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南スーダンPKO撤収「非常に困惑した」 病院攻撃に衝撃/日本の行動に期待

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日本政府が自衛隊撤退を決めた南スーダンなど、世界中で医療援助をしている国際NPO「国境なき医師団」(MSF)。会長のジョアンヌ・リューに紛争地の実情や日本の役割、そしてシリアなどで相次ぐ病院攻撃について聞いた。

――南スーダンの国連平和維持活動(PKO)から自衛隊の撤退を決めた日本政府の判断についてどう思いますか。

会長としての公式な意見は持ち合わせていませんが、日本の決断を知ったとき、私たちは非常に困惑しました。なぜそのような決断をしたのか、全く理解できませんでした。現地の状況は良くなっていないからです。平和に至るいかなる兆候も見えていません。

――現地はどのような状況なのですか。

非常に大規模な市民への暴力が発生しています。国連PKOは逃げ場を失った人への緊急手段として、「文民保護区」を設けました。一時的な措置だったはずが、閉じるどころか拡大しており、その外は無法地帯になっています。

南スーダン北部ワウ・シルクでは今年1月、スーダン人民解放軍(SPLA)と反対勢力間の武力衝突が起き、2月にSPLAが町を奪還する際に激しい戦闘になりました。SPLAは奪還後、村々を焼き、略奪しました。逃げられなかった高齢者が生きたまま小屋ごと焼かれた、と元住民たちは証言しています。

女性たちも、市場に行ったりするために安全な保護区を出るたびにレイプされる、と打ち明けています。法を犯しても刑罰を受けないとき、誰もが暴力行為に走るのです。

――MSFの病院も襲撃されています。

幸いけが人は出ていませんが、ワウ・シルクにあるMSFの病院も何度も略奪され、燃料や電子機器など何もかも奪われました。スタッフはいまだに戻れていません。

紛争下における医療保護の原則は、国際人道法や国際条約に規定されていますし、国連安保理が医療施設への攻撃を非難する決議を採択してからももう1年になります。それでも攻撃が起きており、とても衝撃を受けています。MSFが支援する病院に昨年だけで、シリアで少なくとも71回、イエメンでは3回の攻撃がありました。

病院は「戦地での人間性の最後の場所」です。守られなければ、すべてが完全な混沌(こんとん)となってしまう。病気やけがと闘っているときに爆撃され、命を落とす場所であってはならないのです。

――日本にどんな役割を期待しますか。

外国人の存在は地域が無法地帯に陥るのを防ぎます。南スーダンから自衛隊が撤退しても、日本は外交的、政治的な存在感を示して欲しい。政治的圧力をかけ続けなければ、攻撃は放置されます。

昨年の国連安保理の非難決議を提案した国の一つは日本です。こうした政治的で、扱いにくい課題での日本の支援を大いに期待しています。(中立な立場で)踏み込んで行動できる国は多くないからです。チェスゲームに例えるなら、日本はポーン(歩兵)でなく、キングやクイーンだと思っています。

――市民には何ができるのでしょうか。

政府に対して、行動を起こすよう訴えていく必要があります。MSF日本が行った「病院を撃つな!」キャンペーンで、3月末までに約9万5千筆の署名が集まりました。4月末に安倍晋三首相に提出する予定です。