Shariq Khan
こうしたパンデミック初期の販売急増はいずれ落ち着くとの見方が大勢だったが、月間の販売額は過去最高を更新し続けている。
大麻に関する代表的なデータ収集・調査会社の1つであるアケルナによれば、感謝祭の週末を控えた、いわゆる「グリーン・ウェンズデイ」の販売額は、今年の1日当たりの平均を80%上回り過去最高を記録した。
アケルナが米国内の19州にわたる提携調剤薬局から集めたデータに基づき、市場全体の予測として調整を加えて試算したところ、感謝祭の週末にかけての大麻の販売額は、昨年比14%増となる総額約2億3800万ドル(約247億9千万円)になったと見られる。
今年の大半を通じ、大麻の需要に拍車をかけたのはパンデミック(世界的な大流行)だ。「ステイホーム」を余儀なくされ、娯楽の選択肢も限られたことで、人々のストレスが高まったためである。
調査会社ニューフロンティアデータが来週発表する予定の報告書の見本版によれば、全体として大麻使用者の10人に4人が消費を増やし、また半数以上がメンタルヘルスの改善のために大麻を使用したと答えている。
<好機は到来したのか>
コロナワクチンにより通常の生活がある程度戻ってくるとしても、業界関係者らによれば、他の多くのセクターと同様に、大麻産業にとっても2020年は画期的な年になる可能性が高いという。
「都市封鎖は、まさに大麻に関連する多くのステークホルダーにとって、人生観が一変するような好機となった」と語るのは、大麻産業に強いコンサルタント会社シバ・エンタープライジスのエイビス・バルバルヤン最高経営責任者(CEO)。「大麻に対する消費者の許容度は急激に上昇した」
結果として、事業者はプランを上方修正し、未成熟な産業にほとんど興味を示していなかったメインストリームの投資家も集まってきた。
各州の規制当局がロックダウン期間中、大麻販売事業者を「必要不可欠な(エッセンシャル)ビジネス」に指定。また11月3日に米大統領選や連邦議会選などと同時に5つの州で行われた住民投票では、大麻は嗜好用・医療用の合法化が認められた。これにより大麻の合法性はさらに高まった。
35州では制限を設けつつも医療用大麻の使用を認めており、15州及びコロンビア特別区では嗜好品としての大麻の利用も合法化されている。
とはいえ、反対も根強く、依存症の原因になる、医学的な効用を証明する研究が十分に行われていないと主張するグループもある。
アイダホ州、ネブラスカ州では大麻は禁止されている。大麻使用を支持する活動家は、2022年の中間選挙の際に解禁に向けた住民投票の実施を求めている。
早くから大麻事業に投資を行い、メディカル・マリファナのCEOを務めるスチュワート・ティトゥス氏は、2021年は、大麻がアルコールや煙草と同じくらい容易に入手できる年になるかもしれない、と話す。
「まもなくレストランでは、消費者がアルコール飲料か大麻ベースの飲料かを選べるようになるだろう」と同氏は言う。
<連邦と州の対立>
連邦法のもとでは今も大麻は違法である。そのため、大麻産業は銀行サービスの利用や資金調達で制約を抱えている。
カマラ・ハリス次期副大統領は、こうした規定の変更と大麻の非犯罪化が民主党の政策綱領の一環であると公約している。
業界関係者は、連邦議会での審議を経て何らかの変化に至るには何年もかかるかもしれないと認めつつ、意識の変化はもっと急速に進みつつあるとしている。
11月に行われたギャラップによる世論調査では、大麻合法化を支持する声は68%に達し、昨年の66%からさらに上昇して過去最高の水準となっている。
またギャラップが行った別の世論調査では、米国の成人の70%が、大麻を吸うことは「倫理的に許容できる」と考えており、1年間で5ポイントの上昇を見せた。
カリフォルニアの大麻生産企業ザ・ペアレント・カンパニーのスティーブ・アランCEOは、ノースダコタ、サウスダコタ、ミズーリなど従来は保守的であるとされる州においても大麻合法化の支持者が安定多数に達していることは、共和党の連邦議会議員や地方政治家を説得するうえで有益ではないか、と述べている。
「大麻合法化の措置を大差で可決した州で選出された共和党上院議員も多いので、連邦レベルでの大麻規制の改革に向けて共和党からも支持の拡大が見込めるだろう」と同氏は言う。
アケルナのジェシカ・ビリングスリーCEOによれば、各州政府から同社への調査依頼は記録的な件数に達しているという。パンデミック下での企業倒産により税収が減少しており、新たな財源が求められているためだ。
同氏によれば、「政治家は大麻合法化を、この経済的に不確実な時代に財政収支を改善し雇用を創出するための素晴らしい方法だと考えている」という。
だが、カナダの経験を考えれば、そう浮かれてばかりもいられないかもしれない。
カナダは2018年、主要国のなかでは真っ先に嗜好用大麻を合法化した。だが、過剰供給や闇市場、収益性の低下により、関連業界の期待は裏切られた格好だ。
生産者や調査会社は、米国の方が成功しやすい条件が整っていると言う。潜在的市場の規模が巨大で、新製品もあり、大麻のセラピー効果に対する認知度も高いからだ。
ザ・ペアレント・カンパニーのアランCEOは、「かつては『嗜好用の麻薬』とされたものが、精神・身体双方に潜在的な恩恵のある、多くの錯化合物としてより良く理解されるようになりつつある」と語る。
(翻訳:エァクレーレン)