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「持続可能な旅」がその座を譲る 「再生を後押しする旅」の時代が来た

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フランス・ニースで5月、コロナ禍でさびれたビーチの上を飛ぶカモメ=ロイター

Move Over, Sustainable Travel. Regenerative Travel Has Arrived.

8月27日付 ニューヨーク・タイムズ紙


過去9年間、観光業は世界のGDPよりも速く成長し、世界の雇用の10%を占めるまで増加した。しかしパンデミックを受けて、この業界の好調も急停止してしまった。観光業はdecimated(破壊され)、失業者も多く出ている。コロナのワクチンが開発されるまでは状況が回復する見込みは少ないので、現在はlull(小康状態)にある。多くの関係者はこの機会に、観光業の将来を考え直している。この記事はその方向性を紹介している。

パンデミックの前は、観光業の成功は数値の伸びによって評価することができた。例えば、観光客数の増加やクルーズ客数の増加などだ。近年はsustainable(持続可能な)観光が注目されていたが、今回はさらに目標のレベルを上げてregenerative(再生を推進する)観光が注目を集めている。

持続可能な観光の目標は、旅行がもたらす社会と環境への影響を釣り合わせることだ。専門家によると、それはかなりlow bar(ハードルが低い)もので、観光地を汚さずに帰るというだけの意味になるそうだ。一方、再生を推進する観光は、観光地を自分が訪れる前よりも良い状態にすることを指す。

六つのNPOが参加する「Future of Tourism」連合は、「公平な所得分配を要求する」「量より質を選ぶ」といった項目を含む、将来の観光のための13原則を策定した。この原則には、旅行会社や観光地の自治体、観光局、大学など300以上の組織が署名している。

再生を推進する観光の関係で頻繁に出てくるテーマは、オーバーツーリズム(過度な観光客が押し寄せる観光公害)に関することである。パンデミックが収束した後でも、再び観光客過多となる状況を望まない観光地は少なくない。例えば、2018年にハワイで行われた世論調査では、市民の約3分の2は「この島は地元の人の犠牲のもとで、観光客のために運営されている」という項目に賛成した。再生を推進するという考えに基づいて、これからは暖かいリゾート地のイメージより、ハワイの伝統文化や王室の歴史、自然や地理的な魅力をアピールすべきだ、という考えもある。

地元の人の参画も、再生を推進する観光の重要な要素である。ベルギー北部の観光団体は、地元の声を生かして使命を考え直し、経済のために観光客を増やす姿勢から転換し、meaning(意義)のある経済の構築に重点を置くことにした。歴史や食べ物など、地元の人と観光客に共通する関心事を通して人の輪をつなげたり、第一世界大戦の戦場となった場所を活用したりして取り組んでいる。

コロナを克服しても、観光業が以前の水準まで戻るのには時間がかかるだろう。復興に際しては、再生を推進するという考え方のもとで、地球と地元コミュニティーにとってより優しい形となればうれしい。