えていく。自分は日本のパスポートを持っているだけで問題なく行けてしまう。なんだか不条理に感じた」と胸の内を明かした。
村山記者は最後に、「道中では、子どもも含めて命を落としてしまう人もいる。そこへの対策はもちろん必要だけど、その一方で本当は移民になりたくないという人も多い。移民の母国に貧困や治安の問題があるのなら、開発協力など日本にいる私たちにでも支援できることはある。日本は当事国ではないからこそ、国際的な音頭を取って、こうした人道危機に対して手を打つべきではないのか」と話した。
矢島さんは、「移民問題は本当に切実で、そういった現状が村山記者の取材でよくわかった」と話した。
参加者からは「危険なところに取材に行く時はどういうところに気をつけるのか」「インターネットを活用することで移民の流れは変わるのか」など、多くの質問が寄せられ、村山記者が自身の経験をもとに話した。左手にビデオカメラ、右手にスチルカメラを持ってインタビューすることもある、と実際に機材を持ちながら話すと、会場からは驚きの声が漏れた。
難民・移民問題に関心があって参加したという会社員の男性(47)は「日本の報道ではなかなか知ることのできない地域の現状を知れて良かった」と話した。また、都内に住むパートの女性は「ダリエン湾を渡るボートの映像は衝撃的だった。道中で亡くなったり、犯罪などの被害に遭ったりする移民も多いことに驚いた」と話した。