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「踊りは人生そのもの」 セネガルの街中、あふれるダンス

World Now 更新日: 公開日:
セネガルでは格闘技でも踊りは欠かせない =2013年4月、セネガル・ダカール、宮崎勇作撮影

セネガルの首都ダカールのスポーツスタジアム。機関銃のような太鼓の音が響く。体重が100キロ近い男たちが軽やかなステップで、手を大きく振り、踊っていた。客席では、子どもや学生はもちろんのこと、お年寄りも、招待された政治家たちも一緒になって体を揺らしていた。まるで巨大な野外ダンスイベントだ。

ここはセネガル相撲の会場。この国で、サッカーに次ぐ人気を誇る国民的なイベントだ。力士も観客も3時間近く踊って、やっと相撲の本番が始まった。もともと日本の相撲と同じように、農村で五穀豊穣(ほうじょう)を祈る神事なのだが、太鼓奏者のウスマンは「踊りのうまさも強い力士の条件だ」と教えてくれた。観客たちは、取組中も踊り、相撲が終わっても、暗くなるまで踊り続けた。

「間違いなく世界最強」

相撲だけではない。セネガルの街中には、ダンスがあふれている。夜に街を歩くと、結婚式や洗礼式で集まった人々が踊る姿に出くわす。料理の踊りや、夫婦げんか仲裁するダンスもあるという。

土曜の夜に住宅地の路上で明け方まで踊るというイベントを訪ねると、午前0時過ぎなのに子どもや女性たちが太鼓に合わせて思い思いに踊っていた。午前1時近く。セネガル国立舞踊団のスター、パムサ(29)が現れた。長い手をプロペラのように振り回し、跳び上がる。手足の動きが速すぎて、体が宙に浮いているようだ。パムサの新しい振りはテレビで全国放送され、あっという間に流行になるという。西洋音楽とセネガルの太鼓のリズムを生かしたダンスのジャンルをつくったユッスー・ンドゥールは今、観光余暇大臣だ。「セネガル人にとって踊りは人生そのもの。生きる活力だ」と話す。

セネガルのトップダンサー、パムサ(中央)=2013年4月、セネガル・ダカール、宮崎勇作撮影

インターネットや米国の音楽業界など、いま世界を席巻しているのが、激しく体をくねらせるヒップホップダンスだ。そして、その起源はセネガルを含む西アフリカという説がある。日本のダンス・ボーカルユニット、EXILEのメンバーの一人、USA(ウサ)は、ダンスのルーツを求め、セネガルを訪れた。パムサのダンスに驚き、自著「DANCE EARTH」にこう書いている。「アフリカ大陸の力強い生命力が、観るものを圧倒する」「間違いなく世界最強」(宮崎勇作)(文中敬称略)