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「ラグビー×英語」留学 日本の中高生が熱視線

World Outlook いまを読む 更新日: 公開日:
マイク・ロジャースさん=写真はいずれも高橋友佳理撮影

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マイク・ロジャースさん=写真はいずれも高橋友佳理撮影

――「Game On English」は2014年に始まりました。具体的にどのようなプログラムなのですか。

日本の生徒がNZの家庭にホームステイしながら数週間、英語の集中講座とともにラグビーやボートのスポーツトレーニングを受けます。「Game on」とは「試合開始」という意味です。安倍政権が掲げる教育の国際化と青少年のスポーツ能力向上をはかる二つの政策に答えるために、NZのジョン・キー前首相との合意のもと、NZ政府の主導で開発されたプログラムです。

ラグビーはNZ社会にとってスポーツ以上のもので、チームワークやコミュニケーション能力、リーダーシップなど人生において必要な能力を育みます。英語だけなら他の国でも勉強できますが、本場でラグビーを通じた価値観も合わせて学ぶことで、生徒たちは「自信」をつけることができます。

NZで高まる日本への関心

――これまでにどのくらいの日本人の生徒が参加したのですか。

これまでにラグビーが125人、ボートが15人の計140人が参加しました。とくに、ラグビーの参加者は16年に前年比で倍増しました。ちょうど、その頃から日本で盛り上がったラグビー熱が影響していると思います。16年のプログラムに参加した高校生が今春、NZの大学にあらためて長期留学を決めるなど、次につながる成果も出始めています。

NZでは元々、勤勉さや物事への取り組み方など「日本的なやり方」や日本文化への関心が高く、同じ島国であり、国民性も似ていると言われています。それに加えて、日本で19年にラグビーW杯が開かれることになり、さらに関心が高まっています。日本人生徒からも多くのことを学ぶことができるので、ホームステイの受け入れ先を探すのに苦労もありません。この事業は双方にプラスとなるのです。

NZでラグビーの試合前に踊る「ハカ」を体験する都立大泉高校と石神井高校のラグビー部員ら。文部科学省の15年度の統計では、高校生の3カ月以上の留学先で、NZは米国に次ぐ2位だった=練馬区の大泉高校

多様性を体現する地

――スポーツ以外に特徴はありますか。

NZは多様性という点で進んだ国です。7割のヨーロッパ系、15%の先住民マオリのほか、アジア系や太平洋諸島民がいます。公用語も英語、マオリ語、手話の3つあります。また、日本だけでなく、中国、韓国、インドやドイツ、中南米から若者たちがスポーツと英語を学びに来ています。多様性を学ぶには、最適の環境なのです。

――日本人の若者は内向きになっていると言われますが、そう感じますか。

確かに生徒たちはプログラムに参加した当初は恥ずかしがって無口ですが、すぐに変わっていくことに驚かされます。生徒の中に、開花を待っている可能性が眠っていると思います。日本人の生徒はすごく勤勉で、物事に熱心に打ち込む。そこに「自信」が加われば、次のレベルに行くことができるのです。プログラムを終えて自信をつけた生徒が日本に戻ったとき、他の生徒をも勇気づけ、その効果を社会に還元することができます。

中高一貫校が注目する、中3での「ターム留学」

――日本からは女子生徒も参加していますね。

これまでに参加した140人のうち3割が女子生徒でした。NZは世界の中でも女性の社会進出が進んだ国だと言われています。そして、安全で、自然も豊かです。小さな国のため、2時間半あればビーチと山での活動を両方体験することができます。ホームステイ先の家庭は家族の一員のように受け入れてくれ、初めて海外に出る中高生にとって安心できる環境です。NZ教育省によると日本からNZへの留学者数は増加傾向にあり、2016年には全体で年間1万人超が学んでいます。その中でもいま、日本の中高一貫校がNZへの「ターム(学期)留学」に関心を持っています。高校受験がない中高一貫校では、中学3年生の3学期に留学することができるからです。ちょうど2月はNZでは年度初めにあたることもあり、2~4月のターム留学に先生たちの関心が高まっています。ベイ・オブ・プレンティ・ラグビー協会は今後、地元の中学・高校とタイアップし、日本の生徒をさらに受け入れる予定です。(聞き手・GLOBE編集部 高橋友佳理)

2月上旬、都立大泉高校と石神井高校のラグビー部員に、留学で体験できるラグビーレッスンを行うベイ・オブ・プレンティ・ラグビー協会のコーチら=練馬区の大泉高校

マイク・ロジャース  Mike Rogers

1976年、NZ・クライストチャーチ生まれ。高校時代に米国留学を経験し、帰国後、スポーツ・マネジメントの学位を取得。スポーツ・ディレクターとして学校でラグビー、バスケットボール、テニスを教え、2011年より現職。