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重んじるのは日本的な忠誠心

A European CEO's Challenge フランス人社長 老舗を背負う
撮影・北村玲奈
撮影・北村玲奈

さて、前回のコラムで自己紹介をさせていただきましたが、私はこれまで8カ国での勤務経験があります。でも、海外に出て英語を学んだのは25歳になってから。転々と職を変える欧米人は珍しくありませんが、私は20年間同じ会社に勤め、今の会社が事実上、2つ目です。日本人の平均的なサラリーマンに近いと思いませんか?

本当のグローバル企業とは?

武田薬品工業は1781年に創業した老舗です。一方で2008年と2011年に海外の企業を買収してグローバル企業になりました。面白いのは、この業界に詳しくない日本人に、「武田薬品の中で、日本国外にいる社員は全体の何割くらいを占めていると思いますか?」と聞くと、「1割くらい」という答えが多いんですよ。私が「いや、7割以上の社員が日本国外で働いているんですよ」と言うと、みんなびっくりするんです。日本の老舗という点からみれば、武田も日本独特の企業文化が根付いている会社だといえますが、実際は国外でのプレゼンスも大きいのが実態で、そのビジネスは70カ国以上にまたがっています。組織のマネージメントの面で日本的なよさは残したいと思いますが、本当の意味でのグローバル企業に生まれ変わろうとしたら、変えなければいけない点もたくさんあります。私はあえて「DNA」という言葉を使いますが、武田のDNAを大切にしつつも、新しい企業に生まれ変わろうと努めています。

私は忠誠心を重んじる

例えば、日本の企業の特徴でもある忠誠心。これは長い間、一つの会社に勤めることで生まれる独特の価値観ですよね。私は社員採用で履歴書をみる時、「これまで、どれだけ転職してきたか」という点も見るようにしています。アメリカだと、たくさんの企業を渡り歩き、経験を積んできた人を高く評価する傾向がありますよね。私は必ずしもそうではありません。

履歴書に数年ごとに転職してきたことが書いてあれば、消極的な理由で職を転々としているのではないかどうかを確かめるために「なぜ、その会社を辞めたのか」「その時、何があったのか」という点を面接で問います。私自身、武田に来る前、一つの会社に長く勤めてきた人間でした。なので、こうした価値観はこれからも大事にしたいと考えています。一方で、単に一つの会社に長くいればいいというわけでもありません。長く勤務するなかで、変革を恐れず、変化を受け入れる姿勢が身についていることが必要です。長く勤めることが、年次に基づいた雇用システムとして固定化してしまうと、今の時代、ネガティブな面の方が大きくなります。欧米と日本の良いところをうまく生かしながら、極端にならないよう、組み合わせていくことが大事ですね。

やる気と能力があれば、どんどん

武田に関して積極的に変えなければいけないと思っているのは、日本におけるダイバーシティー(多様性)です。企業文化は会社によってさまざまですが、それでもこれまで日本の企業組織は非常に均一的と考えられていたと思います。もちろん、男性と同じように女性が活躍するという男女のジェンダーも課題ですが、問題はそれだけではありません。例えば、年齢のダイバーシティー。やる気と能力があり、キャリア的にどんどん先へ進みたい人材がいれば、入社年次や勤務年数にかかわらず、本人の希望に沿えるよう組織の方が柔軟に対応しなければいけません。逆に、グローバルに活躍したいとは思わない人、キャリアが先に進まなくても自分のペースで働きたい人もいます。それぞれが思い描くように歩んでいける会社にすることが、私がいま取り組んでいる最重要の課題の一つです。

フランス人社長_重んじるのは日本的な忠誠心_2
撮影・仙波理

あとダイバーシティーが重要なのは国籍や経験ですね。武田の幹部の14人の国籍をみると、8つにもなり、しかも14人全員が国際経験豊かです。たぶん製薬業界では世界的にみても、このダイバーシティーは珍しいと思いますよ。日本人とアメリカ人が複数いて、フランス人、イギリス人、アイルランド人、カナダ人、ブラジル人、ドイツ人がいます。
このような変革を進めるうえで、もし最初から無理な目標を設けたら、やる気を失いだれも達成しようとしなくなってしまいます。現在ある武田の企業文化やマネージメント方法などからスタート地点を見極め、そこから将来へのビジョンをつくっていかなくてはなりません。
こんなふうに私は、老舗であることを大切にしつつ、グローバルで戦える企業に武田を変えていこうとしています。

次回は、私の考えるリーダー論について具体的にお話しようと思っています。

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