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「大人になる」は難しい UCバークリー校にはそのための授業がある

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カリフォルニア大バークリー校の卒業式に出席する学生たち(2015年)=ロイター

'Adulting' is hard. UC Berkeley has a class for that

2019年12月10日付 ロサンゼルス・タイムズ紙

2015年にadultingという新語が爆発的に知られるようになった。Adult(大人)という名詞を動詞にしたこの語は大人の活動、特にフルタイムの職に就くことや、毎月の家賃の支払い、家事といったような大人の日常活動や責任を果たすという意味で使われている。ミレニアル世代(現在約23~38歳の人びと)は、ひとり暮らしや自宅の購入、結婚が他の世代と比べて遅い、あるいはしない傾向が強い。そのため、大人としての活動も以前より遅くスタートする人が多いようだ。この言葉はそんな現代におけるadultingの難しさも示唆している。

もう一つ、この世代の特徴になっているのは、子どもをいつもhovering(監視)している「ヘリコプターペアレント」の存在だ。こう呼ばれる親はto the exclusion of almost everything else(ほとんど他のことを除外して)子どもの学力養成だけに重点を置く。子どもが勉強を最優先できるよう、その他全てのことを親が肩代わりしようとするのだ。

私の中学生時代には、home economics(家庭科)が必修科目だった。その授業では日常生活の知恵が教えられていたものだが、現在はそういった授業がlargely abandoned(ほとんど中止されている)。

その結果、Advanced Placement (AP) test(優秀な高校生は高校在学中に、科目ごとに大学の入門レベルのカリキュラムが学べ、学年末にその科目の試験で一定の成績を修めると、大学で単位として認定される)で最高評価を取れるのに、一週間分の献立とそれに必要な買い物を考えることにはstruggle(悪戦苦闘)する世代が生まれてしまったとこの記事は指摘する。

そうした若者のニーズに応えるため、adultingに必要なスキルを提供するコースが次々と誕生している。この記事ではカリフォルニア大バークリー校での授業や、社会人向けのセミナーなどが紹介されている。その他の大学や高校、図書館でも同様のコースが提供されるようになったそうだ。

アメリカの大学に通う学生の多くは、実家を離れて大学の学生寮、あるいはキャンパスの近くにアパートを借りて住む。彼らにとって大学に入って初めて親元から離れて生活することになる。実家に住んでいた間は親が全て世話してくれたが、大学生活が始まると一転して全てを自分でしなければならなくなる。そこで「何とかしなければ」と感じた学生たちが、adultingのコースに登録。近年はそういった学生が増え続けているという。実際、バークリー校のadultingの授業は、応募者数は募集枠の2倍以上にもなったそうだ。

バークリー校の授業では具体的に、家計簿をつけて上手くやりくりする方法、履歴書の書き方、仕事に応募する方法、時間管理、目標設定、確定申告、栄養とフィットネス、人間関係などについてのトピックがカバーされている。

私はこのリストを見て、何でこんなことを親から学んでいないのか、と不思議に感じてしまった。しかし逆に言えば、これがジェネレーションギャップというものなのだろう。