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自然を傷め、自分の絶滅を早めている私たち 恐竜の運命から何を学ぶべきか

World Now
Tyrannosaurus rex on white with a little shadow around the claws.
ティラノサウルス(想像図)=Joe Lena/Getty Images

ティラノサウルス、トリケラトプス、イグアノドン─。全長1メートル程度の小さな種から、30メートルもの巨体を誇るものまで、大きさも形も様々な恐竜たち。今も続々と新しい発見が続き、年齢を問わずファンを魅了する。映画やアニメの題材としても人気だ。

恐竜が主にくらしていたのは、約2億3000万年前〜6600万年前。多くの種類が現れ、消えていきながらも、約1億7000万年にわたって恐竜の時代が続いた。現生人類の歴史がたかだか約20万年、産業革命以降からは200年ほどしか経っていないのを考えると、気の遠くなるような長い時間だ。

2019年に国立科学博物館で展示された、「むかわ竜」の全身の実物化石と復元骨格(下)=東京都台東区、福留庸友撮影

「個々の種は一定の割合で絶滅しつつも、全体として特定の環境に特化した様々なスペシャリストがおり、長い期間広い環境にすんでいたゼネラリストもいた。総合的に多様化していた、非常に優れた生命だったといえる」と恐竜の研究で知られる、北海道大学の小林快次教授は話す。現在注目するハドロサウルス科の中にも、エドモントサウルスのように米北部のアラスカから米中部のコロラドまで広い範囲に見つかるものもいれば、ごく狭い地域にだけすんでいたと考えられる種もいた。

恐竜たちは、約6600万年前の巨大な隕石の衝突を引き金として、現代に続く鳥の祖先を残して絶滅していった。隕石によってまき散らされたちりが太陽光を遮り、気候が寒冷化したり、植物が育たなくなったりした。寒さに適応できなかったり、エサを失ったりした恐竜は滅んでいった。周囲の環境の変化が、生物にとって絶滅にもつながる大きな影響を与えることがわかるし、恐竜に多様性があったからこそ、一部は鳥類として生き残ったとも考えられる。

現代の人間は、温室効果ガスを排出し、森林を伐採し、水や土を汚染している。こうしたことが、地球の気候を変え、すみかを奪って、生物多様性を劣化させる要因になっている。小林教授は「今の地球上の生命にとって、人間の存在は、恐竜にとっての隕石に相当するといってよい」という。

そして、人間は「ヒト」という生物の一種でもある。だから誕生や繁栄とともに、衰退も訪れる。人間もいつかは必ず絶滅する。生物多様性の恵みは、私たちの生活に不可欠だ。それを傷めつければ、やがて私たちに跳ね返ってくる。今やっていることは、自らの首を自ら絞めて、絶滅を早めているだけとも言える。

ただ、小林教授は隕石と人間の間の違いとは何かを考えることも重要だと指摘する。「恐竜にとっての隕石は地球の外側から来る、ある意味『どうにもならないこと』だった。人間は自分自身で環境を破壊して、地球の内側から大量の生物を絶滅に追いやってしまっている。逆に、隕石と違って我々は事態をコントロールできる」

北海道大学総合博物館の小林快次教授=オンライン取材の画面から

小林教授は国連の持続可能な開発目標(SDGs)などの価値観が浸透し、78億人が力を合わせれば、未来は変えることができると考えている。「現状は全く希望がないわけではない。生物が多様だからこそ、ヒトの種としての寿命も延びる。自分たちのことだけでなく、地球の一員としてどう共存できるのかしっかり考える時だ」(小坪遊)