水産物が枯渇しないように、資源管理に気を配ろうという「サスティナビリティ(持続可能性)」。多くの消費者に重要性を知ってもらおうとモントレー湾水族館が進める「シーフード・ウォッチ」など、米国で取り組みは広がりつつある。
水族館でシーフード・ウォッチの広報マネジャーを務めるライアン・ビゲロー(36)によると、水族館が乱獲への警鐘を開館目的に掲げたこともあり、水産資源が減っていることをいかにして来館者に知ってもらうかと考えたなかで、色分けによる水産物の分類方式にたどりついたという。
だが、こうもいう。「魚食文化が広がっている日本では、いくら科学的な根拠があるとはいっても、シーフード・ウォッチのようなやり方で水産物を分類するのはそぐわないのかもしれない。その国の文化を否定するような動きは取りにくいのも事実だ」
だから今の段階では、まずは水族館の来館者にシーフード・ウォッチの仕組みを説明し、水族館のホームページでシーフード・ウォッチの説明を載せて、消費者の興味や関心を呼び起こすことに力を入れているという。
副館長のマーガレット・スプリングは「水産物の資源管理について現在、太平洋で最も枯渇を懸念するのがクロマグロだ。米国だけが管理の重要性を声高に主張しても始まらない。今後のクロマグロ漁をどうしたらよいのか、日本とともに他国をリードして、考えていかないといけない」と訴える。
水族館があるモントレー市内には、シーフード・ウォッチの取り組みに賛同するパートナーレストランも多い。そのひとつで、海辺に建つレストラン「オールド・フィッシャーマンズ・グロット」を営むクリス・シェーク(58)は「サスティナブルな食材を求める客がやはり多い」と明かす。「赤分類の魚を取り扱わないことで、集客が下がったり、メニューが限定されたりするリスクを恐れたが、肝心の漁業が立ちゆかなくなったら困る。お客さんにも喜んでもらっているし、シーフード・ウォッチに基づく店舗運営にしたことで、有益だったと受け止めている」と話す。食材に関する説明を客から求められても困らないように、スタッフ全員が定期的に水族館でレクチャーを受けているという。
3月に東海岸のボストンで開かれた水産業界の展示会「シーフード・エキスポ・ノースアメリカ」でも、水産物の持続可能性は重要だと訴える声が参加者から上がった。
テキサス州で水産物の持続可能性に関する調査会社の最高執行責任者を務めるディック・ジョーンズ(47)は「米国では、乱獲の歴史から学んだことが大きい。でも、消費者はまだまだ持続可能性の重要性をきちんと理解しているとは言えない。それだけに、ビジネスチャンスも十分あると考えている」と話す。日本の現状については「生活圏が海と近く、魚食文化が進む日本は、水産物の持続可能性が特に重要だ。利害関係者が顔をそろえて話し合い、よい方策が見いだせるように努力してほしい」と話す。
(岩堀滋)
(文中敬称略)
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