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「難民の3割は就学年齢」 シリア・アレッポ大学准教授 アフマド・マンスール

World Now 更新日: 公開日:
トルコ南東部の仮設学校で学ぶシリア難民の児童=ユニセフ・トルコ事務所

中東のシリアなどから欧州に押し寄せる難民問題についてのシンポジウムが3月下旬、東京都内で開かれた。アレッポ国立大学学術交流日本センター副所長で同大准教授のアフマド・マンスールさん(51)が、物価高などに苦しむ現地シリアの様子を報告した。

マンスールさんは、慶応大学総合政策学部との協定で昨年4月に来日し、現在は訪問講師としてアラビア語を教えている。

マンスールさんは、政府軍、反政府軍、クルド人、「イスラム国」(IS)が入り交じる現在のシリア情勢を、「ほとんど毎日、勢力地図を書き換えなくてはならない状況だ」と評する。国内の移動も難しくなり、「首都ダマスカスから北部のアレッポまでは高速バスで約4時間だったが、内戦が始まってからは10時間以上かかる」と言う。

内戦が始まったきっかけの一つが、シリア南部ダラアで起きた、14歳の少年に対する拷問事件だったといわれている。「若者たちは革命を起こそうとしたわけでない。今までと違う生活がしたくて、平和的なデモをしただけだった」と振り返る。「アサド大統領も、各県の代表を大統領公邸に呼ぶなどして、解決を模索した。でも、国民が自由になってしまうと、権力を失う人たちがいる。そういう勢力がデモに発砲する。一方、若者はデモを守るために武器を持つ。そして、少しずつ戦いが始まってしまった」と憤る。

現在、アレッポ市の約4割が政府軍の支配下におかれているという。だが、食料などの日用品の価格が高騰し、物価は数年前に比べて9倍に上昇。政府は治安維持で精いっぱいで、医療や日常生活の支援はNGOやNPOが行っている状況だという。「大学教員の私の月給は、5年前に約1000米ドルだったが今は100米ドル。かなり生活も難しくなっている。私を含め、ほとんどの人が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の支援を受けている」と話す。

アレッポには、周辺自治体から逃げてきた国内避難民も多く、アレッポ国立大学の学生寮には約6万人が暮らしているという。「誤射の迫撃弾が飛んできたこともあるが、講義は通常通りしている。日本ではセンター試験にあたるテストも行われている」と言う。ただ、治安悪化を懸念した親が子どもを大学に行かせないため、大学の出席率が約4割にとどまっているほか、教員も近隣のトルコに避難するなどして、3~4割減るといった弊害も出ているという。

マンスールさんは「難民や国内避難民の30%ぐらいは5~17歳の就学年齢だ」として、国内外で避難した若者の教育の重要性を強調する。欧米では、シリア人の若者向けの奨学金が充実しているといい、「シリアの若者は世界中に避難し、絶望しながらも、一生懸命チャンスを探している。日本も彼らの夢と希望のために何ができるのか、協力をお願いしたい」と訴えた。

※同シンポジウムは、参加者の発言を引用する際には、役職や名前を伏せるという条件の下で開催されましたが、朝日新聞グローブは、発言者と主催者に実名で報道する許可を直接得ています。