■広がる在宅勤務
GMOインターネットグループは1月末から渋谷、大阪市、福岡市のオフィスに勤務する従業員約4千人の在宅勤務体制を継続している(2月25日現在)。業務上出社が必要な従業員に対しては、混雑を避けるため時差出勤や自転車通勤を認めるなどの対策を取っている。同社のようなIT企業だけでなく、メーカーや省庁でも在宅勤務の動きが広がる。政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が24日に公表した見解には「集会や行事の開催方法の変更、移動方法の分散、リモートワーク、オンライン会議のできうる工夫」を講じるよう呼びかける一文が盛り込まれた。
■出社は会議などがある月1~3回程度
「毎日出社する必要がない会社」は、ウェブサイト構築管理関連のサービスを提供する「シックス・アパート」(東京都千代田区)だ。エンジニア、営業、総務など社員数は30人ほど。2016年から「必要な時のみ出社すればよい」というシンプルなルールのもと、在宅勤務や出先のカフェ、コワーキングスペースで自由に働いている。多くの社員にとって、出社するのは会議などがある月1~3回程度。オフィス以外で働くことで自宅の光熱費や通信費、カフェ代などで一定の費用が出ることを想定し、申請不要なテレワーク手当(月1万5千円)を支給している。通勤費は、出社した日数分を支払う。
同社は16年夏に当時の親会社から独立したことをきっかけに働き方を一新し、赤坂にあった100坪のオフィスから神保町にある30坪のオフィスに引っ越した。全員が同時に出社することが少ないため、席はフリーアドレスの10席ほどだ。16年度の上半期と下半期で家賃や光熱費など4千万円の経費が削減されたという。
就業規則にある「出勤」「退勤」など、どこかに赴いて仕事をすることを想定した文言は「勤務開始」「勤務終了」と置き換えた。勤務開始や終了はスマホから1日に複数回入力でき、細切れでも仕事ができるようにした。
こうした働き方を始めて4年。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、どんな風に働いているか問い合わせが相次いでいるという。これまでどんな課題があり、どう乗り切ってきたのだろう。「顔を合わせないため、ニュアンスが伝わらない」「社員がさぼるのでは」「逆に働き過ぎてしまうのでは」。こうした疑問をCEOの古賀早(はじめ)さんと、広報の壽かおりさんに聞いた。
――在宅勤務にすると「さぼるのでは?」もしくは「働き過ぎてしまうのでは?」という懸念をよく聞きます。どんな対策がありますか。
古賀 そもそも「さぼる」って何でしょうか。IT企業だけでなく、いまは多くの会社員がパソコンを使って作業をしていますよね。みんなパソコンに向かって「何か」をしているわけですが、会社にいれば、まったくさぼっていないと言えるでしょうか。一見業務と関わりがないようなサイトを見ていたとしても、実は仕事につながっていることがある。「さぼる」ことや遊ぶことと、仕事の線引きはあいまいになってきています。
それよりも、誰がいつ、どんな作業をして、いつ終わったか、が重要です。私たちの場合、業務の進捗を可視化するシステムを導入し、把握しています。不安を感じる企業の方には「社員が働きやすいと感じる場所で働いてもらった方が効率良くないですか。信用して任せた方が楽ですよ」と伝えています。
――セキュリティなどの環境整備で不安を抱える企業も多いと思います。
古賀 私たちもセキュリティなどのシステムはかなり入れています。ただ、既存のクラウドシステムを使ってできることも想像以上に多いかと思います。
工場など、現場に人が必要な企業も多いかと思います。特に中小企業は大変だと思います。ただ、事務部門などできるところだけでもテレワークをやってみて、浮いたコストなどを使って、現場で作業をしている部門に還元できることもあるかもしれません。
私たちも「小さい会社だからできるんでしょ」とよく言われますが、ひとつの部署だけでもできることがあると思います。オフィスが稼働しなくても、仕事が進むようにしておくことは、災害時のBCP対策にもなります。
――テレワークをしてきて、これは重要だと思うノウハウを教えてください。
壽 意外と大事だと感じるのが、パソコンを置く場所です。もともと自宅にワークスペースを設けている人は多くないですよね。ダイニングテーブルやこたつを使う方が多いと思いますが、長い時間パソコンに向かう作業はしにくい。できる範囲で、良い姿勢を保てるよう、パソコンの下に雑誌などを置いて画面を目線の高さにあげておくだけでも違いがあります。
古賀 最初の頃は、集中し過ぎて、外に出なければいけない時間に気づかないことがありました。1時間、2時間と時間ごとにミュージックリストを作って、音楽が流れている間は集中し、終わったら次やらなければいけないことに気づけるようにしています。
また、社内のメンバーで会議をするときは、テレビ会議ではなく音声会議にしています。テレビ会議だと、部屋の背景が映るのが気になったり、服装や髪形も出社するときに近いような準備をしたりしなければならない。
オンとオフを分けるため、着替えて仕事をしていますが、音声だけならばそこまで準備をしなくても良く、時間が有効活用できます。いつも画面に議事録を映しながら会議をしています。ただ、お客様と遠隔でミーティングするときにはテレビ会議を使っています。
――今回の新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに働き方を見直す動きが出ています。これからどんな働き方を目指していますか。
古賀 目指すのは、「ローコンテキスト」のコミュニケーションです。最初は隣の人とすぐ話せるような環境を作ろうとすると思うのですが、究極的には、どこにいても、誰にでも伝わるコミュニケーションのあり方が必要になってくると思います。
テレワークだと、「さっきそこで話していたあの件なんだけど……」と言っても伝わりません。暗黙の了解、忖度、前提条件がない世界。体調も含めて物事を全部説明する。一見非効率に見えるかもしれないけど、そういったコミュニケーションは、世代の違いも超えてくれると思う。
若者が減り、高齢の方、外国人の方、多様性の中で働く社会になります。私たちは少し先に始めているので、そこを目指しているし、近くにいきたいと思っています。それを覚悟しないとなかなか最終形には行けないかなと思っています。
■「#リモワノウハウ語るよ」
「#リモワノウハウ語るよ」。壽さんはそんなハッシュタグをつけ、自身がリモートワークをしてきて感じたノウハウをツイッターでつぶやいている。壽さんのツイッターの中から、働く環境や時間管理、家族との関係についてノウハウの一部を紹介する。
■働く場所や環境
「着替えよう」 おふとんからパジャマのまま作業はあんまりオススメしません(1分1秒を争う緊急事態は除く)。とはいえ家だし、ノーメイクでパーカーとか、そのまま近所のコンビニ行ける程度の格好をしています。ビデオ会議には出演しない前提です。
「熱い寒いはカフェに避難もよし」 一人っきりの家で冷暖房ガンガン使うの、心苦しい。そんなときは、カフェに行って1~2時間作業も良いと思います。ほどよくザワザワした環境の方が集中出来ることもあるしね。長居しすぎてご迷惑にならないように気をつけよう。図書館もオススメ。
■コミュニケーション
「オンラインで雑談しよう」 リモートワーク中の同僚たちにオンラインチャットで声かけよう。「調子どう?」「このニュース見た?」「あの件、こうしたらどうかな」って。他の人も一人で煮詰まってるかもしれない、声かけあおう。
「音声会議でいいじゃないか」 家だしノーメイク。顔を出したくない。わかる。なので社内の会議はビデオにこだわらず、電話と画面共有でいいのではなかろうか。シックス・アパートは社内会議はすべて動画ナシです。
■時間管理
「早めに終わろう」 早めに仕事を開始したら、早めに終わろう!始業時に終業予定時間を決めとくといいかも。作業中ずっと座っていたならば、浮いた時間は体を動かすと良いと思う。筋トレ動画見ながら運動はもちろん、掃除や片付けでも。
「出かけるときはなるべく混まない時間に」 毎日どこで働いても良い弊社なので、会議の時間も昼から開始にして、なるべく満員電車に乗らなくてすむようにしてます。出来る範囲でね。
「タイマーかけて仕事しよう」 家での一人作業は、布団やテレビやゲームや誘惑が多いもの。集中が途切れないように、キッチンタイマー付けてタイマーが鳴るまでは作業に集中!と決める。で、タイマーがなったら一定時間休憩しよう。
■家族
「家族に予定を話そう」 ご家族とちゃんと仕事の予定を共有しよう。「今日からしばらく家で働きます。何時から何時まで仕事なので、用事のあるときはノックよろしくね」など。大きいお子さんならば、ちゃんと話せばわかってくれると、、、いいですね。
「こどもとカフェワークなら少し集中できる」 小五は宿題、ママは仕事がたんまりあるときは、二人でカフェワークしてます。「タピオカ買ったげるから宿題がんばろ。ママもがんばるから!」って言って必要なものだけ持って行く。二人してしぶしぶやる。