「反日」乗り越え、おばんざいの店 @広州(中国)

「食は広州にあり」で知られる美食の街で、京風の「おばんざい」を出す30席の和食店を約2年前からやっています。
店舗の物件探しをしていた2012年、尖閣諸島の国有化による反日デモが中国各地で起きました。不動産屋に「日本人は案内できない」と言われて、3カ月は息を潜めていました。物件が決まってからも、警察による調査への対応やガス利用の許可取得などに手間取り、飲食店の営業許可証を得るまでに約20万元(約400万円)使いました。内装費とほぼ同じ額です。
料理人たちはみんな広東省出身の中国人です。18歳から22歳の5人に、ごはんの炊き方、みそ汁のつくり方から一つ一つ教え込みました。広東料理は中華料理の中でも薄味なので、煮物の作り方などののみ込みは早かったです。
仕入れはバスで30分の海鮮市場に行きます。タイ、ヒラメ、カンパチは日本人でも納得のいく刺し身になります。ただ、来たばかりのころは、いい魚は見せてさえもらえなかった。しばらく、売り主の言い値で買い続けていたら、ようやく生きのいい魚が出てくるようになりました。
日本人と中国人のお客さんの割合は8対2。日本人のお客さんは、お酒とお総菜、ごはんもので150~200元(約3000~4000円)を使います。一方、中国の常連さんは刺し身の盛り合わせを肴に、輸入した日本酒を飲み、700元(約1万4000円)ほど使っていってくれます。
休みはほとんど取れません。仕入れ後のランチで外食するのが楽しみです。料理は鳥のスープがうまい。これで野菜を炊いてみようかな、とか考えます。四川料理を食べながら思いついたのは、豆板醤とポン酢を合わせるソース。結局、仕事に行き着いてしまいますね。
(構成 GLOBE記者 小山謙太郎)
やまもと・たかお
1982年、札幌市生まれ。自衛隊駐屯地の給食センター、京都の割烹などを経て、2010年に中国に渡り、上海の和食店で働く。2013年に広州で開業。