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台湾の「週休2日制」 なぜ誰も喜ばなかったのか

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「台湾の原宿」と呼ばれる、台北市の西門地区=大室一也撮影
「台湾の原宿」と呼ばれる、台北市の西門地区=大室一也撮影

■民進党がぶち上げた「休める権利」

そこで2016年に政権を奪った民進党は「しっかり休める権利」をかかげて2年前に労働基準法を改正し「一例一休」と呼ばれる新制度をぶち上げた。法改正で週1日の法定休日(例假)とは別に、法定休息日を新設。「完全週休2日制」に踏み切った。台北で、日本の労働省にあたる労働部を訪ねると、担当副司長の黄維琛(50)は「日本や欧州でも法律上は週休1日。2日を盛り込んだのは世界的にもまれ」と胸を張った。休息日に出勤を頼めば、雇用主が支払う手当は平日の2倍以上。残業も厳しく制限した。

だが、ふたを開けてみれば、雇用する側と労働者側の双方から不満が噴出。特にスーパーやコンビニ、バス会社などのサービス業は、休日営業すると人件費がかさみ、シフトの人繰りも難しくなった。

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一例一休ではサービス業が影響を受けた=台北市、大室一也撮影

日本のパン屋「ANTIQUE」のフランチャイズ店を台北市で運営する仁美国際CEOの浜島貴仁(49)は、一例一休が始まったあと、ほかの理由もあったが、「職人の管理で、休日出勤、その他の残業代の高騰につながった」と話す。台湾最大級の求人・求職サイト「1111人力銀行」の調査(昨年9月発表)によると、影響を受けた企業の人件費の平均増加率は5%だった。

コスト増のつけは、値上げや営業時間の短縮に回さざるを得ない。大手スーパーの関係者は「手当を支払わなければならないし、営業時間短縮も考えている」と打ち明ける。働く側も「残業が減り、手取りが減った」と批判。バス運転手らの労働組合理事の張家銘(42)は「求人に人が集まらなくなった」とこぼす。

■「不便さ」への抵抗感

「不便さ」への抵抗感も大きかった。会社員の女性(45)は、立ち寄り先のハンバーガー店やスーパーで「営業時間が短くなったのに驚いた」。結局、政権は導入から1年あまりで法を再改正。総統の蔡英文が陳謝する事態に。今年3月から最長連続12日間勤務も可能になり、残業時間は労使の合意などで柔軟に運用できるようになった。

それでも、週休2日を導入する企業はこの1年で1割ほど増えたという。制度は広がっていくのか。それとも骨抜きになるのか。台湾大学国家発展研究所副教授の辛炳隆(57)は「導入する企業が増えれば、ほかの企業も後を追わざるを得なくなる。そうやって、いずれは成り立っていくのではないか」と楽観的だ。一方、労働法に詳しい大阪音楽大学非常勤講師の廖修雅(41)は「週休2日の影響で倒産した中小企業もある。これではもたない。適用を除外される業種が出てくるのではないか」と見ている。

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台湾大学国家発展研究所の辛炳隆副教授=台北市、大室一也撮影