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『ポルト』 異国でひかれ合った「よそ者」

Cinema Critiques 映画クロスレビュー
『ポルト』より © 2016 Bando a Parte – Double Play Films - Gladys Glover – Madants
『ポルト』より © 2016 Bando a Parte – Double Play Films - Gladys Glover – Madants

映画クロスレビュー_『ポルト』_3
ゲイブ・クリンガー監督=仙波理撮影
映画クロスレビュー_『ポルト』_2
『ポルト』より © 2016 Bando a Parte – Double Play Films - Gladys Glover – Madants

Review01 大久保清朗 評価:★★★(満点は★4つ)

「時間の外」へ抜け出す

恋は時間をまどわせる。『アニー・ホール』から『(500)日のサマー』まで、時制を自在にあやつりながら、愛の秘密を追求する恋愛映画が存在する。無言で見つめ合う2人の男女の横顔から初の長編劇映画『ポルト』を始めたゲイブ・クリンガー監督もまた、その系譜に連なろうとしている。時間を往還しつつ、彼はこの冒頭に向けて物語を収斂(しゅうれん)させていく。

だが、この映画の隠れた主人公は、ポルトという土地そのものである。ポルト出身のポルトガルの巨匠オリヴェイラはたびたびこの地を舞台とした映画を手がけたが、晩年の『アンジェリカの微笑み』が想起される。ここでは、生と死を超越した愛が描かれていた。

『ポルト』のなかで、プルーストが引用される。『失われた時を求めて』で知られるこの小説家は、未来は現在と過去の断片をもとに意志が築きあげるものだと書いている。「時間の秩序から解放された瞬間」に、人間のなかで死んだかにみえた真の自我がよみがえるというのだ。そうした人間は未来に訪れる死も恐れない。「時間の外に位置している以上、いったい彼が未来の何を恐れることがありえようか?」(第7編「見出された時」鈴木道彦訳)

主人公ジェイクを演じたアントン・イェルチンは、この映画の出演後、不慮の事故で急逝した。だが、たとえそれを知らずとも、彼は、マティという女性と一期一会の邂逅(かいこう)を経て、「時間の外」へと抜けだしてしまったかのような錯覚を覚えてしまう。

 

Review02 クロード・ルブラン 評価:★▲(満点は★4つ、半分)

惜しいシナリオ、主役は街

何よりもまず、ゲイブ・クリンガー監督にとっての恋愛を映画として描いた作品だ。それが映像の質の高さと見事な編集を通して、明確に表現されている。

映画に欠かせない、この二つの要素のおかげで、かなり格調のある作品に仕上がっているだけに、中身のないシナリオが惜しい。一夜の恋を共にした2人の主人公をめぐる物語がすごく弱い。

どうしてタイトルがポルトなのか。作品を見て分かるのは、結局、映画の主役はこの街だからだ。橋、通り、ロープウェー、船、カモメ、ドウロ川の見えるアパート。登場人物たちは琥珀(こはく)色の光のなかに浸り、すべてが凝ったシーンの題材になっている。このスタイルで1時間余り。その点は十分に満足できる。