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軍事的説明を果たさない日本政府を危惧する

ミリタリーリポート@アメリカ
中距離多目的誘導弾車両(写真=米国防総省)

民意無視する日本政府を危惧する声

県民投票と補選の結果を受け、普天間移設問題に関心のある米軍関係者などからは、深刻な危惧の声が漏れ聞こえてくる。それらは「辺野古新基地が一刻も早く誕生しないと困る」とか「日本政府はいつまで反対派を排除できないのか」といった危惧ではない。そうではなく、「日本政府は沖縄の反対の民意に少しもたじろがずに辺野古沖の埋め立てを進めるが、アメリカ軍が何が何でも辺野古沖に滑走路を造り出すようアメリカ政府をけしかけて、日本政府に圧力をかけさせていると勘違いされては困る」といった危惧なのである。

こうした声が米軍関係者から湧き上がるのは当然だ。なぜなら、辺野古に新基地が完成した場合、使用するのはアメリカ海兵隊であり、アメリカ政府でも日本政府でもないからだ。再び反対運動の真っただ中に身を置くのは海兵隊員たちなのだ。

もちろん、沖縄の海兵隊基地をめぐる議論が日米両政府間の政治問題と化している以上、米軍関係者が公然と沖縄の海兵隊について意見を表明することはできない。とはいえ、昨年10月の本コラムで連載したように、米軍関係者や軍事専門家の間でも、沖縄に海兵隊が本拠地を構えることの軍事的価値について賛否両論がある。そして沖縄に米海兵隊が駐留し続けることに軍事的観点から真剣な議論が交わされていることは事実である。

軍事的説明を避ける日本政府

ところが、日本政府は単に「沖縄の米海兵隊は日本防衛にとって抑止力となっている」「米海兵隊の抑止力を維持するために辺野古移転は必要だ」とするのみで、相変わらず「辺野古への移転こそが唯一の解決策」として、辺野古新基地や米海兵隊が沖縄に駐留することの軍事的価値を説明しようとはしない。

このように、日本の国防や日米軍事同盟に関わる沖縄の海兵隊基地問題についても、軍事的な議論を避けようとする日本政府の姿勢に、米軍関係者らが強い不審感を抱き始めているため、上記のような危惧の念が漏れ聞こえてくるのである。

さらに日本政府が日本国民、とりわけ当事者者である沖縄の人びとに的確な軍事的説明をしないのは、南西諸島への設置が始まった自衛隊新施設についても同じだ。このため、現在の日本政府も昭和初期の日本政府と同様に、軍事問題について強力な隠蔽・歪曲体質があるのではないかという不信感すら生じている。このような体質の政府との軍事同盟は危険であることは言うまでもないからだ。

宮古島での説明不足

12式地対艦誘導弾発射装置(写真=陸上自衛隊)

南西諸島への自衛隊新施設の設置とは、宮古島(沖縄県)と奄美大島(鹿児島県)、石垣島(沖縄県)に設置が進められている陸上自衛隊の新駐屯地のことだ。これら三つの島それぞれに、陸上自衛隊のミサイル部隊と警備部隊が配備されることになり、すでに今年3月下旬から宮古島と奄美大島で、一部の配備が始まった。

その直後に、警備部隊の配備が始まった宮古島の新駐屯地内の「保管庫」に、中距離多目的ミサイルや迫撃砲弾が運び込まれ、実は「弾薬庫」だったことが明らかになった。そのため、一部の周辺住民や新部隊とりわけミサイル部隊配備に反対する人びとが怒っていると聞く。

警備部隊が中距離多目的ミサイルシステムを装備したり、各種弾薬類を駐屯地内の「保管庫」に収納したりするといった軍事機密には当たらない基本的な事項を、政府防衛当局が周辺住民や島民に説明していないのならば、隠蔽したと非難されてもやむを得ないだろう。 

分散配置されないと無意味なミサイルシステム

こうした防衛省の姿勢から判断すると、南西諸島に配備が進められる陸上自衛隊ミサイル部隊に関する軍事的説明が今後、島民たちになされるとは考え難い。実際にミサイル部隊が奄美大島、宮古島、石垣島に配備されて実戦配備が始まった際には、「何も知らされていなかった」との声が島民から出るのではないかと危惧せざるを得ない。

というのも、陸上自衛隊ミサイル部隊が装備する地対艦ミサイルシステムと地対空ミサイルシステムは、「ミサイル基地」のような一定の地点に設置され、迫り来る侵攻軍艦艇や航空機を迎え撃つのではないからだ。そうした用い方をすれば、南西諸島に侵攻を企てる敵は、侵攻部隊を接近させる以前に、「ミサイル基地」に多数の弾道ミサイルや長距離巡航ミサイルを撃ち込んできて、破壊されることが必至だからである。

それを避けるため、地対艦ミサイルシステムや地対空ミサイルシステムは構成要素の全てがトレーラーやトラックに積載され、地上を自由に動き回り、敵から簡単に発見されないように身を隠すことができるようになっている。したがって、それぞれの島内の広範囲な場所に分散して配置され、適宜移動を繰り返すのである。そうしなければ張り子の虎となってしまう。

日本政府国防当局は、このような軍事的説明を南西諸島の人びとにしたうえで、新駐屯地の設置を進めているのだろうか。でなければ、再び新たな「基地問題」が生じ、南西諸島防衛のために極めて有効な地対艦ミサイルと地対空ミサイルによる「ミサイルバリアー戦略」が、危殆(きたい)に瀕することになりかねないのである。