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独自作品続々、成長著しい中国アニメ 新型コロナウイルスの影響は

Global Outlook 世界を読む
中国のアニメ制作会社「絵梦」の唐雲康副社長。日本支社でインタビューした=山本大輔撮影

――日本アニメの国外での配信などの契約件数は北米が圧倒的でしたが、最近は中国が大きく伸びて北米に迫る勢いです。どんな背景があるのでしょうか。

中国のアニメ産業は従来、国営テレビで放送する子ども向けアニメの制作と、日本や欧米の制作会社の下請けの二つが主流でした。私が中学生だったころは、多くの日本アニメをテレビで見られましたが、国産アニメの保護・育成のために政府の規制が厳格化され、国の審査を通った国産の子ども向け作品がテレビでは多くなっていきました。

大きな変化が起きたのは2013年。インターネットが普及し、ネット上でアニメが楽しめるようになり、新しいビジネスモデルの模索が始まりました。距離的にも文化的にも近い日本のアニメが一つの成功モデルとして注目されました。これを手本に、中国向けに発展させる取り組みが、今の勢いを生んだのです。

絵梦が制作し、日本語版も公開された中国のアニメシリーズ『一人之下』(ひとりのした)© TENCENT Animation & Comics/一人之下製作委員会

――ネット配信が転機だったのですね。

ネット配信はテレビや映画と異なり国の審査対象ではなかったので、どんな日本のアニメでも自由に配信できました。一方で、大手の動画共有サイトを運営する「騰訊(テンセント)」や「bilibili」などと中国のアニメ制作会社が連携。日本のような少年向け、大人向けの独自制作が盛んになり、絵梦も創設されました。13年は中国の新しいアニメ産業が急成長した出発点と言えます。

ただ昨年、国の厳格な審査の対象にネット配信も含まれました。暴力や性描写の激しいものは、人気作品でも審査前に取り扱いを控える配信会社も出てきています。例えば国外のアニメ5作品と配信契約する場合、中国のアニメ1作品とセットで購入しなければならないといった規制が厳格化される可能性もうわさされています。配信できる作品の自由度が低下することになるので、対応を迫られることになります。

――この6年間で中国アニメ産業は毎年10〜14%成長しています。独自制作で、さらなる成長につながるのでは。

アニメ会社は中国各地に存在し、今では数を把握するのも難しいほど増えました。元請けで100社以上、下請けで1000社規模になるとも言われます。こうした成長を受け、独自アニメの平均的な制作予算は、30分1話あたり1800万〜3000万円と、日本と同水準になりました。制作本数も、絵梦の場合で、13年は1作品の配信でしたが、今は年間8〜10作品を配信しています。

予算増は、作品の人気を左右する原画や物語のクオリティーの向上に寄与しました。中国全体で年間1000作品が作られた時期もありましたが、今は200作品程度。よりよい作品に投資する傾向が強まっています。ただ、人材確保の問題は国内だけで解決するのは難しく、日本や韓国のアニメ業界と協力しています。

――過密労働と低賃金が問題視されている日本のアニメ業界では、中国企業の待遇のよさが話題になっています。

日本人の人材が必要となった場合、日本で知られていない中国企業が、日本企業と同じような待遇を示しても誰も来てくれません。ただ、日本と比べて驚くような厚遇をしているわけではないので、少し誤解があると思います。日本の制作会社と共同で作品をつくることもあります。絵梦は18年、新海誠監督の作品を手掛ける日本の制作スタジオ「コミックス・ウェーブ・フィルム」と共同で『詩季織々』を制作し、日中で同時公開しました。今後、こうした共作が増えると考えています。

日中共作で制作したアニメ映画『詩季織々』。絵梦の企画提案で、新海誠監督の作品を手掛ける日本の制作スタジオ「コミックス・ウェーブ・フィルム」との共同作業になった ©「詩季織々」フィルムパートナーズ

――中国はアニメでも世界制覇を目指しているのでしょうか。

優先順位で言えば、まだビジネスチャンスが多く残る国内市場をさらに開拓することが一番です。中国作品は今でも、米国のネットフリックスやクランチロールなどの大手配信サービスで英語字幕付きで世界公開されています。すでに多くのユーザーを持つ有力企業が存在する世界で、中国の配信会社が独自に世界戦略をつくるのは簡単ではない。

さらに国外進出を考えるならば、「これが中国アニメだ」と、すぐにわかるような独自の特徴を育てていかないと難しい。そんな特徴が国外で認知されて初めて国外進出のメリットが生まれます。そういう意味では、中国のアニメ産業は、まだまだ発展の途中です。

――新型肺炎が中国経済に深刻な打撃を与えると言われています。中国のアニメ産業への打撃になりませんか。

感染力が非常に強く、感染者が急激に増えて病院が足りていません。そのため人が密集する施設は政府の指導で営業を休止し、映画館も、ほぼ全土で休館となりました。これが集客が最も期待できる旧正月の連休(1月24日〜30日)に重なってしまいました。この時期は例年、興行収入が20億元を超えるヒット映画が、アニメも含めて毎年2〜3作品は出ます。だから衝撃はとても大きいです。

政府の判断で旧正月の休みが延長されたため、作業工程への影響も心配です。絵梦では現在、映画1作品、配信5〜6作品を制作中ですが、在宅で進められる作業は限られます。影響が長引けば納期が遅れる恐れも出てきます。多くの日本の制作会社は中国に作業の一部を発注しており、日本のアニメ制作にも影響が出るかもしれません。

ただ、中国アニメ産業の成長は、映画以上に、ネット配信の普及に支えられています。多くの人が自宅待機する中、配信は例年より増えた可能性があります。

Tang Yun Kang 1986年、中国・上海生まれ。中国のアニメ制作会社「絵梦」副社長。日本アニメを見て育ち、『霊剣山 叡智への資格』などのアニメをプロデュース。日本語が堪能。