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難しい日韓合作、それでも私が挑戦した理由 『蝶の眠り』チョン・ジェウン監督

現地発 韓国エンタメ事情
映画『蝶の眠り』から。主演の中山美穂 ©2017 SIGLO, KING RECORDS, ZOA FILMS

『蝶の眠り』の主人公涼子(中山美穂)は売れっ子小説家だが、遺伝性アルツハイマー病の診断を受け、人生の最終章を考え始める。そんな中、韓国人留学生のチャネ(キム・ジェウク)と出会い、人生最後となるかもしれない小説の執筆をチャネに手伝ってもらううちに、2人は惹かれ合っていく。

映画『蝶の眠り』から。キム・ジェウク(左)と中山美穂 ©2017 SIGLO, KING RECORDS, ZOA FILMS

チョン監督は日韓合作に至った経緯を「『子猫をお願い』の時から日本の映画関係者との交流が続いてきた中で、自然と彼らと一緒に作品を作りたいと思うようになった」と話した。『子猫をお願い』(2001)はペ・ドゥナ、イ・ヨウォンらが主演し、女性監督が女性を描いた記念碑的な作品でもある。今年は20周年で再び注目を集めている。日本では韓流ブームの真っただ中の2004年に公開された。「当時韓国では猫は人気がなかったが、日本では猫好きが多く、それもこの映画が日本で愛された理由のようだった」と振り返った。そういえば、私が2000年代前半に韓国に留学した頃、道端で猫を見かけると不吉な存在のように嫌がる人も少なくなかった。

映画『蝶の眠り』から、主人公涼子の自宅。ここで涼子の人生最後となるかもしれない小説の執筆をチャネが手伝う ©2017 SIGLO, KING RECORDS, ZOA FILMS

『蝶の眠り』は日本が舞台で、セリフは日本語だ。それまでの日韓合作の多くが日韓を行き来し、日韓両言語をセリフに使っていたが「観客として私が感じた二重言語により鑑賞に支障が出るという悩みを日本語に統一することで解消した」と説明する。チョン監督が描いたシナリオを日本側のシナリオ作家が脚色し、ミーティングを重ねて誤解のないよう作り上げていった。

主演の2人のキャスティングについては「中山美穂さんは岩井俊二監督の映画『Love Letter』主演で韓国でもよく知られていて、私もとても好きな作品。ぜひ出演してほしかったし、プロフェッショナルな仕事ぶりを見せてくれた。キム・ジェウクさんも日本でファンが多い俳優」と答えた。『Love Letter』は韓国で日本の大衆文化が段階的に開放され始めた1999年に公開され、ヒットした。近年もたびたび再公開されている韓国で最も長く愛される日本映画と言ってもいいほどだ。キム・ジェウクは幼い頃日本に住んでいた経験があり、日本語のセリフも自然だった。

トークコンサートでのチョン・ジェウン監督=釜山文化財団提供

日韓の撮影の違いについては韓国では現場でも温かいご飯とスープの食事が準備されるが、日本ではいわゆる「ロケ弁」が出ることを挙げ、「最初は珍しいので喜んで食べたが、だんだんお弁当以外が食べたくなって言ってみたらカレーを準備してくれた」と笑った。私もチャン・リュル監督が福岡で映画『福岡』を撮る時に炊き出しボランティアで参加し、俳優やスタッフにカレーをふるまった経験がある。撮影期間は韓国に比べて日本は短い傾向があり、チョン監督は「スケジュールがタイトなうえ言語の壁もあって苦労したが、撮影が終わる時には国籍に関係なく俳優やスタッフに深い同僚愛を感じた」と話した。

トークコンサートでのチョン・ジェウン監督(中央)と筆者(右)=釜山文化財団提供

あえて難しい合作に挑戦するのは「大変でも、自分が一回り成長できるのが感じられるから」と言う。「『蝶の眠り』を作りながら私が最も重視したのは、合作映画制作システムの複雑さを認め、他文化・他国・他人とのコミュニケーションに関心と忍耐を持つことだった」と述べ、日本のスタジオでの作業や配給過程を経験できたのも興味深かったという。

日韓の映画界の協業は続いており、今年公開された作品では石井裕也監督の『アジアの天使』、佐藤智也監督の『湖底の空』などが韓国で撮影され、韓国の俳優が出演している。さらに是枝裕和監督が、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ、IUらが出演する『ブローカー』(仮題)を今年韓国で撮影した。特に日本側から韓国の俳優やスタッフの参加を希望する声をよく聞くようになり、コロナ禍で人の移動が難しい状況が落ち着けば、さらに日韓の協業が増えそうだ。チョン監督は「劇場はコロナの打撃が大きいが、映画関係者の中には動画配信サービスをうまく活用したり、ドラマ作りの方で忙しくなったりしているケースも多い」と、コロナ禍でも希望はあることを語った。