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子どもの遊び、インディアン・ドリームに インドの「カバディ」

Insight 世界のスポーツ
敵陣に入り、タッチする機会をうかがう攻撃側(赤色のユニホーム)と守る選手 Photo: Narabe Takeshi
敵陣に入り、タッチする機会をうかがう攻撃側(赤色のユニホーム)と守る選手 Photo: Narabe Takeshi

カバディ!カバディ!カバディ!

10月下旬、南インドの都市チェンナイであったプロカバディリーグ「PKL」の決勝戦。スタジアムの中を派手な色の照明が飛び交い、DJが大音量で盛り上げる。観客たちが「カバディ!」と連呼していた。

カバディは、鬼ごっこと格闘技を組み合わせたようなスポーツだ。テニスコートの半分ほどの広さで、7人のチームが互いに争う。攻撃側はレイダーと呼ぶ1人を敵陣に送り込む。相手の体に手や足などでタッチして自陣に戻ると、触った人数分が得点になる。守備側はレイダーを戻さないよう、相手に飛びかかって押し倒したり、外へ押し出したりする。

集団格闘技といわれるだけあって、当たりは激しい。起源は、武器を持たずに数人で獣を囲み、声をかけながら捕まえる狩猟にあるといわれる。

試合を見ていて気づいたのは、審判とは別に、モニターの画面をチェックする裏方がコート脇に控えていたことだ。

「日本の相撲やJリーグをはじめ、世界のスポーツを研究しました。相撲は取り組みが終わってから、力士が退場するまでが早すぎてテレビ映りがいまいちでしたね」。記者出身で、現在はプロリーグのコミッショナーのゴスワミは、モニターによるテレビ映りの確認から、プレーごとの間隔を10秒ほど置くよう試合進行を変えたと話す。「スポーツはテレビによって発見され、成長するのです」

選手の収入は急増

プロリーグは2014年にできた。いまやテレビの視聴者は3億人超。経済成長でエンターテインメントへの関心が高まり、今後、国民の興味が集まるのはプロスポーツだとみる企業は少なくない。

今年からは中国のスマホメーカーVivo5年間のスポンサー契約をプロリーグと締結。ブランドの認知度を高め、巨大市場を攻略したい思惑がのぞく。今年のリーグの広告収入は前年比で2倍に増えた。

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歓喜する優勝チームの選手たち Photo: Narabe Takeshi

選手の収入も伸びている。3年前のプロリーグ設立当初は、トップ選手でも1シーズン(23カ月)約200万円だったが、いまや1000万円以上に増えた。今年の優勝チームの一員、パルディープ(20)は農家出身。母親は読み書きができず、生活は苦しかった。「私の稼ぎは、親の銀行口座に振り込んでいます。もっといいプレーをして親に楽をさせたい」

カバディは、パキスタンやバングラデシュなど南アジアで盛んだ。イランや韓国でも急成長している。王者インドには世界からトップ選手が集まる。

日本から今シーズン唯一参加した日本代表副主将の河野貴光(25)は、試合には出られなかった。だが、得たものは大きいと話す。たとえ練習でもインド人選手は考えられないほど全力で取り組んでいた。「学校へ行けずに働いている人もいる。その分、勝負にかけるこだわりが強く、負けず嫌い。このハングリーさを日本代表にも伝えたい」

「カバディは間違いなく世界的なスポーツになる。五輪種目だって夢ではない」。自身も選手だった国際カバディ連盟会長のゲロー(72)は語る。

子どもの遊びが「インディアン・ドリーム」になり、世界にその存在感を示そうとしている。(文中敬称略)

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ならべ・たけし/1982年生まれ。経済部、政治部などを経て現職。デリーの深刻な大気汚染で、運動不足解消には屋内スポーツしかないと思うが、カバディの激しさには恐れおののく。