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さながらファッションショーのテニス4大大会 いまの流行色は……

Insight 世界のスポーツ
淡い蛍光色のショートパンツが鮮やかなオレンジを引き立てる大坂なおみのコーディネート Photo: AP

今年1月の全豪オープンで、男子シングルスの優勝杯に口づけするロジャー・フェデラー(スイス)。その白いシャツに、ひときわ映えるラインが入っていた。明るいピンク。以前なら、男子が着こなすとは思われなかった色だ。

派手な色を着こなす選手は多かったが、鮮やかなパステルグリーンで身を包んだスタン・バブリンカ(スイス)の姿は、最高気温が40度を超える真夏の南半球で、いっそう目を引いた。製造元のヨネックスの藤井英樹ウェア開発第二課長は「この色はウチが提案し、スタンが気に入ったものの一つ。彼は4大大会ごとのイメージを持っていて、違う色のウェアを着ている」。

パステルグリーンのシャツを着るスタン・バブリンカ(スイス) Photo: AP

今、テニスウェアの流行色は「斬新さ」だ。ピンク、オレンジ、イエローと、蛍光マーカーの見本市のよう。その大本の発想は、経済の停滞やテロの脅威といった「閉塞感」を、打破したいという思い、だという。そうして採り入れられた色が、トレンドとして広まった。

ウェアの形状もゆったり型から、フィット感が主流に。顕著なのが、男子だ。細く見せ、肉体美も強調する「細マッチョ」効果を狙う。とはいえ、これは「テニスの高速化」の副産物。今や第1サーブの平均速度が200キロを超す選手は多い。速い打球に対応するため、動きやすさ優先のデザインになるのは当然で、一般向けの製品にも波及する。ヨネックスは、細身タイプの男性用テニスシャツを改良。10年前と比べ、胸囲が4センチ、丈が3センチ短くなったという。

販売戦略でしのぎを削るメーカーにとっては、4大大会は最高のアピールの場だ。今年の全豪オープンは、大会14日間に約70万人の入場者を集め、テレビ観戦は世界で約9億世帯。この市場を掘り起こそうと、ここ数年、これまでテニスと縁が薄かったメーカーも参入する。ファストファッションの代表格であるユニクロが錦織圭にウェアを提供したり、ランニングシューズが主力のニューバランスも力を入れ始めた。

販路を広げる哲学は、各社さまざま。アシックスは今年1月、元世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)とシューズ契約を結び、世界を驚かせた。同社の笠松宏樹プロセスオペレーションチームマネジャーは「誰でも知っている選手で、テニス以外のシューズへの宣伝効果も大きい」。

同様に、ナイキは10年間で1億3千万ドル(約140億円)でフェデラーと、アンダーアーマーはアンディ・マリー(英国)と4年間で約2500万ドル(約27億円)で契約を結んだ。このように、超大物によるイメージづくりを狙う手法がある一方、アディダスは、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)や大坂なおみら若手を中心に起用した。開催時期や都市で特色が違う4大大会で、アディダスは今季、1年を通して、選手の「旅物語」を表現するという。4大大会初戦の真夏の全豪では、契約選手のウェアを、薄い黄や青、浜辺をイメージした白色でコーディネートした。

5月の全仏が終われば、4大大会は、白色しか身につけられない伝統のウィンブルドン(英)を挟み、最後の舞台ニューヨークの全米オープンへと移る。世界を転戦し、躍動する選手たち。その「衣装」に注目すると、違った楽しみ方ができる。

(スポーツ部・富山正浩)