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体は勝手に動いていた

世界報道写真展から――その瞬間、私は
photo:David Becker/Getty Images
photo:David Becker/Getty Images

人々は走りながら悲鳴を上げていた。地面に倒れている人がいる。寝たふりをしているのか?
その人の上をよじ登り走る人もいる。暗かったが、目に入るものに、とにかくシャッターを押した。
テントに戻り、画像をパソコンに取り込み、拡大して見た。倒れた女性の足から流れているのは、血だ。何だこれは。その時初めて、事の重大さを知った。これは事件で、人々は、死に至っていると。
1組の男女が写っていた。倒れた女性をかばうように覆いかぶさる男性。その後、走り去ったことから無事だということしか分かっていなかったが、後日、身元が判明した。2人はそこに居合わせた見知らぬ人同士で、男性は陸軍兵士だった。
車いすの高齢者が逃げるのを手伝う若い女性やけが人に救急医療を施す人たち……。耳にした音が銃声だと分かってからも、会場を深夜まで走り回ったベッカーの元には、無数の写真が残された。「怖くなかった?」と問うと、こんな答えが返ってきた。「体は勝手に動いていたんだ。写真を撮ることは、そこにいる自分にしかできないことなんだから」

■米国の銃乱射事件

2017年10月にラスベガスで起きたこの事件で犯人は、約400メートル離れたホテルの32階の部屋から、野外コンサート会場に向けて改造した半自動小銃で弾丸の雨を降らせていた。58人が死亡、約500人がけがをするという米国史上最悪の銃乱射事件に。翌月にはテキサス州の教会で男が銃を乱射して26人が亡くなり、今年5月にも高校生による犯行で犠牲者が10人に上った。
全土で、銃規制を求めるデモが行われた。だが、トランプ大統領が打ち出した再発防止策は「教職員が銃の使用に習熟することを求める」「退役軍人や退職警官を教師に採用する」といった「銃でしか銃を制御できない」という考えを裏付けるものだった。

世界報道写真展2018(世界報道写真財団、朝日新聞社主催)

大阪のハービスHALLで8月7日~16日、受賞作を紹介する写真展を開きます。