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しぼんだ「創造的復興」進めるヒントは 「食べる通信」に学ぶ

World Now
山形県高畠町の有機農家、星寛治(左)から体験を聞く「東北食べる通信」の高橋博之=2016年7月16日、渡辺洋介撮影
山形県高畠町の有機農家、星寛治(左)から体験を聞く「東北食べる通信」の高橋博之=2016年7月16日、渡辺洋介撮影

東日本大震災の後、政府は「創造的復興」という理念を掲げた。人口減少や高齢化、産業の衰退といった日本各地が抱える課題の先進地として、被災地を位置づけた。再生に向けて掲げられた理念は「単なる災害復旧にとどまらない日本の再生」「21世紀半ばにおける日本のあるべき姿」。人口減少局面に入った日本の再生という理念に、私自身も期待をふくらませたひとりだ。

被災地に駐在して2年あまり。その機運は急速にしぼみ、被災地は課題の先進地ではあっても、課題解決の先進地にはなりきれていない。人口減少に歯止めがかからず、高齢化は進み、産業の基盤である漁業も農業も衰退の一途をたどる。日本の高度経済成長を支えたハード偏重のこれまでの発展の手法が通用しなくなっていることを示しているように感じる。

こうした現状に風穴をあけようと挑戦し続けてきたのが「食べる通信」だった。高橋博之が立てた「消費者と生産者の分断を乗り越える」という旗のもとに、共感する人々が集まった。やがて都市と地方の格差拡大といった、同じ課題を抱える日本や東アジアに広がった。被災地で生まれ、世界展開までしたソーシャルビジネスの数少ない先行事例のひとつだと言える。

高橋の訴えの根源には、成長や拡大を最優先する大量消費社会で行き詰まる日本のあり方への問いかけがある。震災が起きたとき、「このままでいいのか」と多くの人が一度立ち止まり、経済効率だけではない別の生き方や社会のあり方を模索する動きが一時的にでも広がった。だが、目標と現実のあまりにも大きなギャップからあきらめが広がり、うそのようにその機運はしぼんでいるように感じる。

高橋は、都市の人々とその波に乗りきれずに疲弊する地方との間に、両者が混じり合った豊かな関係性という「もうひとつの選択肢」を提示し続けてきた。UターンやIターンによる「定住人口」でも、観光による「交流人口」でもない。都市に住みながら地方の特定の地域に深くかかわる「関係人口」という言葉で高橋はそれを表現した。関係人口創出は人口減少下の日本を活性化する地方創生策として、国が補助金を出して後押しするまでになった。そして、食べる通信も日本各地のみならず、日本と同じような地域間格差を抱える台湾にも飛び出した。

震災から7年半。高橋の言葉は、値段や価格といった基準だけで価値を測ることに慣れきってしまった私に、市場経済の副作用を抑えながら、お金だけでは測れない価値を共有する調和型の社会の可能性を教えてくれた。地球規模で持続可能な社会の実現を目指そうと国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」の理念とも重なる。

世界が今後直面する課題の先進地となった東北の被災地から生まれた胎動は、まだ小さな芽に過ぎない。だが、持続可能な社会を生み出す変革の芽とも言える。創造的復興が目指した日本の姿を生み出す手がかりとして、食べる通信から学ぶべきことは多い。