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韓国社会の暗部を執拗に ヨン・サンホ監督が「最も影響を受けた」と言うある日本映画

現地発 韓国エンタメ事情 更新日: 公開日:
ヨン・サンホ監督
記念撮影する全州国際映画祭関係者。左から3人目がヨン・サンホ監督=全州国際映画祭提供

韓国映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)や『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020)、ネットフリックスオリジナルシリーズ『地獄が呼んでいる』などで世界的に人気を集めるヨン・サンホ監督が、「今最も影響を受けている作品」として、黒沢清監督の『CURE』(1997)を挙げた。ヨン・サンホ監督は4月28日に開幕する全州国際映画祭で「今年のプログラマー」を務め、『CURE』のほか、片山慎三監督の『さがす』(2022)を上映作として選定した。

今年23回目を迎える全州映画祭は56ヶ国の217作品を上映する。ヨン監督は「Jスペシャル」部門の5作品を選んだ。執行委員長のイ・ジュンドン氏は「ヨン監督は韓国社会の暗部を執拗なほど掘り起こして描き、ジャンル的にも新たな挑戦で独特の世界を作ってきた。多忙を極める創作者でありながらプログラマーを引き受け、全州で観客との対話にも参加してくれることをありがたく思っている」と話した。

5作品のうち2作品はヨン監督自身の作品から選ぶことになっており、長編デビュー作でカンヌ国際映画祭にも出品されたアニメーション『豚の王』(2011)と、韓国で観客数1156万人を記録した代表作『新感染 ファイナル・エクスプレス』を上映する。自由に選んだ3作品のうち2作品が日本映画だ。

ヨン監督は『CURE』について「25年も前に作られているのに、ごく最近の作品のように感じる。私が今最も影響を受けている作品」と語った。ポン・ジュノ監督も、昨年の釜山国際映画祭で濱口竜介監督と対談した際、『殺人の追憶』(2003)を作るうえで「『CURE』で周りの人々を惑わせる間宮を見ながら、こんな犯人だったかもしれないと考えた」と話していた。韓国の監督たちに長きにわたって影響を与え続けているようだ。ヨン監督は「今回、4Kデジタル修復版をスクリーンで見られるので、私自身とても楽しみにしている」と話した。

ヨン・サンホ監督
ヨン・サンホ監督=全州国際映画祭提供

ヨン監督は現在、『地獄が呼んでいる』の続編を創作中だ。『地獄が呼んでいる』の原作はウェブトゥーン(韓国発のウェブ漫画)で、ヨン監督と漫画家のチェ・ギュソクが共同で描いている。「今年下半期には続編の漫画を発表できると思う。映像化もそれに合わせて準備を進めるつもり」と明かした。『CURE』からどんな影響を受けているのか、気になるところだ。

一方、片山慎三監督についてヨン監督は「韓国ではポン・ジュノ監督の助監督を務めたことで知られている」と紹介し、「最新作の『さがす』はある面ではポン・ジュノ監督の映画のようにも見えるし、また黒沢清監督作が思い出されるような面もある」と語った。

ヨン監督は片山監督が演出したWOWOWのドラマ『さまよう刃』にはまり、SNSを通して片山監督に連絡を取ったという。「片山監督とは一緒に何かしたいという話をしていて、親しく付き合いながら、映画でも何でも一緒にできることを探っている段階」と話した。

全州国際映画祭提供

今年の全州映画祭は基本的にはコロナ以前のオフライン開催に戻す方針という。特別展は3つで、イ・チャンドン監督のデビュー作『グリーンフィッシュ』(1997)から最新作の短編までをたどる特別展のほか、韓国の歴史ある映画社「テフン映画社」の回顧展と、「オマージュ:シン・スウォン、そして韓国女性監督」だ。シン・スウォン監督の『オマージュ』は実在の韓国の女性監督をオマージュした作品で、主人公をイ・ジョンウンが演じる。女性監督にスポットをあてた特別展だ。

近年韓国では女性監督の活躍が目立っているが、今回の全州映画祭も国際コンペティションに選ばれた10本中6本、韓国コンペティションの9本中7本が女性監督作だった。担当のプログラマーは「社会の矛盾など外の世界を描く作品よりも、家族など内に向いた視線の作品が増えた」と、コロナパンデミックによる作品の変化を指摘した。