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「121位」の中を読んで見えた、日本社会の構造的な弱み

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■「高等教育」と「管理職」の男女格差

GGIは総合点である順位よりも、個別の指標を見ることが大切です。そこには日本の「弱点」がはっきりと出ています。

まず教育分野の「高等教育の進学率」ですが、先進国でここまで男女格差があるのは日本ぐらいです。私はカナダの大学でも教えていましたが、学生の過半数は女性でした。一方、日本の大学で教えていると、男子学生の多さに驚かされます。

女性の高学歴を望まない声が、いまだに地方を中心にあるとも聞きます。後のキャリアの男女格差が、ここから始まっています。

就業の面では、「労働力参加率」自体は、未就学児をもつ女性が働きにくいという問題があるとはいえ、国際比較では総じて水準が高いと言えます。問題は「管理職」の格差の大きさです。

一足先に格差是正に乗り出したノルウェーは2003年、上場企業に女性役員の割合を4割以上とするよう、法律で義務づけました。経済界からは「役員の候補になる女性がいない」との反発も出ましたが、政府が役員候補の有資格者リストを作るなどして目標を達成しました。

このクオータ制(割当制)で企業の業績にどのような影響があったかについては研究者の間でも論争があり、決着がついていないようですが、役員会におけるジェンダーギャップが大幅に縮小したのは確かです。

露骨な女性差別でなくても、男性が多い社会では、同性の男性を選びがちだという無意識のバイアス(差別・偏見)があり、格差の解消を難しくしています。その意味で、一定のクオータ制が日本にもあってよいと考えます。

企業の管理職のほか、政治家に女性を本格的に増やすには、お手本になるようなロールモデルの存在も大きな意味を持ちます。身近にそういう人がいれば、目指すものがはっきりします。これは高等教育の進学率を上げるためにも言えることです。

■男女の役割、固定観念くつがえす研究

経済学の世界では、男女の社会的役割に関する固定観念を覆すような研究が相次いでいます。

例えば、男女の賃金格差が生まれる背景の一つとして、女性が生まれつき男性より競争を回避する傾向があると言われてきました。しかし、インドにある母系社会、つまり女性優位の社会で心理学実験をしたところ、女性のほうが男性よりも強い競争心を示すという結果が出ました。

女性が競争を回避するとしても、それは社会のなかで身につけるものだということがわかったのです。「子育ては母親がすべきだ」というような、従来の「男らしさ」「女らしさ」の考え方があてにならないということを、私自身も研究を通じて実感しています。

日本の男女格差はなかなか是正されませんが、長期的に見れば確実に改善しています。例えば、男性の育児休業取得率は低いとはいえ、小泉進次郎環境相の育休取得には多くの賛成の声が集まります。こうした変化を止めないことが大事です。

    

やまぐち・しんたろう カナダ・マクマスター大准教授などを経て、2019年から東大教授。専門は「家族の経済学」と労働経済学。近著に『「家族の幸せ」の経済学』(光文社新書)。     

■ジェンダーギャップ指数の国際比較

「ジェンダーギャップ指数」は、経済、教育、健康、政治の4分野で14項目(※主な項目の日米比較は棒グラフ参照)を調べ、完全な平等を100%として計算する。201912月発表の最新の指数では、調査対象153カ国の平均が686%だった。

国別では、現首相が女性であるなど、女性の政治参画が進み、女性管理職も多いアイスランド(877%)が11年連続の1位。2位ノルウェー、3位フィンランド、と北欧諸国が上位を占めた。

日本(652%)は政治参画の遅れなどが響き、過去最低の121位。先進7カ国(G7)では、最下位だった。経済分野(115位)では、前年より女性管理職の指数が上昇した一方で賃金格差が広がり、わずかな改善にとどまった。

米国(724%、53位)は、前年からほぼ横ばい。賃金格差が広がったうえ、所得格差が依然大きい、と世界経済フォーラムは指摘する。(太田航)