ポン・ジュノ監督による「パラサイト」は、監督賞、国際長編映画賞、脚本賞も獲得した。
米国で字幕付きで公開された同作は、映画スタジオ大手や、マーティン・スコセッシ、クエンティン・タランティーノなどハリウッドのベテラン監督による作品を抑えての快挙。また様々な映画賞が多様性に欠けるとの批判が出る中での受賞となった。
「パラサイト」の共同プロデューサーの1人は「言葉が出てこない。こんなことが現実になるとは思いもしなかった。本当にうれしい」と述べた。
ポン監督は監督賞の受賞スピーチで他の候補者をたたえ、「テキサス・チェーンソーでオスカー像を5つにして、皆と分かち合いたい」と語った。
主演男優賞は「ジョーカー」のホアキン・フェニックス(45)に贈られた。フェニックスは壇上で、気候変動や動物の権利保護に関して述べた後、自身について「これまで自分勝手で、一緒に仕事をするのが大変なこともあった。会場にいる多くの人に対し、もう一度チャンスを与えてくれたことに感謝したい」と述べた。
「ジョーカー」は精神的な病を抱えた孤独な男性が暴力行為によって有名になる姿を描いた作品。フェニックスは役作りのため、22キロ以上減量した。
主演女優賞は、米国の伝説的女優ジュディ・ガーランドの晩年を描いた伝記映画「ジュディ 虹の彼方に」(日本公開3月6日)のレネー・ゼルウィガー(50)。
ゼルウィガーは役の準備に向けて1年間ボイスレッスンを受け、またガーランドのしぐさを再現するため振付師と共に取り組んだという。
助演男優賞は、タランティーノ監督作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のブラッド・ピット(56)に贈られた。
同作品は1960年代のハリウッドが舞台。ピットは、落ち目のテレビ俳優(レオナルド・ディカプリオ)の付き人兼スタントマンを演じた。
受賞スピーチでは「非常に驚いている」とコメント。無名の俳優としてスタートした当初について語り、元妻の女優アンジェリーナ・ジョリーとの子ども6人に賞をささげた。
ピットにとって俳優として初のオスカー受賞となった。2014年には「それでも夜は明ける」でプロデューサーとして作品賞を獲得していた。
助演女優賞は、ネットフリックス制作のドラマ「マリッジ・ストーリー」で離婚問題専門の敏腕女弁護士を演じた、ローラ・ダーン(52)が受賞。オスカーに輝くのは初めて。
翌日に53歳の誕生日を迎えるダーンは「最高の誕生日プレゼントになった」と喜びを語った。また俳優である両親のブルース・ダーンとダイアン・ラッドに感謝の意を示した。
フェニックス、ゼルウィガー、ピット、ダーンの4人は、オスカー前哨戦となるゴールデン・グローブ賞や米映画俳優組合員賞(SAG賞)などでも賞に輝いており、今回受賞が有力視されていた。
長編アニメ映画賞は「トイ・ストーリー4」。長編ドキュメンタリー賞は、オバマ前米大統領とミシェル夫人の制作会社が手掛けたネットフリックス作品「アメリカン・ファクトリー」が受賞した。
メーキャップ&ヘアスタイリング賞には「スキャンダル」(同2月21日)のカズ・ヒロ氏(辻一弘から改名)らが選ばれた。同氏は2018年に続く受賞となる。
戦争映画「1917 命をかけた伝令」(同2月14日)は10部門で候補に挙がっていたものの、視覚効果賞など3部門での受賞にとどまった。
同じく10部門でノミネートされていた、ネットフリックス制作のギャング映画「アイリッシュマン」は、受賞は逃した。同作はスコセッシ監督がメガホンをとり、ベテラン俳優のロバート・デニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシが出演した。
今回の授賞式は司会者不在で行われた。
ラッパーのエミネムや歌手ビリー・アイリッシュがパフォーマンスを披露。またエルトン・ジョンは自身の伝記映画「ロケットマン」からの曲で、アカデミー歌曲賞を受賞した「(アイム・ゴナ)ラヴ・ミー・アゲイン」を歌った。