"Back-to-School Divide: $195 Headbands and $1 Glue Sticks"
8月29日付 ニューヨーク・タイムズ紙
最近、私が住むシリコンバレーでは、haves(持てる者)とhave nots(持たざる者)の違いがいっそう目立つようになった。米国の多くの大都市と同様、住宅価格が急騰。IT企業に勤める高給取りでもないと、そうそう暮らせなくなった。低賃金の人は、郊外から時間をかけて通勤したり、ホームレスになったり、あるいはここから引っ越したりしている。金持ちを狙った犯罪も急増。日々の生活で格差が目に見えるようになっているのだ。
米国では、一般に新学年は秋にスタートする。この季節はback-to-school(新学期の準備)がテーマの記事が目につく。学校で必要な服やschool supplies(学用品)を家族ぐるみで買うのは、子育て世帯の大事な行事である。小売業にとっても、クリスマスに次ぐかき入れ時だ。この記事を読んで、「ここにも格差が表れたか」とがく然とした。
記事が取り上げる高所得層相手のブランド、Kate SpadeやSaks Fifth Avenueは、195ドルのヘアバンドや572ドルのリュック、28ドルのgold-accented(金飾りのある)ホチキスなどを販売している。一方でDollar TreeやT.J.Maxxのような量販店では8ドルのホチキスや1ドルのスティックのりが売られる。米国のincome gap(所得格差)は拡大の一途で、今やchasm(深い裂け目)と言えるほどだ。ブランド店と量販店はどちらも自分たちのcore consumer(中心顧客)を引き寄せることにdeft(たけて)きた。一方で中流階級を狙っていた伝統的なデパートは悪戦苦闘。売り上げはslumped(下降してきた)。
記事によれば、教育予算の削減で、学校は保護者により多くの学用品を買うよう求め、校内活動の費用が加わると相当な経済的負担となる。対策としては、消費税を払わなくてもいいtax-free holiday(免税期間)がある。最近、多くの州が新学期前に実施している。また、backpack drive(リュックや学用品の寄付を募り、貧しい生徒に配る慈善活動)の人気も高まっているという。だが、こうした支援のない地域の貧しい家庭は、生活費を切り詰めるしかない。まさに格差社会の証左だろう。
(8月29日付 ニューヨーク・タイムズ紙)