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反捕鯨・イルカ漁団体が東京オリンピック反対活動、菅義偉首相に書簡送付 背景は?

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東京オリンピックの開催に抗議をする人たち=6月、東京都新宿区
東京オリンピックの開催に抗議をする人たち=6月、東京都新宿区

国内外で展開されている東京オリンピック中止運動には、反捕鯨や反イルカ漁を掲げるグループも含まれている。SNS上での日本バッシングはオリンピック開幕が近づくにつれ、熱を帯びている。

和歌山県太地町でのイルカ漁の様子を収めた写真とともに「なんと信じられないほど悲しいことか。イルカ漁をしているのに日本は2020東京オリンピック(の開催)に決まったのか?」とのメッセージ。「五輪なんて失敗すればいいのに」「必要性のない、採算の取れない捕鯨は日本の納税者に支えられて成り立っている。太地町ではイルカ漁も行われている。そんな日本はオリンピック開催に値しない」とのツイートもある。

日本の捕鯨やイルカ漁に抗議する人たちは、クジラやイルカが殺される写真を好んで使う。「血にまみれたオリンピック」とのメッセージがそえられたコラージュには、活動家が隠し撮りした太地町でのイルカ漁で、海水が真っ赤に染まる写真が使われている。

だが、実際に漁を行っている太地町の漁師らによると、この写真は残虐性を強調するために海水の色がより鮮明な赤色に加工されているといわれている。

「世界が太地の血を監視」と日本語でメッセージが添えられたコラージュには、オリンピックのリングの一つが赤く染まり、イルカから血が流れているようにイラストが描かれている。

ネット上では多くの反捕鯨、イルカ漁署名キャンペーンが行われている。「日本がイルカ漁と捕鯨を完全にやめなければ、オリンピックをボイコットせよ」のキャンペーンでは1万人以上の署名が集まっている。

「サーファーたちは東京五輪をボイコットすべきか」とのネットアンケートを行って、3400人以上のネットユーザーから90%の賛成が得られたことを伝えるサイトもある。

今月1日にサイトを立ち上げ、「われわれは世界各国に日本の捕鯨停止を呼びかけたい」とのメッセージを掲げた「BLUE PLANET SOCIETY」という団体は、東京オリンピックを一つのきっかけにして、「クジラを救え」とするTシャツを売って資金を集めようとしている。

捕鯨やイルカ猟への反対を呼びかける「BLUE PLANET SOCIETY」の公式サイト。メッセージをプリントしたTシャツも販売することで活動資金の獲得を狙っているとみられる
捕鯨やイルカ猟への反対を呼びかける「BLUE PLANET SOCIETY」の公式サイト。メッセージをプリントしたTシャツも販売することで活動資金の獲得を狙っているとみられる

そんな中、イギリスのメディア「インディペンデント」が世界の六つの反捕鯨団体が菅義偉首相あてに、「残虐な、持続不可能な商業捕鯨」をやめるよう求める書簡を出したことを明らかにした。

書簡には「この偉大な創造された動物を守ることは、倫理的に正しいだけでなく、生態学的にも賢明な営みだ」と記されている。

一方、日本が南極海での調査捕鯨を中止するまで集中的な妨害運動を行っていた「シー・シェパード」は現在、反サメ漁や密猟防止キャンペーンにシフトしているためか、鳴りを潜めている。

イルカが入っているいけすを見つめるシー・シェパードのメンバー=2014年3月、和歌山県太地町
イルカが入っているいけすを見つめるシー・シェパードのメンバー=2014年3月、和歌山県太地町

ただ、東京オリンピックが始まって世界の注目が集まれば、アメリカで亡命生活を送っている舌鋒鋭いポール・ワトソン容疑者=傷害容疑で国際指名手配中=が再び動き出す可能性もある。

ワトソン容疑者をめぐっては、国際刑事警察機構(ICPO)が日本側の要請に応じ、加盟国に身柄拘束を求める「赤手配」を配布している。だが、アメリカ政府が事実上、これに応じていない状況にある。