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信頼で世界をつなぐJICA 日本らしい開発協力をこれからも

World Now 更新日: 公開日:

母子手帳から地下鉄まで 幅広い事業でSDGsに貢献

日本発祥の母子手帳がいま、パレスチナやアフガニスタンなどを含む29の国・地域でJICAの支援により活用されているのをご存じでしょうか。年間1,000万冊にも上る母子手帳の普及は、妊産婦への適切な情報提供だけでなく、医療従事者の育成にもつながり、開発途上国の母子保健の向上に多大な貢献をしています。

また、インドの首都デリーの地下鉄は、日本の協力で東京の営業路線距離と同規模の巨大なネットワークに整備され、市民の足として定着しました。交通渋滞緩和、大気汚染抑制、女性専用車両導入による女性の社会進出の側面支援など、様々な効果をもたらしています。

さらに、エジプトの公立校では、近年、学ぶ意欲や公平性・協調性の醸成に資する「日本式教育」が評価され、児童自らが掃除を行う、日直を担当する、といった特別活動が導入されています。

これらはほんの一例ですが、私たち国際協力機構(JICA)は、日本の政府開発援助(ODA)の実施を担う機関として、保健、教育、環境、インフラ整備に至るまで、開発途上国の様々な課題解決を支援しています。我々の活動領域は、SDGsの17の目標・ターゲットのほとんどをカバーしています。JICAが実現を目指す「人間の安全保障」「質の高い成長」は、SDGsが目指すものと一致しており、それらの達成に向けたJICAの取り組みは、SDGs達成を加速・推進させるものといえるでしょう。

安全な水が確保できず、手洗いの習慣が浸透していない東アフリカ・ウガンダ。衛生製品メーカーのサラヤ株式会社は、2011年からJICAと連携し、アルコール手指消毒剤の医療機関への普及活動に着手。衛生向上のほか、消毒剤の現地生産を通して雇用機会創出にも貢献している  ©SARAYA/taketani

「日本らしさ」を生かして パートナーとともに

17年7月、JICAは「信頼で世界をつなぐ」という新ビジョンを掲げました。“信頼”とは、16年以降ほころび始めた国際協調体制を維持していくうえで重要な概念であり、同時に、日本の伝統的な援助哲学の根幹をなすものでもあります。

JICAは、途上国の人々にとり真に必要な支援を、相手国の目線で共に考えることから始めます。一見、非効率なやり方と思われるかもしれませんが、現地の人々がオーナーシップを発揮し自国の開発に取り組むことが、結果として持続的かつ大きなインパクトをもたらすことを長年の経験から熟知しているのです。

JICAは、SDGsの達成に向けて、民間企業や大学、地方自治体、NGO等とのパートナーシップの強化にも注力しています。また、日本初のソーシャルボンド(社会的課題の解決を目的とした事業を資金使途とする債券)を発行し、民間投資家の資金をSDGs達成に向けて動員しています。国内各地でのセミナー・イベントや開発教育支援を通じて、SDGsへの理解促進にも取り組んでいます。 

今後もJICAは、豊富なノウハウやネットワーク、そして多様な援助手法を最大限に生かし、SDGs達成に貢献し続けたい、と考えています。




北岡伸一 SHINICHI KITAOKA
1948年生まれ、東京大学法学部卒。同大学院法学政治学研究科博士課程修了(法学博士)。立教大学法学部教授、東京大学法学部教授、特命全権大使(日本政府国連代表部次席代表)、政策研究大学院大学教授、東京大学名誉教授、国際大学学長等を歴任。15年10月から現職。



本記事は朝日新聞社が各界のリーダーたちの意見、自治体や企業がゴールに向けて取り組んでいること、若い人のチャレンジなど2018年の動きをまとめた冊子「SDGsACTION!2」からの転載です。「SDGsACTION!2」はPDFファイルでご覧いただけます。
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