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暗殺されたイラン科学者、西側は核開発の中心と分析

World Now 更新日: 公開日:
イランの首都・テヘラン近郊で、同国の著名な軍事科学者、モフセン・ファクリザデ氏が暗殺された。西側の諜報機関から、イランが秘密裏に進める核兵器開発の中心人物と目されてきた人物だ。写真は30日、テヘランで同氏のひつぎを運ぶ当局者ら。提供写真(2020年 ロイター/ Iranian Defense Ministry/ WANA (West Asia News Agency)

■ファクリザデ氏について知られていること

西側の高官や専門家は、イランが過去に、民生用と主張するウラン濃縮計画の裏で核弾頭の製造手段の開発を進めており、その中心的な役割を担ったのがファクリザデ氏だと考えている。

ファクリザデ氏は厳重な警備を受けて、目立たないように暮らしてきた。国連の核査察に彼が対応したことは一度もない。公の場に顔を出すこともまれで、国外で容姿を確かに知っていたり、ましてや会ったりしたことがある例はまずない。

ファクリザデ氏は、国際原子力機関(IAEA)が2015年に公表したイラン核開発疑惑に関する「最終評価報告書」に名前が記された唯一のイラン人科学者。

報告書は、イランのいわゆる「AMAD」計画で、「核開発計画に軍事的な側面を加える可能性を支援」する活動について、ファクリザデ氏が統括していたと記している。

11年のIAEA報告書は、核爆弾製造に必要な技術と技能の開発がAMAD計画に含まれていたと疑い、ファクリザデ氏がその「執行責任者」と表現。11年時点でもそうした活動で何らかの役割を担っている可能性を示唆していた。

イスラエルもAMAD計画について、イランの隠れた核兵器計画だと指摘。計画に関する大量の「公文書」を押収したとしていた。

イスラエルのネタニヤフ首相は18年4月、この公文書に関連してテレビ演説で、民生計画に偽装した核兵器開発計画の中心的人物としてファクリザデ氏を名指しした。

ネタニヤフ氏はイスラエルの関係機関が、テヘランの施設から大量の文書を入手したと述べ、文書を証拠として提示した。ただ、イランは当時、文書は偽物だと言明した。

ネタニヤフ氏は「ファクリザデの名を覚えておくように」と発言。AMAD計画のリーダーであり、同計画が中止された後もイラン国防軍需省内の機関で「特別プロジェクト」に携わり続けていると述べていた。

イスラエルのオルメルト前首相は同国公共放送KANの18年のインタビューで、ファクリザデ氏が攻撃目的になり得ると示唆。「私はファクリザデをよく知っている。私にどれほど知られているか、彼は分かっていない。もしも路上で彼に会えば、彼だと分かる可能性が非常に高い」と語っていた。

オルメルト氏は「彼は罪を免れない。これまでも免責されてこなかったし、将来もそうだろう」と続けていた。

■イランの説明

イラン国防軍需省は27日、ファクリザデ氏について同省の調査・技術革新機関の統括者だったと説明した。同氏はエリート組織、革命防衛隊の高官だったとも考えられてきた。

IAEAは長年、核査察の一環としてファクリザデ氏からの聴取を求めてきた。

この問題に詳しい外交筋によると、イランは数年前、ファクリザデ氏の存在を認めたが、軍高官であって核計画に携わっていないとしていた。

10年から12年にかけて核計画に関連するイラン科学者4人が暗殺されたことで、同国政府がIAEAにファクリザデ氏との面会を許さない決意を固めた可能性がある。面会させれば同氏やその居場所についての情報が漏れると恐れたためだ。イランは4人の殺害の背後に、米国とイスラエルがいると批判した。

ファクリザデ氏は、イランの弾道ミサイル開発にも関与していたと考えられている。イラン筋はロイターに対し、彼はこの開発計画の生みの親だと見なされていると述べた。

07年のイランに関する国連決議には、核もしくは弾道ミサイルの活動に関わった人物として、ファクリザデ氏の名が挙がっている。

■知られている経歴

国外亡命者による反体制組織、イラン国民抵抗評議会(NCRI)は11年5月の報告書に、黒髪で無精ひげを生やすファクリザデ氏の写真とされるものを掲載した。外部からこの写真の真偽を検証することはできなかった。

NCRIの報告書によると、ファクリザデ氏は1958年にイスラム教シーア派の聖地・ゴムで生まれ、国防副大臣や革命防衛軍の准将を務めた。核工学の博士号を持ち、イランのイマーム・フセイン大学で教鞭をとった。

高位のイラン筋は14年、ロイターにファクリザデ氏について、イランの技術進歩に貢献した「資産」にして「専門家」であり、最高指導者・ハメネイ師から全面的な支持を受けていると説明した。

同筋によると、ファクリザデ氏はパスポートを3種類持ち、海外から「最新の情報」を得るため、アジアを含めた各地に何度も渡航していた。西側の安全保障筋らによると、イランは長年、国際的な闇市場から核物質やノウハウを入手するのに熟達している。 

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