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ロボットで解明する脳の働き 科学コミュニケーターが動画で見せます

美ら島の国境なき科学者たち
筆者のスコッティが制作したビデオの一つ、「OISTer Pearls」シリーズ。現在も撮影を続けており、シリーズは今後も充実していく予定。

百聞は一見に如かず。皆さんも、言葉を尽くして説明するよりもビジュアルで説明した方がよく通じた、という経験があるのではないでしょうか。動画制作を仕事にしている私にとっても、このことわざに強く同意します。と言うのも、わずか1秒間の動画には平均30枚もの写真の情報量が盛り込まれているからです。

広報の目的は、できるだけ多くの人に伝えたい情報を届けること。あなたがまさに今、この朝日新聞GLOBE+のコラムを読んでいる間、世の中の人はテレビやTwitter、掲示板、あるいはウェブサイトなどの他のツールでニュースに触れているのではないでしょうか。そうした中、特に最近の傾向として顕著なのが、動画の活用です。

私が動画制作において最も重視している原則は、「語らない。ただ見せる」ということです。ですから実際に撮影を始める前に、何を見せられるのかを自分自身に何度も問います。心に残るような強烈なビジュアルがあれば、撮影のテーマにはもってこいです。ですから、OISTの研究グループのひとつが、新しくロボットを製作しようとしていると耳にしたとき、「それだ!」と思いました。

OISTの谷淳教授は、人間の脳がどのように学習して身体に適応させ、行動に移すのか、という問題を、ロボットで模倣することを通じて研究しています。人間の脳を模倣した神経回路をプログラミングしたロボットに外界と対話、すなわち周りの物に触れて、そこから何らかの反応や結果を得させます。ロボットは、まるで人間の子どもが学ぶように、物を拾って、それをどうやって正しくつかむかを学んでいきます。

撮影当日組み立てられたロボットは、箱型の頭にカメラが搭載され「視覚」を備えており、ボディは人型で腕と手があり、物に触れ、物質の重みや抵抗を測ることで「触覚」を持つ、めずらしいタイプのものです。

谷教授は、周囲からの反応を得ることができるこのようなロボットを使用することによって、人間にみられる特定の条件を再現することができると信じています。脳が想定していることと、体が物理的な相互作用を通して経験することの違いは、意識の根本にある可能性があります。

ちょっと想像してみてください。コーヒーの入ったマグカップを、熱そうだ、と思って手に取ったとします。でも、それが予想と違って冷たかったら、あなたはそのマグカップのことだけでなく、自分自身がなにかを期待していたんだという事実にも気付くはずです。このような時に、ロボットだったらどのように反応するのかを人間の目とコンピュータープログラムの両方で観察することによって、人間がどのように学び、身体や動きを適合させるかを知ることができるのです。極めて興味深いと思いませんか!

撮影では、ロボットのパーツがOIST搬入口に到着し、それを組み立ててテストするまでを追いかけました。結果として、ロボットが持つ物語を動画の中に組み立てることができ、ロボットの機能の裏にある原理までも説明することができたのではないかと思っています。

谷教授は完成した動画を見て、「何年もかけて行ってきた研究が、たった1分のビデオクリップに凝縮されている。しかも、なにひとつ大切な情報を失わずに」と、作り手にとってはこれ以上ない感想を漏らしてくれました。

これがそのビデオです。「百聞は一見に如かず」。まずはご覧ください。

今、目の前で行われている研究現場に光をあてるのも大切ですが、私がもう一つ伝えたいのが、科学は人間によって行われているということ(たとえロボットを使っている場合でも)です。そこで、ひとりの科学者の個性と、その人の研究に焦点を当てるミニ動画 “ OISTer Pearls”シリーズを作り始めました。(OISTと真珠を作るpearl oysterをかけています。念のため。)

シリーズはまだ始めたばかりですが、以下からご覧ください。(日本語版がありませんが、もし皆さんからたくさんのご希望をいただければ、日本語字幕版も制作したいと思います!)

OISTer Pearls 1 : ヴラディミル・ディネッツ 動物学者

OISTer Pearls 2 : アニャ・ダニ 芸術修復保存

科学コミュニケーターとして、谷教授や、ビデオで取り上げた二人のような研究者と会って、撮影を通じて彼らのストーリーを伝えることができるのは、すごく恵まれたことだと思っています。まだOISTに来たばかりですが、ベテランのスタッフよりもOISTのことを幅広く知る機会があるといえるかもしれません。ある日は実験に打ち込む化学者、そして次の日は量子物理学者といった感じで様々な分野の研究者と話をし、撮影をします。動画を作ることで、世界中の人々に研究の舞台裏へのドアを開き、みんなに、科学そのものについて、そして、そこで働くのがどんな人々なのかを見てもらうのです。ワクワクする仕事です。

実験を行っている科学者を撮影する筆者のスコッティ。第一線で活躍する様々な分野の科学者と触れ合え、話を聞けるのがOISTでの科学ビデオコミュニケーターとしての醍醐味。

(アンドリュー・スコット(通称:スコッティ) OISTメディアセクション)