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制裁でロシア名乗れずROCに それでも活躍する選手たち ライバル・アメリカは不満

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男子団体で優勝し金メダルを手にするROCの選手たち=7月26日、有明体操競技場、細川卓撮影
男子団体で優勝し金メダルを手にするROCの選手たち=7月26日、有明体操競技場、細川卓撮影

「そもそもここにいるべきではないクルーが銀メダルを持ち去ることを見るのは嫌な気持ち」

7月29日、ボート女子かじなしペアに出場して10位に終わったアメリカのメーガン・カルモー選手はTwitterにこう投稿し、銀メダルを獲得したロシア人ペアへの不満をあらわにした。

英BBCによると、競泳男子200メートルで銀メダルとなったアメリカのライアン・マーフィー選手も「(決勝は)たぶんクリーンではなかった」と話した。金メダルになったROCのエフゲニー・リロフ選手を念頭においた発言とみられる。

ロシアのドーピング問題が発覚したのは2014年。旧ソ連の情報機関KGB(国家保安委員会)の流れを組むFSB(ロ連邦保安庁)が関与し、禁止薬物を吸引した選手の検体すり替えや検査データの改ざんなどが国家ぐるみで行われたと認定された。

不正によって恩恵を受けたとされる選手は11年から15年にかけて1000人を超すと言われている。世界反ドーピング機関はロシアを2022年12月まで主要国際大会から除外する制裁を決定した。

国際大会にはドーピングと無関係だと証明した選手のみ、個人としての出場が認められており、東京オリンピックに出場するロシア人選手はこうした条件に当てはまる人たちだ。

ただ、参加に当たっては様々な制約がある。選手たちはロシアという国名ではなく、ROC(Russian Olympic Committee)という名前だ。ユニフォームにもロシアという名前は入れられない。

ロシア人選手が金メダルを取った時に表彰台で流れるのは国歌ではなく、世界的に知られるチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第一番変ロ短調」の曲だ。ロシアのメディア「ロシア・ビヨンド」によると、ロシア側は当初、ロシア人ならだれでも知る国民的な唱歌「カチューシャ」を提案したが、「IOCはロシアとの関連性が強いという理由でこの曲を認めなかった」という。

「逆風」にもかかわらず、東京オリンピックではロシア人選手たちは善戦している。8月2日現在、ROCは合計50のメダルを獲得(金12、銀21、銅17)。ランキングで5位につけている。

東西冷戦時代はスポーツの分野でもライバル関係にあったアメリカの選手たちが意識したり、いら立ったりするのも当然だろうが、ロシア側も黙っているわけではない。ROCがTwitterの公式アカウントで、「負けることがあることを知るべきだ。でも誰もがそうしているとは限らない。古い手回しオルガンがまた、ロシアのドーピングに関する歌を奏でている。誰かが一生懸命ハンドルを回している」と投稿した。

そんな中、ニューヨークタイムズで主にテニスの記事を書いているフリーランスの記者、ベン・ローズンバーグさんがTwitterの投稿で東京大会の出場選手を「ロシア」の国名や国旗のイラストを使って紹介し、注目されている。

ロシア国旗をなぜ使うのかと指摘を受けたローズンバーグさんは7月31日、Twitterで「私はIOCではない。彼らは一緒に戦っているロシア人。なぜならロシア人なのだから。だからロシア」と答えた。

それに対し、ロシア人とみられるアカウントからは「ありがとう、友よ」「あなたを尊敬する。勇気ある」「本質を理解しているあなたがいることがうれしい」「アメリカ人の中にも、理性的な人がいるのだ」などと喜びの声が寄せられている。

中には「この若者に、ロシアのパスポートと国会議員の椅子を与えよ。すぐにだ」「彼に市民権とサランスク(モスクワから南東600キロの都市)の部屋を与えよ」とする投稿もあった。

東京オリンピックは後半戦に突入した。ロシア人選手の活躍が予想される競技が残っているだけに、引き続き注目されそうだ。