水泳の男子シンクロ高飛び込みで金メダルを手にした英国のトーマス・デーリー(27)は男性のパートナーと3歳の息子と暮らす。会見で言った。
「私はゲイで、金メダリストです」
7歳で競技を始め、2008年北京五輪に14歳で出場した。地元開催の12年ロンドン五輪は高飛び込みで銅メダルを獲得し、16年リオデジャネイロ五輪はシンクロで銅。そして、この日、4回目の五輪で強豪・中国を破り、金メダルをつかんだ。
表彰台の頂上に立ち、涙を流して笑った。
「オリンピックチャンピオンは長年の夢だった。まだ実感がない。信じられない」
■「若い頃は孤独だった」
会見で自身の人生を振り返った。
「若かった頃は孤独だった。何もできないと思っていた。どこでもなじめないのではないか、と。葛藤していた」
13年にゲイを公表し、17年に米国の脚本家の男性と結婚した。
「孤独でも、孤独じゃない。必ず仲間がいる。家族がサポートしてくれる。誇りを持っている」
18年に家族に迎えた息子は、「最高のサポーター」だという。1カ月前、3歳の誕生日を迎えた。
「オリンピック選手になりたいと言ってくれる。それがうれしい。チャンピオンになって、パートナーも息子も喜んでくれる。本当は東京で見てくれたらよかった。早く帰って、一緒に祝いたい」
今年5月、東京で開かれたW杯。デーリーは競技のない時間に、観客席で1年半前に始めた編み物に打ち込んでいた。競技の価値を「出自も性別も全く関係なくジャッジされること」を語り、こう続けた。
「自分のストーリーを伝えることで、人々の意識を変えることができる」(木村健一)