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「すべての子どもに教育を」 日本式で教育改善に取り組む学園の挑戦

PR by 三菱商事 公開日:

 教育と貧困は切っても切れない関係にある。教育を受けられなかった人の多くは貧困から抜け出せず、また次の世代も教育を受けられない「負のサイクル」に陥るからだ。そうした状況から抜け出そうとしているのが、近年、年8%近い経済成長を続け、「アフリカの奇跡」と称されるルワンダだ。

 1990年代に民族紛争による内戦を経験したが、戦後、「無知が内戦を引き起こした」という反省から、知識基盤経済を目標に掲げた。「Leapfrog」とも呼ばれる急速な発展は、内戦中に国外に逃れていた人々が海外の技術や資本を持ち込んだ影響も大きいが、この発展をさらに加速させようと国を挙げて取り組んでいる。「人への投資が国を発展に導く要である」というカガメ大統領の方針の下、7~15歳の子どもの基礎教育を順次、無償化。これにより就学率は大幅に改善された。一方、教員の不足や高い中退・留年率など課題も残っている。

 ルワンダの教育環境を良くしようと活動を続けてきたのが、福島市のNPO法人「ルワンダの教育を考える会」。ルワンダの首都キガリで幼稚園児と小学生約270人が通うウムチョムイーザ学園を支援している。

ウムチョムイーザ学園での授業風景

 2001年に日本からの寄付金をもとに設立されたウムチョムイーザ学園は、民族や政治思想を超えて子どもたちに学ぶ機会を提供するという理念を掲げ、孤児や学費の払えない家の子どもにも門戸を開いてきた。同会の理事長を務める永遠瑠(とわり)・マリールイズさんはこう語る。

 「内戦前のルワンダは義務教育の仕組みが整備されておらず、お金がある家の子どもしか学校にいけませんでした。悲劇を繰り返さないよう、自ら考える力を養うことが重要と考えています。誰でも平等に教育が受けられる環境をつくっていきたいです」

 マリールイズさんは、かつて福島県の海外技術研修生として来日したことなどが縁となり、内戦のさなかの1994年に家族で来日。日本で子育てを経験し、その中で気づいた良い部分を学園に取り入れてきた。年に一度の健康診断や昼の給食、多くの本を備えた図書室などだ。

 「学園を設立したばかりのころ、生徒たちは家に帰ってお昼を食べていましたが、中には家が貧しくて食べられず、泣きながら学校に戻ってきた子どももいた。こんな状態では満足に勉強ができないと思い、給食を始めました。娘が通った日本の学校には給食があって、とても安心したことが原点になっています」

 また、近年は問題解決のための思考力を鍛える算数を重視し、教師の指導レベル向上のため、国際協力機構(JICA)と協力して周辺の小学校の教師たちを日本での研修に招いている。授業を見学し、教え方について意見を出し合う日本の「研究授業」を帰国後、現地でも実施することで、教師たちもお互いに助け合って改善点を探すようになってきたという。

算数教育の研修で来日したルワンダの教師たちが小学校で授業を見学した

 学校行事でも、新たな試みを行っている。昨年は初めて、日本式の運動会を開催。リレーや借り物競走を行った。

 「運動会を通して、子どもはチームで一つのことを成し遂げることを学べますし、子どもたちを応援することで、地域の親の絆も深まる。基礎教育はすべての土台。子どもたちを心身ともに健康に育て、コミュニティーの力を強化する役割を担っています」

学園で行われた日本式の運動会で旗を振って応援する生徒たち

 学園設立からもうすぐ20年。マリールイズさんは子どもたちの変化を実感しているという。

 「20年前、子どもたちに将来の夢を尋ねたら、『大きくなるまで生きているかわからない』と言われ、ショックを受けました。今の子どもたちは生き生きしている。学校に通うことで自分に自信を持てていると感じます」

 近年、ルワンダは国を挙げてICT(Information and Communications Technology )産業を振興し、経済は急成長を遂げつつある。教育を重視する政府の政策により基礎教育も普及してきたが、まだ道半ばだとマリールイズさんは言う。制度は整備されても貧しさのため、学校に通えない子どもたちがまだ数多く残されているのだ。

基礎教育の大切さを語る永遠瑠(とわり)・マリールイズさん

 「ルワンダの教育を考える会」は昨年から、貧困に苦しむ人々が多く住むルワンダ北部のミヨベ地区の食糧支援にも取り組み始めた。地域に義務教育を普及させようとしている行政と協力し、幼児教育施設に通う46歳の子どもや、周辺の03歳児たちを対象に、朝はおかゆ、昼には給食を提供。保護者たちには貧困から抜け出すためにも教育が必要であることを伝え、子どもたちを学校に通わせるためのアドバイスを送っている。

 「ルワンダには『お腹をすかせた子どもは耳を持たない』という言葉があります。食事も満足にできないような状態では学校には通えないし、勉強も身につかない。まずは、日々の暮らしの心配を取り除き、子どもが学校に通える環境を整えてあげることも大切です。こうした啓発活動を続けながら、『すべての子どもが教育を受けられる』日の実現を目指して活動を続けていきたいですし、ルワンダが教育の力で豊かになることで、アフリカの周りの国々にも基礎教育の大切さを発信していきたいです」

 教育の力で社会が発展を遂げる成功例ができてくれば、すべての子どもたちが教育を受けられる社会の実現に向けた原動力になっていくだろう。

提供:三菱商事