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IT企業にみる海外リソース活用のいま

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海外リソース活用に積極的なIT業界

日本は2008年の1億2808万人をピークに、人口減少の一途をたどっている。深刻な影響のひとつが、「人手不足」という問題。優秀な人材を確保する競争は激しさを増すが、「働きやすい環境」を作れなくては、人材の確保もままならない時代だ。

そこで、海外リソースをいち早く活用するIT業界が以前にも増して積極的に進めているのが、海外にいる優秀な人材の確保だ。遠隔コミュニケーションツールを使えば、もはや日本と海外でもシームレスにやりとりができるので、働く場所も関係なくなってきた。

ミャンマーで優秀な人材を採用するIT企業

たとえば、トッパンフォームズのグループ会社で官公庁のシステム構築や社会インフラの監視・制御システム構築などを行う日本のシステムソリューション企業トスコ(本社・岡山市)は、2015年からミャンマーでの採用活動を始めている。
「日本でのIT人材の採用はどんどん難しくなっています。それでもITビジネスは増加する一方。そこで弊社では、IT人材が年々増えているミャンマーでの採用活動に踏み切ったんです」と、トスコ・ミャンマー社代表取締役を兼ねるトスコ取締役の畑嘉昭さんは話す。

トスコ・ミャンマー社 代表取締役(兼トスコ取締役)畑嘉昭さん

現地で開催されるジョブフェアでは、トスコのブースに学生が列をなす。2015年から毎年約20名のミャンマー人を採用しているが、その採用枠に400人もの応募がくる。そして2019年10月、ミャンマーの現地法人トスコ・ミャンマー社も立ち上げた。

なぜミャンマーなのか? その具体的な理由をトスコ・ミャンマー社のセールスマネージャー小田勝広さんはこう話す。
「ミャンマーでは年間1万人ほどIT専攻の学生が卒業するのですが、ミャンマーにはITの知識を生かして働ける場所がまだまだ少ないんです。そういう事情もあり、大学で学んだIT知識や技術を『日本企業で活かしたい』という熱意に溢れた学生が多くいます。最先端のIT技術開発に欠かせない英語が堪能な学生が日本人よりも多いのも、理由のひとつです」

東京支社で会ったス・ティンザールィンさんのように、ミャンマーの外国語大学で日本語を専攻し、ミャンマー語・日本語・英語とトリリンガルの学生も集まってきている。

日本とミャンマーでテレビ会議中。手前右はITチーフのタリー・トエーさん。手前左は日本語指導にあたるチッ・ウィー・ゾーさん

キーワードは、文化理解とコミュニケーション

IT企業のなかには、経費を抑えるもくろみだけで人件費が安い海外にリソースを求め、日本と海外の文化やビジネスに対する考え方の違いをお互いに理解できないまま仕事を進めて、結局撤退を余儀なくされた企業も少なくない。

「日本の社員がミャンマー人の価値観や気質を理解することが重要です」と、小田さんは話す。「ミャンマーの方は、家族や宗教が生活や人生の中心にあり、時に仕事より家族との食事を優先させることもあります。彼らの価値観を尊重した上で、ビジネスの納期や質を守ることは日本において非常に大切なことなのだと説明し、理解してもらうようにしています」

システム構築の現場でミャンマー人社員を束ねる西日本事業部の縄稚亜美さんも「ミャンマーの方はわからないことがあっても質問せず、まずは自分で調べてみようとする方が多いですね。ただ現場では、スピードが大事。ですので、コミュニケーションをお互いに積極的に取れる環境をつくり、理解度や進捗度を確認しながらフォローしています」

さらにトスコは、ミャンマーでは適性試験と面接で、個々の能力とモチベーションを丁寧に見極めることに注力している。さらに、採用した人材は来日前に日本語の研修をあらためて徹底的に行い、ビジネスレベルに達した社員は日本のトスコで働き、まだ日本語が不十分だと判断した社員はミャンマーで再度教育を行い、次回の日本行きを目指す。
「日本で働きたいというモチベーションがあっても十分な日本語能力がないと日本人上司に本心から質問できないといった問題が出てきます。こうなるとお互いにビジネスでわだかまりが出来てしまいます」と畑さんは話す。

トスコ・ミャンマー社で日本語指導にあたるチッ・ウィー・ゾーさんは、ミャンマーで働く社員たちの学習意欲を日々、肌で感じている。「日本でビジネスがしたいという気持ちが皆強いですね。現地に残った社員も、たとえ日本とミャンマーと遠隔ででも、コミュニケーションツールを使って日本語でビジネスがしたいと、毎週日本語の授業を受け続けています」

トスコ・ミャンマー社の教育環境は、ミャンマー人社員からも好意的に受け止められている。「日本語教育やIT研修、ビジネスの場を与えてくれ自分自身の成長を感じられることも、トスコに勤めて良かったと感じる点です」とITチーフを務めるタリー・トエーさんは、流暢な日本語で話す。

トスコ・ミャンマー社では約60名のミャンマー人社員が働く

現在、日本のトスコで働くミャンマー人の割合は1割を超える。そしてトスコ・ミャンマー社では約60名のミャンマー人社員が働いている。ミャンマーの経済と商業の中心であるヤンゴンの新しいオフィスビルで働くことに誇りをもっている社員も多くいる。ITインフラが整っていることで、日本とのビジネスに「時差」はない。日々、ビデオ会議やチャットといったビジネスコミュニケーションを使い、ビジネスが進んでいく。

畑さんはミャンマーに現地法人をつくった理由をこう話す。
「日本にいるミャンマー人社員たちが、『帰国してもトスコで働ける環境を提供したい』というところも、現地法人を作った理由のひとつです。日本の文化を理解して日本語を話せる社員たちです。日本で学んだビジネス論もミャンマーに持ち帰ってもらいたい。それにいまの時代はミャンマーにいてもコミュニケーションツールを使ってストレスなく日本とプロジェクトを進めることができますから」

その国を理解し、その国の人を思う。シンプルな取り組みが、距離を意識しないビジネスコミュニケーションを可能にする。

左より、トスコの縄稚亜美さん、ス・ティンザールィンさん、トスコ・ミャンマー社の畑嘉昭さん、小田勝広さん

中国・大連に問い合わせ窓口を集約

海外に会社の一部署を移し、ビジネスの効率アップに役立てる企業もある。シスコシステムズの人事関連の問い合わせ窓口があるのは、中国・大連。ここでは日本をはじめ、アジア・オーストラリアのシスコ社員約8000人の人事・労務の問い合わせを一手に請け負っている。

拠点を大連に集約したことで、アジア諸国の人事・労務の情報集約と共有など作業効率をあげられるのが最大のメリットだ。大連の社員の1/3にあたる約300人が、日本語・中国語・英語を話すトリリンガル。大連では人事の問い合わせ窓口だけでなく、社内のIT関連の問い合わせ、またテクニカルサポート部門では日本のお客様からの問い合わせを直接受けている。多言語対応できることも作業効率をあげられる理由のひとつであり、日々各国社員からの人事や労務関連の問い合わせに対して、日本語の問い合わせには日本語で、オーストラリアなどシンガポールなどの英語圏からの質問には英語で対応している。

「グローバル企業として、人事問い合わせ窓口が各国に分散しているほうが効率が悪いこともあり、大連に集約しています。大連に人事が集約されることで知見も集まりますし、チーム一丸となって情報共有と発信ができてより効率的になりました」と話すのは、シスコ東京オフィスの業務執行役員人事部長の宮川愛さん。同じ観点でテクニカルサポートの部門も大連に集約して作業効率を高めているという。「知識と共有の最大化」がグローバル規模で整っているのだ。

シスコ東京オフィスの業務執行役員人事部長の宮川愛さん

各国社員とのやり取りで、物理的な距離が問題になることはない。ネットワーク機器を開発する強みを最大限に活かし、デジタルツールを活用して、シームレスなコミュニケーションを取っているからだ。
「人事の問い合わせで多用されるのがチャットです。各国の社員が希望する言語で気軽に問い合わせをすることができ、なおかつリアルタイムにストレスなく会話ができ問題を解決できます」と、大連で人事サポート部門の チームリーダーをつとめる任仟仟(にん・せんせん)さんは話す。
日々の海外とのミーティングでは、ビデオ会議システムを使っている。「フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが取れるので、大連と日本の距離感は感じません」と任さん。

多様性の尊重が、海外リソース活用のカギ

「勤続5年間お疲れさまです、いつもありがとうございます!」

日本のオフィスで働く、勤続5年目になった社員からの問い合わせに対して、大連からのメッセージの第一声だ。遠隔でのネット上の仕事のやりとりは効率最優先かと思いきや、こんな言葉が届けられることもある。人の体温を感じさせるちょっとした一言が、遠隔のチャットやビデオ会議で結ばれた人々の距離をより近くする。

シスコ大連オフィスの社内

各国の文化を尊重して理解することも、シスコの海外リソース活用をより円滑にするベースにある。

「弊社には世界中に約7万5000人の社員がいます。この人数がさまざまな拠点で同じ方向に向かって協業していく中で、常に同じ職場で顔を合わせて仕事をすることはまずできません。そうなると遠隔のコミュニケーションツールで仕事を進めることが必然となります」と宮川さんは話す。そのコミュニケーションを補うのが、企業文化のベースとなる会社としての価値観だ。その一つとしてシスコが重要視しているのが社員一人ひとりがお互いを尊敬し、尊重し合うこと、つまり気配りだ。「大連の社員たちの細やかな心配りによってお互い気持ちよく、密にコミュニケーションを取れるようになっています。弊社の社員一人ひとりが異文化や多様性を理解し、学び続ける姿勢がより求められます。私たちは“コンシャス・カルチャー”と呼んでいるのですが、たとえば異文化の方やLGBTを含むマイノリティの方々に対しても相手が何を考え、求めているのかを常に意識するカルチャーが、弊社の根底には流れているのです」

社内コミュニケーションツールで大連との距離が近くなる

大連オフィスの社員の定着率はIT他社と比べてもかなり高い。派遣からキャリアをスタートさせ、正社員になった任仟仟さんの社歴は4年。日本メンバーを大連から管理する人事のマネージャーを務める喬明華(きょう・めいか)さんは4年目、同じく人事部の梁爽(りょう・そう)さんは5年目になる。「前職はセールスでしたが、シスコでキャリアチェンジをしました。人事の知識をもっと身につけたいです」(喬明華さん)「教育プログラムが充実しているシスコで、これからも人事の専門的なポジションを目指したい」(梁爽さん)。
彼女たちは常にモチベーションを高くキープし続け、各国の社員のサポートを日々おこなっている。
今後も人事のプロフェッショナルとして、キャリアを磨きたいと考えている。

ビデオ会議システムで大連より会議に参加。左より梁爽さん、任仟仟さん、喬明華さん

「シスコでは、『キャリアのオーナーシップは自分にある』という考え方が根底にあります。自分自身がどうキャリアを描きたいのか考え、会社はそのサポートをしていくというスタンスです」と宮川さんは話す。
最新のテクノロジーと多様性を尊重するカルチャーが融合して、グローバル規模で働きやすい職場作りを実現させている。

海外の優秀な人材を集め成長を続ける2つのIT企業。遠隔コミュニケーションツールでビジネスを進めるその根底には、各国の文化理解を深めることに注力する姿勢があった。デジタライゼーションの進化によりシームレスに国を超える今。その成功のカギは、ツールの力に加えて、その国や人を理解するという、アナログな営みを忘れないことにもある。

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